要点
アシクロビルクリームおよびペンシクロビルクリームは、プラセボ(偽の治療)と比較して、有害事象のリスクを増加させることなく、口唇ヘルペスの治癒を約1日早める可能性がある。両クリームを比較すると、治癒までの期間に対する効果および有害事象のリスクは同程度である可能性がある。アシクロビル錠はプラセボと比較して、口唇ヘルペスの治癒までの期間にほとんどまたは全く差をもたらさない可能性があるが、バラシクロビル錠は治癒を約1日早めることができる。
いずれの治療法においても有害事象の発生はまれであった。
口唇ヘルペスの研究において、標準的な評価項目を定めることで、研究間の比較が容易になり、医師がより良い治療法を選択するのに役立つと考えられる。
口唇ヘルペスとは何か?
口唇ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルス(HSV)への感染によって唇や口の周囲に痛みを伴う水疱が生じる疾患である。一般的によくみられる感染症で、他人に感染する可能性があり、多くは繰り返し発症する。口唇ヘルペスによる不快感や見た目の問題は、生活の質に影響を及ぼす可能性がある。治療を行わない場合には重度の合併症を引き起こすこともある。
口唇ヘルペスにはどのような治療法があるか?
口唇ヘルペスの標準的な治療は、ウイルスの増殖を抑えることを目的としており、患部に塗布する抗ウイルス薬のクリーム(アシクロビルやペンシクロビルなど)や、口から服用する抗ウイルス薬の錠剤(アシクロビルやバラシクロビルなど)が使用されている。その他の治療法は、適応が限定されているか、現在試験段階にある。
何を調べようとしたのか?
口唇ヘルペスの治癒を早め、症状を軽減できる治療法について明らかにしようとした。また、口唇ヘルペスの治療における有害作用についても調査した。
何を行ったのか?
免疫機能が正常な口唇ヘルペス患者を対象として、口唇ヘルペスの治療を偽の治療(プラセボ)、治療なし(無治療)、または他の有効な治療と比較した研究を検索した。研究結果にみられる傾向や全体的な結果を明らかにするために、研究のデータを統合し、研究方法や研究規模などの要因に基づき、エビデンスに対する確信度を評価した。
主に最も一般的な口唇ヘルペスの治療を評価対象としたが、あらゆる種類の治療についてのエビデンスを収集した。
何を見つけたのか?
合計22,631人(大部分が女性)が参加した87件の研究を組み入れた。研究はヨーロッパ、北米、オーストラリア、およびアジアで行われ、合計58種類の治療が評価されていた。研究期間はさまざまであったが、ほとんどの研究では、1つの口唇ヘルペスの発症から治癒までを追跡していた。
ほとんどの研究(87件中84件)で、口唇ヘルペスが治癒するまでの期間が報告されていた。半数をわずかに超える研究(49件)で、治療中止の原因となった重度の有害作用についての情報が報告され、58件の研究で軽度または中等度の有害事象についての情報が報告されていた。
43件の研究では製薬企業から資金提供を受け、25件では非営利団体から資金提供を受けていた。1件の研究では資金提供を受けていないと報告され、18件の研究では資金源が報告されていなかった。
主な結果
治癒までの期間および有害事象に加えて、治療による症状の改善、口唇ヘルペスの重症度、および痛みの程度への影響についても調査を試みた。しかし、これらの項目について、最も一般的な治療を評価した研究において解析可能な結果は報告されていなかった。
抗ウイルス薬のクリームとプラセボとの比較
プラセボと比較した場合:
アシクロビルクリームは、重度の有害事象(合計6,574人が参加した9件の研究)または軽度もしくは中等度の有害事象(合計6,525人が参加した8件の研究)のリスクを増加させることなく、口唇ヘルペスの治癒を約1日早める可能性がある(合計3,475人が参加した7件の研究)。
ペンシクロビルクリームは、重度または軽度もしくは中等度の有害事象のリスクを増加させることなく(合計3,598人が参加した2件の研究)、口唇ヘルペスの治癒を約1日早める可能性がある(528人が参加した1件の研究)。
抗ウイルス薬の錠剤とプラセボとの比較
プラセボと比較した場合:
アシクロビル錠は、治癒までの期間にほとんどまたは全く効果がない可能性がある(145人が参加した1件の研究)。
バラシクロビル錠は、治癒を約1日早める(合計1,218人が参加した2件の研究)。
アシクロビルの研究では、有害事象に関する情報は報告されていなかった。バラシクロビルの研究では、重度の有害事象は発生せず、軽度または中等度の有害事象がみられた参加者の数は、バラシクロビル使用群とプラセボ使用群で同程度であった(合計1,856人が参加した2件の研究)。
ペンシクロビルクリームとアシクロビルクリームとの比較
ペンシクロビルクリームとアシクロビルクリームは、治癒までの期間に対する効果および軽度または中等度の有害事象のリスクが同程度である可能性がある(225人が参加した1件の研究)。この研究では、重度の有害事象は発生しなかった。
アシクロビルクリームとアシクロビル錠との比較
アシクロビルクリームとアシクロビル錠の効果を比較することを試みたが、両者を比較した研究は見つからなかった。
エビデンスの限界は何か?
一般的な口唇ヘルペス治療に関するエビデンスの大部分について、確信度は中程度か、または低かった。これは主に、研究規模が小さかったためである。光線力学療法、レーザー治療、亜鉛パッチ、プロポリスの局所投与などの新しい治療法には、さらなる利益がある可能性があるが、それを裏付けるエビデンスは限られている。
ほとんどの研究は成人を対象としていたため、これらの治療の小児に対する有効性については確信度が低い。また、東アジアおよび医療資源の乏しい環境で実施された研究は少なかった。
本エビデンスはいつのものか?
本レビューには、2025年9月23日までに発表された研究が含まれている。
《実施組織》小泉悠、杉山伸子 翻訳[2026.10.19]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD015216.pub2》
このコクランレビューは、元々は英語で作成されました。翻訳の正確性は、当該翻訳を担当した翻訳チームが責任を負います。質の高い翻訳を保証するため、この翻訳は細心の注意を払って作成され、標準的なプロセスに従って行われています。ただし、不一致、不明確または不適切な翻訳の場合、英語の原文が優先されます。




