脳腫瘍の診断を早めることを目的とした取り組みの効果は?

この研究疑問が重要である理由
脳腫瘍とは、異常に制御不能な方法で発達した脳の細胞群の集まりのことである。脳腫瘍には大きく分けて2つのタイプがある。

- 非がん性(良性)脳腫瘍:ゆっくりと成長し、全身に広がることはない。
- がん性(悪性)脳腫瘍:成長が早く、体の他の部分に転移する可能性がある。

脳で発生した脳腫瘍を原発性腫瘍と言う。他の場所から脳に転移している場合は、二次性腫瘍と呼ばれる。

脳は体のすべての機能を司っているため、すべてのタイプの脳腫瘍は深刻な健康上の脅威となる。良性脳腫瘍もがん性脳腫瘍も、どちらも致命的なものである。そうでない場合でも、非常に大きな障害となる可能性がある。症状には以下のようなものがある:

- 頭痛
- てんかん発作
- 持続する吐き気(気分が悪くなる)、嘔吐、眠気
- 行動や性格の変化、思考障害、記憶障害
- 体の片側に生じる脱力感、または麻痺
- 言語や視覚の問題

症状は全てそれほど深刻ではない状態のものと間違えられる可能性があるため、脳腫瘍を診断することは難しいと言われている。真の原因である脳腫瘍が判明するまでには、時間がかかることもある。しかし、脳腫瘍は大きくなればなるほど治療が困難になり、治療によって副次的な障害が発生する可能性が高くなるため、できるだけ早期に診断することが重要である。

脳腫瘍の診断を早めるために、さまざまな取り組みが行われている。これには、原因となる症状について医師や一般の人々の認識を高めるためのキャンペーンや、診断のための画像スキャンや専門家による評価への紹介を迅速に行うための専門的なガイドラインなどが含まれる。これらの取り組みがどれほど効果的なのかを知るために、研究のエビデンスを検証することにした。また、取り組みにかかるコストも調査したいと考えた。

エビデンスの検索法
研究チームは、脳腫瘍の診断を早めることを目的とした取り組みの効果を、通常の診療や別の取り組みと比較した研究を医学文献から探し、脳腫瘍を疑うような兆候や症状のある幅広い年齢層の人々を対象とした。

検索結果
脳腫瘍の診断について調査した115件の研究が特定されたが、すべての適応基準を満たすものはなく除外した。各取り組みのコストに関する情報について記載してある研究は特定されたなかった。

結果が意味すること
現在、脳腫瘍の診断までの時間を短縮する方法について、患者、医療従事者、医療サービスプランナーに情報を提供するための質の高い研究によるエビデンスはない。また、これらの取り組みにかかる費用についての情報もない。このレビューでは、この分野の研究の必要性が強調されている。

このレビューの更新状況
このレビューは、2020年1月現在のものである。このレビューでは、その時点までに得られた研究を対象としているが、それ以降に発表されたエビデンスは考慮していない。

訳注: 

《実施組織》冨成麻帆、 阪野正大 翻訳[2021.05.16]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013564.pub2》

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