原因不明の不妊症に対する人工授精

レビューの論点

人工授精(排卵誘発剤の併用あり/なし)による治療は、排卵誘発剤と併用または単独で行われた、タイミング療法や待機療法(診察せずに経過をみるだけ)と比較して、原因不明の不妊症カップルの出生率を改善するか。また、排卵誘発剤を併用した人工授精は、併用しない人工授精と比べて出生率を改善するか。

背景

人工授精は、原因不明の不妊症カップルによく用いられる治療法である。人工授精を行う月経周期では、男性のパートナーの精子を調整し、排卵する時期に子宮に直接注入する。人工授精を行う周期では、排卵する卵の数を増やすために排卵を促す薬(排卵誘発剤)を使うことがある。.しかしながら、これらの薬物には副作用があり、また多胎妊娠のリスクが高まる。待機療法や排卵にあわせて性交をとるタイミング療法でも、妊娠率は上昇し、出生につながる。このレビューを参考にすることで、原因がわかっていない不妊症の治療を開始するカップルの意思決定を強化したい。

研究特性

2068人の女性を含む15のランダム化比較試験を特定した。排卵誘発剤を併用もしくは単独の人工授精で治療を受けた女性と、排卵誘発剤を併用もしくは単独のタイミング療法か待機療法に割り当てられた女性を比較した。また、排卵誘発剤を併用して人工授精を受けた女性と単独で人工授精を受けた女性を比較した。主要なアウトカムは、出生率と多胎の妊娠率とした。他のアウトカムとして、妊娠率、流産率および他の有害事象を含めた。エビデンスは2019年10月現在のものである。

主要な結果

ほとんどの治療群では、いずれかの人工授精が別の治療方法と比較して、許容可能な多胎妊娠率におさまりつつ累積出生率(一定の治療期間を終える時点での合計出生率)を改善するかどうかは不明である。しかし、自然妊娠の可能性が低いカップルでは、排卵誘発剤を併用した人工授精が、待機療法と比較して、おそらく累積出生率を改善するだろうという、中程度の質のエビデンスを認めた。同様に、人工授精単独での治療は、おそらく排卵誘発剤を併用した待機療法と比較して、累積出生率を改善するという中程度の質のエビデンスがあった。

エビデンスの質

エビデンスの質は、累積出生率については低度から中等度、多胎妊娠率については低度であった。エビデンスに関する主な限界は、サンプルサイズが小さく、数少ない研究をまとめたことによる、調査結果の精度不足である。

訳注: 

《実施組織》 杉山伸子 小林絵里子 翻訳[2020.03.11]
《注意》 この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
《CD001838.pub6》

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