メインコンテンツに移動

ホルモン剤による避妊をすると、女性がHIVに感染するリスクが高くなるのか?

ホルモン剤による避妊をすると、女性がHIVに感染するリスクが高くなるのか?

要点

  • 酢酸メドロキシプロゲステロン・デポーの注射(以下DMPA注射、訳者注:日本では2025年7月現在、避妊薬として承認されていない)は、銅製の子宮内避妊用具(IUD、訳者注:日本では銅付加IUDは発売終了した)と比べて、HIVに感染するリスクにほとんど差がない可能性が高い。

  • レボノルゲストレルのインプラント(以下LNGインプラント、訳者注:日本では2025年7月現在、避妊薬として承認されていない)は、銅付加IUDと比べて、HIVに感染するリスクにほとんど差がない可能性が高い。

  • DMPA注射は、LNGインプラントと比べて、HIVに感染するリスクをわずかに高める可能性が高い。

  • ノルエチステロンエナント酸塩(以下、NET-EN、訳者注:日本では2025年7月現在、避妊薬として承認されていない)と比べたDMPA注射のHIV感染に対する影響については定かではない。

HIVとは何か?

HIVは、身体の免疫系に影響を与え、ありふれた感染症や病気にかからないようにする力を弱めるウイルスである。このウイルスは、感染者の体液中に存在する。無防備な性行為によって人から人へ感染することが最も多い。また、注射針や注射器を共有することでもウイルスに感染する可能性がある。赤ちゃんには、妊娠中、出産時、授乳中に感染する可能性がある。

HIVを完治させる治療法はないが、治療は非常に有効である。治療によって、余命が延び、生活の質を改善することができる。

避妊とは何か?

避妊は、妊娠を調節する方法である。その目的は、望まない妊娠を避けることである。避妊法には、さまざまなものがある。避妊薬には、ホルモンを含むものと含まないものがある。現代の一般的な方法には、注射、インプラント、ピル、子宮内避妊具(IUD、子宮の中に装着するもの)などがある。DMPA注射は、3カ月に1回注射を打つ。LNGインプラントは、小さなインプラントを上腕の皮下に埋め込む。最長5年間、効果を維持することができる。NET-ENは、プロゲステロンというホルモンを含む注射で、2カ月に1回注射を打つ。

知りたかったこと

ホルモン剤による避妊が、他の避妊法と比べて、女性がHIVに感染するリスクを高めるかどうかを知りたかった。

実施したこと

HIVに感染するリスクが高い地域に住む女性を対象に、ホルモン剤による避妊の影響を調べたすべての研究を検索した。研究結果を比較して要約し、研究方法や規模などの要素に基づき、エビデンスに対する信頼度を評価した。

わかったこと

その結果、9,726人のHIVにかかっていない女性を対象とした4件の研究を見つけた。女性がHIVに感染するリスクと妊娠するリスクに関心があった。

DMPA注射は、銅付加IUDと比べて、HIVに感染する確率にほとんど差がない可能性が高い。

LNGインプラントは、銅付加IUDと比べて、HIVに感染する確率にほとんど差がない可能性が高い。

DMPA注射やLNGインプラントは、銅付加IUDと比べて、妊娠のリスクをおそらく下げるだろう。しかし、この効果は、研究のために女性が避妊法を続けるように促されたという特別な状況だったからかもしれない。

また、DMPA注射は、LNGインプラントと比べて、HIV感染のリスクをわずかに高めるだろう。一方で、DMPA注射は、LNGインプラントと比べて、妊娠のリスクにはほとんど差がないだろう。

HIVに感染するリスクと妊娠のリスクについて、NET-ENと比べたDMPAの効果については、非常に不確かである。

エビデンスの限界

どの研究も、避妊している女性と避妊していない女性のリスクを比べてはいなかったため、避妊していない女性がHIVに感染するリスクを確かめることはできない。いくつかの特定の避妊法を調べただけで、市販されているすべての避妊法を調べたわけではない。

本エビデンスの更新状況

このレビューは以前のレビューを更新したものである。エビデンスは、2023年9月13日現在のものである。

訳注

《実施組織》杉山伸子、内藤未帆 翻訳[2025.07.10]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD015701.pub2》

Citation
Rohwer C, McCaul M, Hofmeyr GJ, Rohwer AC. Hormonal contraception for women at risk of HIV infection. Cochrane Database of Systematic Reviews 2025, Issue 6. Art. No.: CD015701. DOI: 10.1002/14651858.CD015701.pub2.

Cookie の使用について

当サイトでは、当サイトを機能させるために必要なCookie を使用しています。また、任意のアナリティクスCookie を設定して改善に役立てたいと考えています。お客様がCookie を有効にしない限り、任意のCookie を設定することはありません。このツールを使用すると、あなたのデバイスにCookie を設定して、あなたの好みを記憶します。すべてのページのフッターにある「クッキー設定」リンクをクリックすることで、いつでもクッキーの設定を変更することができます。
使用するCookie の詳細については、Cookie のページを覧ください。

すべてを受け入れる
設定