多嚢胞性卵巣症候群に対する鍼

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レビューの論点

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性に対する排卵障害の治療を目的とした鍼治療の有効性と安全性は?

背景

PCOSの女性では卵子を産生する臓器である卵巣に小さな囊胞があり、臨床徴候として低頻度または極めて少量の月経(生理)、妊娠不能、過度の発毛がみられる。現在、PCOSの女性に対して欧米で標準的に行われている内科的治療は処方薬、手術、生活習慣の変更である。鍼はさまざまなホルモン値に影響を与えることによって、排卵(卵子の放出)を刺激する可能性が、エビデンスにより示唆されている。鍼は中医学の1つで、ある部位の皮膚に細い鍼を刺す。PCOSの患者をランダム化せずに異なる治療法に割付けた複数の実験的研究では、鍼は副作用の発生率が低く、多胎妊娠(例:双子)のリスクを増加させず、比較的安価であることが示唆された。しかし、これらの結論は非ランダム化比較試験の結果にのみ基づくため、本疾患に対する鍼の有効性や使用を確実に裏づけることはできない。

試験の特性

排卵がない、または低頻度であるPCOSの女性に対する鍼治療について、ランダム化比較試験(患者を2つ以上の治療群のうち1つにランダムに割り付けた臨床試験)を医学データベースで検索した。鍼と偽鍼、無治療、生活習慣の変更(例:リラクゼーション)、従来の治療薬(例:排卵を起こすクロミフェン)を比較した。

本レビューでは413名を対象とした5件の研究を選択した。これらの研究は鍼と偽鍼(2件のRCT)、クロミフェン(1件のRCT)、リラクゼーション(1件のRCT)の比較、および鍼から小さな電流を流す電気鍼と運動(1件のRCT)の比較であった。このうち4件の研究では、1つ以上の領域でバイアスのリスクが高く、本来の効果を過大評価した可能性があった。結果は2015年10月現在のものである。

主な結果

主要アウトカムは生児出生率と排卵である。副次アウトカムは臨床的妊娠と副作用である。選択した研究で生児出生率を報告したものはなかった。3件の小規模研究では排卵について報告した。1件の研究では排卵率の報告が不十分であった。84名の女性を対象とした1件の研究では、鍼と偽鍼における排卵率のを示すエビデンスはなかった。しかし、28名を対象とした1件の研究では極めて質の低いエビデンスにより、鍼はリラクゼーションよりも排卵頻度を上げる可能性が示唆された。他の2件の研究では、鍼や電気鍼が月経頻度を回復させる可能性を報告した。

鍼と偽鍼における妊娠率のを示すエビデンスはなかった。比較したいずれの群においても副作用のを示すエビデンスはなかったが、データが非常に少なく、確固たる結論には至らなかった。エビデンスの質は極めて低く、限界の主な原因は、重要な臨床アウトカムを報告していないこと、および影響が幅広く、イベント数が少ないことによる不正確性であった。研究方法に関する報告も不十分であった。PCOSの女性に対する排卵障害の治療を目的とした鍼の使用を支持するには、現在のエビデンスは不十分である。

エビデンスの質

エビデンスの質は低く、限界の主な原因は、重要な臨床アウトカムを報告していないこと、および不正確性が極めて深刻なことであった。

著者の結論: 

これまでのところ、限られたRCTによる報告のみである。現時点では、PCOSの女性に対する排卵障害の治療を目的とした鍼の使用を支持するには、エビデンスが不十分である。

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背景: 

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では、臨床徴候として希発月経、不妊症、多毛症がみられる。PCOSに対する従来の治療には、さまざまな経口薬、生活習慣の変更、外科的治療などがある。βエンドルフィンは、正常卵巣と多嚢胞卵巣の卵胞液にみられる。排卵中の健常女性のβエンドルフィン濃度は、血漿よりも卵巣の卵胞液でかなり高いことが示されている。鍼はβエンドルフィン産生に影響を与えることから、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌に影響すると考えられるため、鍼は排卵誘発や妊孕性に作用する可能性があると仮定した。

目的: 

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のある希発排卵や無排卵の女性に対する鍼治療の有効性と安全性を評価すること。

検索方法: 

以下のデータベースから関連性のある研究を同定した。Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、Ovid MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、CNKI、および試験登録。データは2015年10月19日現在のものである。

選択基準: 

PCOSのある希発排卵や無排卵の女性を対象に、鍼治療の有効性を調べたランダム化比較試験(RCT)を選択した。準RCTや偽RCTは除外した。主要アウトカムは生児出生および排卵とし、副次アウトカムは臨床的妊娠、月経再開、多胎妊娠、流産、および有害事象とした。GRADE法を用いてエビデンスの質を評価した。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれ研究を選択し、データを抽出し、バイアスのリスクを評価した。Mantel-Haenszelオッズ比(OR)、平均差(MD)、および95% 信頼区間(CI)を算出した。

主な結果: 

女性413名を対象とした5件のRCTを選択した。これらの試験では鍼と偽鍼(2件のRCT)、鍼とリラクゼーション(1件のRCT)、鍼とクロミフェン(1件のRCT)、電気鍼と運動(1件のRCT)を比較した。このうち4件の研究では、1つ以上の領域でバイアスのリスクが高かった。

生児出生率を報告した研究はなかった。臨床的妊娠について報告した2件の研究では、鍼と偽鍼のを示すエビデンスはなかった(OR 2.72、95% CI 0.69 ~ 10.77、2件のRCT、女性191名、エビデンスの質は極めて低い)。

3件の研究では排卵について報告した。1件のRCTでは、3カ月の治療期間中に3回排卵した女性の人数を報告したが、排卵率は示さなかった。1件のRCTでは、平均排卵率について鍼と偽鍼のを示すエビデンスはなかった(MD -0.03、95% CI -0.14 ~ 0.08、1件のRCT、女性84名、エビデンスの質は極めて低い)。しかし、もう1件のRCTでは極めて質の低いエビデンスにより、鍼はリラクゼーションよりも排卵頻度を上げる可能性が示唆された(MD 0.35、95% CI 0.14 ~ 0.56、1件のRCT、女性28名)。

2件の研究では月経頻度について報告した。1件のRCTでは、鍼は偽鍼よりも月経の間隔を短縮することを報告した(MD 220.35、95% CI 252.85 ~ 187.85、女性146名)。1件のRCTでは、電気鍼は非介入よりも月経頻度を増加させることを報告した(0.37、95% CI 0.21 ~ 0.53、女性31名)。

有害事象について、群間を示すエビデンスはなかった。CIの幅が非常に広く、イベント発生率が非常に低いため、エビデンスの質は極めて低かった。

全般的なエビデンスの質は低い、または極めて低かった。限界の主な原因は、重要な臨床アウトカムを報告していないこと、および不正確性が極めて深刻なことであった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.3]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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