主なメッセージ
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軽度から重度の変形性膝関節症患者において人工膝関節全置換術後に非外科的治療プログラムを行った場合、非外科的治療プログラムのみと比べて、以下のことがわかった。 ・実際に意味があると感じられるレベルのわずかな痛みの軽減を感じる可能性がある。 ・実際に意味があると感じられないレベルのわずかな身体機能の改善の可能性がある。 ・追加手術の必要性がわずかに減少する可能性がある。健康関連QOL(生活の質)については、治療群の間で実益をもたらすような差はないと思われる。
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人工膝関節全置換術後の非外科的治療プログラムが、非外科的治療プログラムのみと比べて、重篤な副作用や副作用による治療中止のリスクに及ぼす影響は非常に不確実である。
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変形性膝関節症に対する人工膝関節全置換術と非外科的治療を比べる今後の研究が必要である。それらの研究では、治療による利益とリスク、患者満足度を調べる必要がある。
変形性膝関節症とは?
変形性膝関節症は、膝関節とその周辺に影響を及ぼす、よくある進行性の疾患である。変形性関節症は、痛み、こわばり、運動能力の低下を引き起こし、軽度、中等度、重度の場合がある。これらの症状は、世界中で何百万人もの人々のQOL(生活の質)に影響を及ぼしている。
変形性膝関節症はどのように治療するのか?
中等度から重度の変形性膝関節症の治療には、非外科的治療と人工膝関節置換術がある。非外科的治療は、教育、運動、理学療法、減量、薬物療法、関節注射などが一般的である。
変形性膝関節症が進行すると、人工膝関節置換術が必要になる人もいる。人工膝関節置換術では、外科医は膝関節の表面(脛骨、大腿骨、ときには膝蓋骨も)を金属、プラスチック、セラミック製の人工物に置き換える。また、関節がスムーズに動くように、脛骨と大腿骨の間にプラスチックのスペーサーを入れる。
変形性膝関節症には多くの治療法があり、誰にとっても最良といえる治療法が一つだけあるわけではない。変形性膝関節症の患者が治療法を理解するためには、非外科的治療と人工膝関節置換術の潜在的な利点とリスクに関するわかりやすく信頼できる情報が必要であり、それによって個人の価値観、目標、生活様式に最も適した治療を選択できるようになる。
知りたかったこと
中等度から重度の変形性膝関節症の成人に対して、どの治療(人工膝関節置換術、非外科的治療、プラセボ(薬効のない薬を投与する)、シャム治療(みせかけの手術をする等))が最も効果的かを調べたかった。
また、人工膝関節置換術、非外科的治療、プラセボ、またはシャム治療を行った成人に、それぞれで副作用があったかどうかも調べたかった。
実施したこと
中等度から重度の変形性膝関節症患者を対象に、人工膝関節置換術と非外科的治療、プラセボ、シャム治療と比べた過去15年間の研究を検索した。研究結果を要約して比較し、研究の方法や規模などの要因に基づいて、エビデンスに対する信頼度を評価した。
わかったこと
軽度から重度の変形性関節症の成人100人を対象とした研究が1件だけ見つかった。この研究では、人工膝関節全置換術後に12週間の非外科的治療プログラムを行った場合と、同じ12週間の非外科的治療プログラムのみを行った場合を比較した。人工膝関節全置換術後に非外科的治療プログラムを行ったグループでは、50人中32人が女性(64%)で、平均年齢は66歳であった。非外科的治療プログラムのみを行ったグループでは、50人中30人が女性(60%)で、平均年齢は66歳であった。
主な結果
この研究では、人工膝関節全置換術後に12週間の非外科的治療プログラムを行った場合と、同じ12週間の非外科的治療プログラムのみを行った場合を比べて、以下のことがわかった。
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・1年後に実際に意味があると感じられるレベルで痛みが減る可能性がある。
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・1年後に身体機能は改善するかもしれないが、その改善は実際に意味があるとは感じられないレベルかもしれない。
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・膝の追加手術(膝の再置換術または追加の手術、および膝の初回手術)の必要性が減る可能性がある。
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・1年後の健康関連QOL(生活の質)において、治療群の間で実際に意味があると感じられるような差はない可能性がある。
治療結果に対する患者満足度に関するエビデンスはなかった。
人工膝関節全置換術後に12週間の非外科的治療プログラムを行った場合、同じ12週間の非外科的治療プログラムのみを行った場合と比べて、1年後の重篤な副作用のリスクや副作用による治療中止のリスクに対する影響については、非常に不確実である。
エビデンスの限界
エビデンスに対する信頼度は中等度から非常に低い。その理由は、見つかった研究が2011年から2013年に行われた小規模な研究の1つだけだったこと、医師がどのように人工膝関節置換術を行う人を決めたかが不明確であったこと、対象者の一部は中等度から重度の変形性関節症ではなく軽度であったこと、前週に激しい痛みがあった人が研究から除外されていたことであり、これらがレビューの結果に影響を与えた可能性がある。さらに、対象者は自分が受けた治療を知っており、それが結果に影響を与えた可能性がある。
このレビューの更新状況
エビデンスは2025年1月現在のものである。
《実施組織》菊井将太、井上円加 翻訳[2026.02.08]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD015378.pub2》
このコクランレビューは、元々は英語で作成されました。翻訳の正確性は、当該翻訳を担当した翻訳チームが責任を負います。質の高い翻訳を保証するため、この翻訳は細心の注意を払って作成され、標準的なプロセスに従って行われています。ただし、不一致、不明確または不適切な翻訳の場合、英語の原文が優先されます。