要点
- 結果は研究ごとに非常に異なっている。しかし、その理由はわかっていない。つまり、Hospital Depression and Anxiety Scale Anxiety subscale (HADS-A)を実際に適用すると、不安障害の検出が良くも悪くもなる可能性があるということである。
- しかし、この結果を総合すると、実際には多くの人が陽性でないにもかかわらず陽性と判定されることになり、医療制度をさらに圧迫することになりかねない。
なぜ不安障害の正確な発見が重要なのか?
不安障害はごく一般的なものだが、治療の恩恵を受けられそうな人でも発見されないことが多い。スクリーニングの過程で、人々は陰性と陽性の2つのグループに分けられる。結果が陽性であった者に対しては、さらなる評価が必要である。最終的な診断は有能な臨床医が行う。しかし、スクリーニングの過程で誤った結果が出ることもある。不安障害があるのに発見できないことを偽陰性という。これはタイムリーな治療のチャンスを逃すことを意味する。偽陽性とは、実際には不安障害がないのに誤って不安障害であると判定する結果をいう。不必要な心配、さらなる検査、治療により、患者や公衆衛生システムに負荷をかけることになる。不安のスクリーニングは、「あらゆる不安障害」(AAD)という用語で要約されるさまざまな状態を対象とする。これには、特に全般性不安障害(GAD)やパニック障害が含まれる。私たちのレビューでは、これら3つの条件について見ていく。
『HADS-A』サブスケールとは何か?
病院不安・抑うつ尺度(HADS)は質問票である。これは、医学的問題を抱える人々の不安や抑うつ状態を検出するために作られた。うつ病下位尺度(HADS-D)と不安下位尺度(HADS-A)の2つのセクションがある。それぞれの下位尺度には7つの質問がある。人々は0から3までのスケールで質問に答える。すべての質問に答えた後、点数を合計して合計点を出す。総スコアが指定スコア(「カットオフ」)以上であれば、不安障害の存在を示唆する。推奨されるHADS-Aのカットオフは、不安の可能性がある場合は8点以上(または明確な不安の場合は11点以上)である。HADS-Aはシンプルで迅速な結果が得られるので、HADS-Aの得点が高い人は、さらなる評価のために紹介することができる。
知りたかったこと
HADS-Aで成人が不安障害であるかどうかをどの程度見分けることができるかを調べることを目的とした。
実施したこと
HADS-Aを用いて不安を検出した研究を検索した。そして、これらの研究結果を統合した。
わかったこと
このレビューには、18,467人が参加した67件の研究の結果が含まれている。54件の研究がAADの検出におけるHADS-Aに関する情報を、35件の研究がGADに関する情報を、10件の研究がパニック障害に関する情報を有していた。
本レビューの主な結果
AADだけの結果を総合すると、1,000人にHADS-Aを実施し、そのうちの170人が実際にAADを有している場合、次のようになる:
- AAD陽性と判定された325人のうち、199人は誤ってAADと判定され(偽陽性)、126人は正しく陽性と判定された(真陽性)。
- AAD陰性と判定された675人のうち、44人はAADではないと誤って判定され(偽陰性)、631人は陰性と正しく判定される(真陰性)。
エビデンスの限界
上記の例は、すべての研究の結果を合わせたものである。しかし、すべての研究の結果は非常に多様であった。また、ほとんどの研究のやり方にも問題があった。最後に、すべての研究が、精神衛生上の愁訴を持つ参加者も含んでいるかどうかを判断するのに十分な情報を提供しているわけではなかった。したがって、HADS-Aが常に上記の統合結果と一致するかどうかはわからない。
本エビデンスの更新状況
エビデンスは、2024年7月10日現在のものである。
《実施組織》阪野正大、小林絵里子 翻訳[2025.07.16] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD015456》