乳がん女性の支持的ケアのための乳がん専門看護師

レビューの論点

乳がん専門看護師(SBCN)(訳注:日本には存在しない。日本では、専門看護師ではなく、乳がん看護認定看護師と呼ばれる認定看護師がいる)が行うどのような介入が、乳がんと診断された女性のQOL(生活の質)を向上させるか?

なぜこの論点が重要か

乳がんは複雑な疾患であり、世界的に見ても女性に最も多いがんである。治療法の進歩、スクリーニングの改善、多職種による管理などにより、過去20年間で生存率は著しく向上している。乳がんは身体的な疾患だけでなく、個人の心理的、感情的、社会的ニーズにも影響を与える。

SBCNは、「高度な知識」を持つ看護師と定義されており、診断時に女性と出会い、情報提供や精神的サポート、患者の擁護・代弁、治療経過を通した継続的な関わりを提供し、さまざまな要素を有する患者のニーズに応える者である。SBCNによる焦点を絞った介入やSBCNが多職種チームの中で新たな役割を担うことなどを含む、SBCNによる介入の有効性を理解することは重要である。

エビデンスの特定および評価方法

SBCNの介入を標準的なケアやその他の支援的介入と比較したランダム化比較試験を研究文献で検索した。主要評価項目はQOLで、一般的な健康関連QOL、がんに特化したQOL、不安と抑うつ、参加者の満足度などの指標が評価された。すべての研究から得られたエビデンスを要約し、研究がどのように行われたか、結果が一貫しているかなどの要因を考慮した。

わかったこと

合計2905人の参加者を対象とした14件の研究と、進行中の4件の研究が見つかった。13件の研究は原発性乳がんの女性を対象としており、1件の研究は進行性乳がん(転移性または二次がんと呼ばれることもある)の女性を対象としている。これらの研究を以下のように分類した:原発性乳がんおよび進行性乳がんにおける心理社会的看護介入と、フォローアップケアを提供するSBCN主導の介入

原発性乳がんの女性に対する心理社会的看護介入と標準的なケアとの比較

1469人の女性が参加した9件の研究が含まれていた。これらの研究では、不安、抑うつ、苦痛、感情的および社会的機能、身体的症状などのQOLを改善するために、さまざまなタイプの心理社会的介入が検証された。一部の研究では、さまざまな測定ツールを用いて18カ月までの成果を測定した。乳がんと初めて診断された女性に対してSBCNが行う心理社会的介入は、QOLとケアに対する満足度を向上させることができるというエビデンスがある。

進行性(転移性)乳がんの女性に対する心理社会的看護介入と標準的なケアとの比較

新たに進行性乳がんと診断された女性105人を対象に、心理社会的な介入 を行ったところ、標準的なケアと比較して、3カ月後のQOLに差がなかったことを示した研究が1件のみあった。

乳がん専門看護師による介入で、原発性乳がんの女性のフォローアップケアを行う

1331人の女性が参加し、5年後までの調査結果を報告した4件の研究を対象とした。4件の研究すべてにおいて、SBCNによるフォローアップケアは、女性のQOLとケアに対する満足度において、標準的なケアと同等の効果があることが示された。全体として、これらの研究は、多因子の役割の中で、ある人のケアの特定の時点を捉えていた。有害事象の報告はなかった。エビデンスによると、標準的なケアと比較した場合、SBCNの介入は、健康関連のQOL、ケアに対する満足度、不安や抑うつを改善することが示唆されている。SBCN主導のフォローアップケアの介入は、女性のQOLとケアの満足度において、通常のケアと同等の効果がある。全体的に、エビデンスの質のレベルは非常に低度から中程度の確実性に及んでおり、調査結果に対する確信を深めるために、進行中の研究の結果を待ちたい。

進行乳がんの女性に対するSBCN主導のフォローアップ介入はなかった。

この結果が意味することは何か?

エビデンスによると、乳がんの一次診断を受けた女性に対してSBCNが行う心理社会的介入は、一般的な健康関連のQOL、がん特有のQOL、不安や抑うつ状態、ケアに対する満足度について、改善させるか、少なくとも 標準的なケア と同等の効果があることが示唆されている。今後の研究では、SBCNの専門性をより明確にすることで、意味のある実践への移行を成功させ、SBCNが心理社会的支援の分野でより大きな影響力を持つようにする必要がある。SBCNの資格とトレーニングは、介入の説明と同様に、より明確に報告される必要がある。

研究の資金源

2件の研究は資金調達について報告しておらず、11件の研究は慈善団体や政府機関からの資金提供を受けていると報告し、1件の研究は資金提供を受けていないと報告した。2件の研究では、資金提供者の役割について報告されている。

調査期間

2020年6月11日

訳注: 

《実施組織》小林絵里子、杉山伸子 翻訳、[2021.08.10]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD005634.pub3》

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