要点
確固としたエビデンスがないため、特発性炎症性筋疾患(特発性炎症性ミオパチー、IIMs)の人におけるリツキシマブ、アバタセプト、補体阻害薬の利益とリスクは不明である。
アバタセプトによる治療はプラセボと比較して、国際筋炎評価・臨床研究グループ(IMACS)の改善定義(DOI)で評価される特発性炎症性筋疾患の活動性を改善させるかもしれない。
異なる病型の特発性炎症性筋疾患において、標的治療薬が有効かどうかを確かめるには、大規模な研究が必要である。特発性炎症性筋疾患は希少であるため、国際的に協力し複数の施設で研究(多施設共同研究)を行うことが望ましい。
背景
特発性炎症性筋疾患は、免疫系が筋肉を攻撃する疾患群である。筋肉の障害(炎症)を特徴とし、筋力低下が進行していく。皮膚筋炎(DM)など一部の特発性炎症性筋疾患の病型では、非常に特異的な皮膚症状(皮疹)を伴う。従来、皮膚症状が認められない場合、この病気は多発性筋炎(PM)と呼ばれていたが、現在では、特発性炎症性筋疾患にはさまざまな病型があり、治療に対する反応も異なることが分かっている。本レビューでは、免疫抑制薬に反応しないと考えられている「封入体筋炎」は対象外とした。
特発性炎症性筋疾患は、免疫系の過剰な働きを抑える「免疫抑制」薬と、免疫系の(異常な)反応を変化(正常化)させる「免疫調節」薬で治療される。これらの治療の目的は、免疫系が筋肉を攻撃するのを阻止することである。特発性炎症性筋疾患の治療には、免疫系の特定の分子や細胞を標的とする治療薬もあれば、標的としない(広範囲に作用する)治療薬もある。本レビューでは、最初の治療薬グループ(標的治療薬)を評価した。
知りたかったこと
特発性炎症性筋疾患における標的治療薬の利益と有害性を明らかにしたかった。特に、リツキシマブ、アバタセプト、および補体阻害薬による治療に関心があった。
実施したこと
特発性炎症性筋疾患の人における標的治療薬を評価したすべての研究を検索した。特発性炎症性筋疾患の人が、2つ以上の治療群にランダムに割り当てられていた研究のみを対象とした。
研究結果を比較および要約し、研究方法や研究規模などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。
治療が効果的かどうかを評価するには、さまざまな方法がある。特発性炎症性筋疾患の人にとって重要と考えられる特定の評価項目を探した。最も重視したアウトカムは、スコア上においての障害度または機能の改善と筋力の改善(スコアが15%以上改善した場合)の2つである。その他の評価項目は、国際的に合意された異なる評価指標の組み合わせによる改善達成スコア、すなわち国際筋炎評価・臨床研究グループ(IMACS)の改善定義(DOI)によるスコアおよび総合改善スコア(TIS)の使用による改善達成への評価、ステロイドの総投与量、重篤な有害事象、治療効果が不十分または有害事象により治療を中断した人の数などである。
わかったこと
830人の特発性炎症性筋疾患がある人を対象とした16件の研究を特定した。最大規模の研究は200人を対象に行われ、最小規模の研究は13人を対象に行われていた。全ての研究は、米国(14件)またはヨーロッパ(10件)、あるいは両地域で実施されていた;6件の研究では、他の地域も含まれていた。15件の研究は製薬会社から資金提供を受けており、残り1件の研究では薬剤提供を受けていた。研究期間は8週間から52週間であった。
1件の研究で、200人の参加者を対象にリツキシマブによる治療を評価していた。この試験では、試験開始後8週目で、参加者全員がリツキシマブを使用したため、8週目時点での結果を分析対象としていた。この評価期間は、事前に設定していた期間(リツキシマブが効果を示すと想定される期間)よりも短い期間である - 通常、治療効果が現れるとされる期間、6か月以上、最低3か月以上の結果を探していた。このような短期間の研究から得られた結果では、結果の信頼性に確信が持てない要因となる。リツキシマブが、IMACS DOIで評価される全体的な疾患改善に及ぼす効果、治療効果が不十分または有害事象による治療中断に与える影響についてのエビデンスは、非常に不確実である。他の評価に関しては、8週目時点では利用できなかった。
アバタセプトについては、168人の参加者を含む2件の研究を対象とした。アバタセプトは、IMACS DOIで評価される特発性炎症性筋疾患の活動性を改善させるかもしれないが、このエビデンスに対する信頼性は非常に低い。アバタセプトは、筋力、障害度、重篤な有害事象、または治療中断には、ほとんど影響を与えない可能性がある。
補体阻害薬(エクリズマブとジルコプラン)については、プラセボと比較した2件の研究(合計40人の参加者を対象)を特定した。使用したステロイドの総量について報告した研究はなかったが、他のアウトカムについては、補体阻害薬は特発性炎症性筋疾患にほとんど影響を与えない可能性がある。
エビデンスの限界は何か?
特発性炎症性筋疾患に対する標的治療薬が効果的であったかどうかを確かめるには、十分な情報がなかった。標的治療薬が有効かどうかを確かめるには、さらなる研究が必要である。
本エビデンスの更新状況
本要約は、2023年2月3日までに入手可能なエビデンスに基づいている。
《実施組織》バベンコ麻以、小林絵里子 翻訳 [2025.12.25]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD015854》