メインコンテンツに移動

子宮内膜症による痛みの症状に対する合成黄体ホルモン製剤

要点

- 合成黄体ホルモン製剤の経口投与は、おそらくプラセボ(ダミーの治療)よりも子宮内膜症に伴う痛みの症状をやわらげる。合成黄体ホルモン製剤がどの程度痛みをやわらげるかは、痛みの種類や治療期間によって異なる。合成黄体ホルモン製剤の経口投与が、他のホルモン剤による治療と比べて、痛み全般、骨盤痛、生理痛、性交の時の痛みに効果があるかどうかついては、結論が出ていない。

- また、合成黄体ホルモン製剤のデポー(効果が長期間続く注射製剤)が、経口避妊薬、性腺刺激ホルモン放出ホルモン療法(GnRH作動薬および拮抗薬で、エストロゲンとプロゲステロンの濃度を低下させる治療)、レボノルゲストレル放出子宮内避妊具(子宮内に挿入する小さな器具で、レボノルゲストレルという合成黄体ホルモンを放出する)、エトノゲストレル避妊インプラント(腕の皮下に挿入する小さなプラスチックの棒)と比べて、痛み全般、骨盤痛、生理痛、性交の時の痛みに効果があるかどうかについても、結論が出ていない。合成黄体ホルモン製剤のデポーは、GnRH作動薬と比べると、望ましくない作用がおそらく少ない。合成黄体ホルモン製剤のデポーは、他の治療と比べて望ましくない作用に明らかな差はなかった。

- 限界はあるものの、このレビューは子宮内膜症の治療に関するさらなる研究の必要性を強調している。

子宮内膜症とは何か

子宮内膜症は、子宮の内膜に似た組織が体の他の部分で増える病気である。生殖できる年齢の女性の5~10%がかかり、多様な性の人ではその数は不明である。子宮内膜症は、特に生理中に痛むことが多い。合成黄体ホルモン製剤と呼ばれる、経口薬や注射、インプラントが治療法として研究されてきた。これらの治療は、子宮内膜症の悪化を防ぐ可能性がある。

知りたかったこと

子宮内膜症の患者に合成黄体ホルモン製剤がどのくらい効くのか知りたかった。具体的には、合成黄体ホルモン製剤が痛みやQOL、患者の満足度に与える影響に関心があった。また、合成黄体ホルモン製剤に望ましくない作用があるかどうかも知りたかった。

実施したこと

症状がある子宮内膜症の患者を対象に、合成黄体ホルモン製剤とプラセボ(ダミーの治療)または他の薬剤と比べた研究を検索した。研究の選択と分析には、複数のレビュー著者が関わり、複数のツールを使った。

わかったこと

5,059人の子宮内膜症の患者を対象とした33件の研究が見つかった。

以下の所見は、比べた治療内容や評価項目それぞれに対する研究の数が少ないため、結論は限定的である。

- プラセボと比べて、経口黄体ホルモン製剤は、6ヵ月後の痛み全般と3ヵ月後の生理痛をやわらげる可能性が高い。
- 経口避妊薬やGnRH作動薬と比べて、経口黄体ホルモン製剤は、痛みやQOL、望ましくない作用の軽減に明らかな効果を示さない。
- GnRH作動薬と比べて、黄体ホルモン製剤のデポーは、生理痛をやわらげるが、6ヵ月後の骨盤痛にはほとんど影響しないかもしれない。望まない作用が起こるリスクについて、黄体ホルモン製剤のデポーは、GnRH作動薬よりおそらく低い。
- GnRH拮抗薬と比べて、黄体ホルモン製剤のデポーは、痛みをやわらげる効果や望ましくない作用の発現リスクに対してほとんど影響を与えないかもしれない。しかし、黄体ホルモン製剤のデポーによる治療を受けている人は、望ましくない作用のために研究から離脱する可能性がおそらく高い。
- 痛みや患者の満足度、副作用に関して、エトノゲストレルのインプラントと比べた黄体ホルモン製剤のデポーの効果についてはわからない。

これらの結果は、子宮内膜症の症状に対する合成黄体ホルモン製剤の有効性がさまざまであることを示唆しており、さらなる研究の必要性を強調している。

エビデンスの限界

それぞれの比較に対して、研究が数件ずつしかなかった。多くの研究は、参加者が少なかった。これらの知見が決定的なものであるかどうかを知るためには、より多くの参加者による大規模な研究が必要である。

このエビデンスはどれくらい最新のものか?

エビデンスは、2024年10月29日現在のものである。

訳注

《実施組織》杉山伸子、小林絵里子 翻訳 [2025.11.22]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD002122.pub3》

Citation
Chen I, Kives S, Zakhari A, Nguyen DB, Goldberg HR, Choudhry AJ, Le A-L, Kowalczewski E, Schroll JBennekou. Progestagens for pain symptoms associated with endometriosis. Cochrane Database of Systematic Reviews 2025, Issue 10. Art. No.: CD002122. DOI: 10.1002/14651858.CD002122.pub3.

Cookie の使用について

当サイトでは、当サイトを機能させるために必要なCookie を使用しています。また、任意のアナリティクスCookie を設定して改善に役立てたいと考えています。お客様がCookie を有効にしない限り、任意のCookie を設定することはありません。このツールを使用すると、あなたのデバイスにCookie を設定して、あなたの好みを記憶します。すべてのページのフッターにある「クッキー設定」リンクをクリックすることで、いつでもクッキーの設定を変更することができます。
使用するCookie の詳細については、Cookie のページを覧ください。

すべてを受け入れる
設定