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禁煙、ニコチン吸引、その他のタバコの使用を止めるために使用する場合、経口ニコチンパウチの利益とリスクは何か?

主なメッセージ

  • 3件の小規模研究から得られた限られたエビデンスによれば、喫煙者における経口ニコチンパウチの短期的な深刻な健康被害は認められなかった。

  • 経口ニコチンパウチが、喫煙を通常通り続けるよう指示されたり、禁煙のサポートがない場合に比べ、禁煙に役立つかどうかは不明である。

  • 特に、経口ニコチンパウチと他の積極的治療(ニコチン置換療法や電子タバコなど)との比較など、今後の研究が必要である。

経口ニコチンパウチとは何か?

経口ニコチンパウチは、ニコチンを含む分包されたパウチであり、さまざまなフレーバーとニコチンの強さで販売されている。見た目も使い方もスヌース(無煙タバコの一種)と似ている。スヌースは歯茎と唇の間に挟むタイプの無煙タバコで、北欧諸国で人気があるが、英国とスウェーデンを除く欧州連合(EU)諸国では販売が禁止されている。スヌースとは異なり、ニコチンパウチにはタバコの葉は入っていない。ニコチン入り電子タバコやニコチン補充療法(ニコチンパッチやガムなど)の医薬品と同様、経口ニコチンパウチは、タバコの葉を含まず、電子タバコとは異なり肺に蒸気を吸い込まない製品に置き換えることで、有害な形態のタバコ・ニコチン製品使用からの移行を助けることができるかもしれない。

経口ニコチンパウチの一般的なブランド名には、Zyn、Velo、Nordic Spiritなどがある。

知りたかったこと

経口ニコチンパウチが喫煙、ニコチンベイプ、その他のタバコの使用からの脱却に役立つかどうかを確かめたかった。また、経口ニコチンパウチをこの目的で使用した場合、好ましくない影響が出るかどうかも知りたかった。

実施したこと

禁煙の方法として、喫煙者、電子タバコ吸引者、その他のタバコ製品を使用している人に経口ニコチンパウチを投与した研究を検索した。タバコの使用やニコチン入り電子タバコ(ベイプ)の使用を4週間以上追跡した研究、あるいは血液、呼気、尿中の好ましくない影響や化学的変化を1週間以上調べた研究を対象とした。

わかったこと

試験開始時に喫煙者であった合計284人を含む4件の研究が見つかった。これらの研究は2006年から2023年の間に実施され、人種または民族を報告したものでは、白人が大多数を占める集団で実施された。各研究の平均年齢は34歳から50歳であった。試験開始時の参加者の1日平均喫煙本数は14本から23本であった。最も長い実施期間の研究は8週間行われた。3件の研究は独自に資金提供を受けており、1件はタバコメーカーから資金提供を受けていた。

2件の小規模な研究に基づくと、ニコチンパウチの使用が、喫煙を継続するよう指示した場合や禁煙支援なしの場合と比較して、より多くの人の禁煙に役立つかどうかは明らかではなく、ニコチンパウチ使用者の禁煙率は、ニコチン入り電子タバコ(ベイプ)使用者と比較して低い可能性がある。

この情報を報告した3件の研究では、どのグループでも重篤な健康被害は発生していないため、ニコチンパウチの使用が重篤な健康被害を経験する可能性に影響するかどうかは不明である。

また、血液、呼気、尿から測定される、有害物質への暴露を示す特定の化学物質についても調べた。タバコの使用は、癌を引き起こす化学物質に体をさらす。NNAL(4-(メチルニトロサミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノール)は、これらの癌を引き起こす化学物質が体内に入ると生成される化学物質で、タバコの煙に含まれる有害成分への暴露を測定する。1件の小規模な研究では、禁煙のための特別な治療を受けていない人と比較して、経口ニコチンパウチを使用している人のNNALレベルが低いことが報告されている。2件の研究から得られたエビデンスを統合すると、高用量のニコチンパウチと低用量のニコチンパウチを投与された人の間で、NNAL値に差がないことが示唆された。一酸化炭素はタバコの煙に含まれる有毒ガスである。一酸化炭素が血液中のヘモグロビンと結合すると、カルボキシヘモグロビンと呼ばれる物質が形成される。カルボキシヘモグロビンは、人の血液中の一酸化炭素暴露量を測定する。1件の研究では、経口ニコチンパウチを使用している人のカルボキシヘモグロビン濃度が、喫煙を続けている人に比べて低いことがわかった。高用量のニコチンパウチと低用量のニコチンパウチを比較したところ、同じ研究で、高用量グループのカルボキシヘモグロビン値がごくわずかに低いことがわかった。

エビデンスの限界は?

研究が比較的小規模であり、結果を確信できるほど十分な研究がないため、エビデンスに対する信頼性はほとんどない。また、いくつかの研究では、結果に影響を及ぼす可能性のあるデザイン方法に問題があった。現在、多くの研究が進行中であり、その結果が得られ次第、このレビューを更新する予定である。

このレビューの更新状況

エビデンスは2025年1月現在のものである。

訳注

《実施組織》阪野正大、小林絵里子 翻訳[2025.11.22]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD016220.pub2》

Citation
Hartmann-Boyce J, Tattan-Birch H, Brown J, Shahab L, Goniewicz ML, Ma CL, Wu AD, Travis N, Jarman H, Livingstone-Banks J, Lindson N. Oral nicotine pouches for cessation or reduction of use of other tobacco or nicotine products. Cochrane Database of Systematic Reviews 2025, Issue 10. Art. No.: CD016220. DOI: 10.1002/14651858.CD016220.pub2.

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