死産を防ぐために、妊娠中にどのような介入をするのが最も効果的か?

死産とは

死産とは一般的に、妊娠22週以降の赤ちゃんが生まれる前に亡くなることを意味する。

重要である理由

死産は、家族に非常に大きな悲しみをもたらす。低・中所得国で最も多いが、高所得国でも見られる。死産の数は過去20年間あまり減少していない。そして、その数の多さにもかかわらず、世界的な健康問題として広く認識されているわけではない。死産を防ぐための効果的な方法について啓発することは、特に、低・中所得国において重要である。

本レビューで実施したこと

介入研究に関するコクラン系統的レビューは、最新の研究に基づいて特定の臨床疑問に答えることを目的としている。妊娠中の死産を予防する方法を評価したすべてのコクラン系統的レビューを検索し、死産予防に関するコクランによるエビデンスの概要を作成した。

得られたエビデンス

妊娠中の死産や出産前後の乳児の死亡を防ぐための61の異なる方法を評価した43件のコクランレビューを特定した。しかし、これらのうち、妊娠中の介入によって死産や乳児死亡のリスクを減少させる効果があるという明確なエビデンスを示したものはほとんどなかった。

以下、結果を「栄養」、「感染症の予防」、「妊産婦のその他の健康問題に対する管理」、「生まれる前の赤ちゃんに対する管理」の4つの分野に分類して示す。

栄養

- 胎児の成長を促すために、母親にバランスのとれたエネルギーとタンパク質のサプリメント(訳注:プロテインのクッキーやミルクなど、エネルギーの25%以下がタンパク質で構成されている補助食品)を与えることで、特に栄養不足の妊婦の場合、死産をおそらく最大40%減らすことができるだろう。

- ビタミンA単独をプラセボ(偽薬)または無治療と比較した場合、複数の微量栄養素(鉄分と葉酸を含む)を鉄分と葉酸あるいは鉄分単独と比較した場合では、いずれも効果がないという明確なエビデンスが示された。

感染症の予防と管理

- 殺虫剤処理されたマラリア予防蚊帳は、蚊帳を使用しない場合と比較して、子宮内の胎児死亡を33%減少させる可能性がある。

妊産婦のその他の健康問題に対する予防、発見、管理

- 助産師が主な医療ケア提供者として担当した場合、特に低リスクの妊婦の場合、胎児死亡や乳児死亡が16%減少した。

- 訓練を受けた伝統的な分娩介助者がいる場合は、訓練を受けていない伝統的な分娩介助者がいる場合と比較して、低・中所得国の農村部における死産が31%、乳児死亡が30%減少すると考えられる。

- 妊産婦の受診回数が少ないと、出産前後の乳児死亡が増えると考えられる。

- コミュニティベースの介入パッケージ(コミュニティ支援グループや女性グループ、コミュニティを動員した家庭訪問、または家庭訪問を行う伝統的な出産介助者に対する訓練を含む)は、死産を19%減少させる可能性がある。

生まれる前の赤ちゃんに対する管理

- 分娩監視装置は、胎児の心拍数や子宮の収縮を測定する。コンピューターで自動的に記録するものと、ペンと紙を使って手動で記録するものがある。子宮の収縮を測定し胎児の健康状態を観察するために自動的に記録できる分娩監視装置を用いると、従来の心拍数計と比較して、出産前後の乳児死亡率を80%減少させることができるだろう。

他の方法による効果については不明であった。

結果が意味すること

多くのレビューが見つかったが、明確なエビデンスを示したものはほとんどなかった。死産を防ぐために行われた方法の有効性は場所によって異なり、研究が実施された背景を理解することが重要であると強調された。今回の調査結果は、一般的な女性や世界中のすべての環境に適用できるものではない。

訳注: 

《実施組織》 杉山伸子 増澤祐子 翻訳、大田えりか 監訳 [2021.11.22] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD009599.pub2》

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