みなさん、こんにちは。私はニュージーランド、オタゴ大学の宮原資英です。発達性協調運動障害は、日常の基本的な動きが苦手なことを特徴とする、よく見られる発達障害です。2017年7月のコクランレビューで、この発達障害に対する取り組みの一つである『課題指向型介入』の効果に関する新しいエビデンスを発表しました。今回のポッドキャストでは、その内容をご紹介します。
みなさん、こんにちは。私はニュージーランド、オタゴ大学の宮原資英です。発達性協調運動障害は、日常の基本的な動きが苦手なことを特徴とする、よく見られる発達障害です。2017年7月のコクランレビューで、この発達障害に対する取り組みの一つである『課題指向型介入』の効果に関する新しいエビデンスを発表しました。今回のポッドキャストでは、その内容をご紹介します。
発達性協調運動障害は、英語でDevelopmental Coordination Disorder、略してDCDと呼ばれるものです。DCDのある子どもにとっては、手先やからだ全体を効果的に動かすことが難しいので、家庭での身辺動作や、学校活動、スポーツやレジャーへの参加が妨げられます。また、そのことが原因で、自信を失ったり、対人関係もうまくいかなくなったりするといった傾向があります。
課題指向型介入とは、苦手な運動技能を向上させるために、児童にとって課題となっている運動を練習する機会を作ることです。このレビューでは、課題指向型介入の効果を把握するために、課題指向型介入を実施すると、DCDのある児童の運動技能、心理・社会的機能、日常活動や社会参加に対して、どれだけの効果があるかを調べました。
2017年3月までの研究を16のデータベースと5つの臨床試験登録サイトを元に、系統的に研究論文を探索した結果、DCDと診断された5歳から12歳の児童649名を含む、15件の研究を適切な研究であると判断しました。介入研究は、オーストラリア、カナダ、中国、スウェーデン、台湾、およびイギリスにある病院や、大学のクリニックや研究室やセンター、さらにコミュニティーセンターや家庭や学校などで実施されたものです。
この15件の適切な研究のうち、6件の研究結果を、メタ分析という統計学的手法を使って統合しました。メタ分析とは、複数の研究の成果を統合することによって、より確信度が高い結論に至る統計的解析法です。6件の研究のメタ分析の結果、課題指向型介入には、運動技能を中程度向上する効果があることが示されました。しかしながら、この6件の研究のうち、もっとも質の高い2件の研究結果のみを統合すると、有意な効果は示されませんでした。つまり、課題指向型介入を受けたDCDのある子どもの運動技能は、介入を受けない統制群に選ばれたDCDのある子どもの運動技能と比べて、それほど向上していなかったのです。
私たちレビュー著者は結論として、手先の動きやバランスや球技などの運動検査で測定される運動技能を6か月未満で向上させるためには、課題指向型介入は有益かもしれない、としました。課題指向型介入の研究に参加した子どもたちは、怪我することなく、介入プログラムを最後まで続けることができました。つまり、子どもも、親も、医療関係者や教育関係者も、安心して課題指向型介入を実践できるということです。しかし、この介入の有効性に関しては、運動検査の得点を高めることだけしか、今のところ明らかになっていません。将来の研究では、運動検査以外の心理社会的機能、日常活動や社会参加なども包括的に測定して、慎重にランダム化比較試験を計画し、実施する必要があるといえるでしょう。
このコクランレビューの英語の全文や、将来のアップデートを閲覧するには、ウェブページ「ダブリュ、ダブリュ、ダブリュ、ドット、しー、おー、しー、えいち、あ-る、えー、えぬ、いー、コクラン、ドット、オーアルジーおるぐ」にアクセスした後、検索欄に「DCD」と入力してください。そうすると、DCD関連の英語の論文ページが出てきます。そのページ上にある日本語をクリックすると、日本語の要約を閲覧することができます。