要点
– 心臓のリズムが正常な心不全患者にとっては、ワルファリン(抗凝固薬:タンパク質を阻害することで血液が固まるのを防ぐ薬)は、アスピリンなどの抗血小板薬(血小板を阻害することで血液が固まるのを防ぐ薬)に比べて有利な点がほとんどまたは全くないようだ。
– ワルファリンによる治療は、アスピリンやクロピドグレル(抗血小板薬)に比べて出血のリスクが高くなる。
抗凝固療法や抗血小板療法は、心不全の患者にどのような効果があるのか?
心不全の患者の中には、心房細動という不整脈が起こる人もいれば、心臓のリズムが正常(洞調律)のままの人もいる。心不全の患者は、心臓内の血流が遅くなることがあり、その場合、血液が固まって血栓ができる恐れがある。血栓は、血が固まるために必要なタンパク質(凝固因子)と粘着性の血液細胞(血小板)によって形成される。
心臓のリズムが正常な心不全患者も多くは心臓の動脈が狭くなっているため、医師はしばしば、血小板の働きを阻害して血栓をできにくくする薬であるアスピリンを処方する。また、心不全の患者は、肺や脚、脳の血管に血栓がつまる(血栓塞栓症、虚血性脳卒中などの)リスクがあり、これは障害や死につながる可能性がある。
ワルファリンのような経口抗凝固薬は、血が固まるために必要なタンパク質を阻害し、血栓をできにくくする働きがある。不整脈を伴う心不全患者においては、ワルファリンがアスピリンよりも有効であることが知られているため、すべての心不全患者(心臓のリズムが正常な患者を含む)に経口抗凝固薬を投与すべきかどうかを明らかにしようと、いくつかの研究が行われた。
知りたかったこと
心臓のリズムが正常な心不全患者において、抗凝固薬と抗血小板薬の効果に差があるかどうかを調べたかった。特に、投与された薬剤の種類によって、死亡、血栓性合併症(心臓発作や脳卒中など)、あるいは重大な出血性合併症のリスクに差があるかどうかを知りたかった。
実施したこと
心臓のリズムが正常な心不全の成人患者に対し、少なくとも1か月の間、抗血小板薬または抗凝固薬を無作為に選んで投与した研究を検索した。研究結果を比較して要約し、研究方法や研究規模などに基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。
わかったこと
合計4,187人が治療に参加した4件の研究をレビューの対象に含めた。
これら4件の研究では、アスピリンを服用した人とワルファリンを服用した人の間で、死亡リスクにはほとんど差がないことがわかった。また、心臓発作や脳卒中などの血栓性合併症のリスクを低くするという点でも、ワルファリンがアスピリンより優れていることを証明するのに十分なエビデンスは得られなかった。一方で、ワルファリンを服用している人が重度の出血を起こす頻度は、アスピリンを服用している人の2倍だった。1件の中規模の研究では、ワルファリンを別の抗血小板薬であるクロピドグレルとも比較して、同じような結果が出た。すなわち、死亡や血栓性合併症の発生率には差がなかったが、重度の出血を起こすリスクは高かった。
より効果的で安全な新しい薬ができない限り、この結論が今後の研究によって変わる可能性は低い。
エビデンスの限界
ワルファリンとアスピリンを比較したエビデンスは、血栓性合併症や出血の症例が少なく、また死亡リスクに関する結果の確実性を判断するのに十分な数の研究がなかったため、その信頼度は中程度にとどまる。
ワルファリンとクロピドグレルを比較したエビデンスは、ごく少数の症例のみに基づいており、その結果の確実性を判断するのに十分な数の研究がなかったため、その信頼性は非常に低い。
エビデンスの更新状況
これは、以前に発表されたレビューの更新版である。エビデンスは、2025年4月現在のものである。
《実施組織》杉山伸子、 橋本早苗 翻訳[2026.06.22]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD003333.pub4》
このコクランレビューは、元々は英語で作成されました。翻訳の正確性は、当該翻訳を担当した翻訳チームが責任を負います。質の高い翻訳を保証するため、この翻訳は細心の注意を払って作成され、標準的なプロセスに従って行われています。ただし、不一致、不明確または不適切な翻訳の場合、英語の原文が優先されます。




