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上あごの歯がなく、骨量が大きく減っている人に対する頬骨インプラントを用いた治療の利点とリスクは何か?

要点

  • 上あごの骨を増やしてから埋め込む通常の歯科インプラントと比べると、頬骨インプラント(頬骨に埋め込む長いインプラント)は失敗する確率が低く、固定式の人工歯(上部構造)をより早く装着できる。しかしその一方で、合併症は多くなる。

  • インプラント体を埋め込む(埋入する)穴をあけるには、通常の回転切削ドリルを使う方法と、超音波振動によって骨を削る器具を使う方法(ピエゾサージェリー)がある。インプラント体や人工歯の耐久性や、合併症のリスクについては、2つの方法の間にほとんど、またはまったく差がない可能性がある。しかし、回転切削ドリルの方が恐らく短時間で処置を行える。

  • これらの点について調査した研究は少ない。利益とリスクについて、より確実なことを知るためには、より多くの、より大規模な研究が必要である。

歯がほとんどまたは全てなくなると、何が起こるか?

歯を失うと、物を噛む刺激がなくなるため、歯の埋まっていた骨(歯槽骨)は徐々に減っていく。骨が減る程度には個人差があるが、減りすぎて入れ歯(義歯)のつけ心地が悪くなることもある。そのために食事や会話がしにくくなり、自信やウェルビーイング(心身が健康であり、社会的状態も良好であること)、社会との関わりにも影響する可能性がある。歯科インプラントは、このような問題の改善に役立つ。

歯科インプラントとは何か、またどのように役立つのか?

通常の歯科インプラントでは、人工の歯の根(歯根)の役割を果たす長さ0.5~2 cm程度の短いスクリュー(インプラント体、フィクスチャー)をあごの骨に埋め込み、その上に固定式の人工歯(上部構造)や取り外し式または半固定式の入れ歯を装着する。

頬骨インプラント(zygomatic implants)は、長さ約3~5 cmと、通常のインプラントより長く、上あごの骨(上顎骨)が減りすぎて、通常のインプラントをしっかり支えられるだけの骨が残っていない場合に用いられる。頬骨インプラントには、ほとんどの場合、取り外し式の入れ歯ではなく固定式の人工歯(上部構造)が装着される。

頬骨インプラントの場合、上部構造をインプラント埋入と同じ日に装着できることが多い。これは、インプラントを支えるために、あごの骨に新しい骨(または骨の代わりとなる材料)を移植する手術が不要だからである。骨移植手術は複雑で、費用と時間を要し、複数回の手術が必要になることもあるため、上部構造を装着するまでに1年以上かかる場合もある。

頬骨インプラント埋入のための骨の切削は、回転切削ドリルまたはピエゾサージェリーを用いて行われる。ピエゾサージェリーは超音波振動を利用して骨を切削する方法で、身体への負担が比較的少ない。しかし、頬骨インプラントの処置は合併症を起こす可能性があるため、期待される利益とこうしたリスクを十分に秤にかける必要がある。

何を明らかにしようとしたのか?

頬骨インプラントでは、上顎骨に骨移植を行ってから埋入する通常のインプラントと比較して、以下のリスクが減るかどうか調査した。

  • 上部構造の不具合(破損したり、ゆるんだりする)

  • インプラント体の不具合(インプラント体が不安定になる)

  • 合併症の発生

また、以下の点についても調査したかった。

  • どちらのインプラントの方が患者の満足度が高く、より早く治療を完了できるか。

  • インプラント体の埋入部位を切削する上で、手術の時間がより短いのは、また患者に好まれるのはどの方法か。

何を行ったのか?

以下のものを比較した研究について検索を行った。

  • 上顎骨が大きく減少した患者において、頬骨インプラントを用いた場合と、骨移植をした上顎骨に通常のインプラントを埋入した場合

  • または、頬骨インプラントの埋入部位を切削する際のさまざまな方法

研究結果を比較・統合し、研究方法などに基づき、エビデンスの信頼性を評価した。

何を見つけたのか?

3年間、参加者の追跡調査を行った小規模な研究が2件あり、いずれもヨーロッパで実施された研究であった。1件は頬骨インプラントと骨移植を伴う通常のインプラントを比較した研究で、参加者数は71人であった。もう1件は、インプラント体の埋入部位の切削方法として、ピエゾサージェリーと回転切削ドリルとを比較した研究で、参加者数は20人であった。

主な結果

頬骨インプラントの場合、治療後3年目の状況では、骨移植を併用した通常のインプラントと比べて、

  • 上部構造の不具合は少ない可能性がある。頬骨インプラントの場合、上部構造に問題が生じた患者は通常のインプラントと比較して100人あたりおよそ12人少なかった。

  • インプラント体の不具合も恐らく少ない。頬骨インプラントの場合、問題が生じた患者は100人あたりおよそ22人少なかった。

  • 一方、合併症の発生は恐らく多い。頬骨インプラントの場合、およそ5人中4人に合併症がみられたのに対し、通常のインプラントでは約2人に1人であった。

どちらの方法が患者の満足度が高かったかは不明である。しかし、頬骨インプラントを埋入した人は、上部構造を装着できるまでの期間が1日強と、通常のインプラントの人はおよそ444日かかったのと比べて格段に早かった。

インプラント体の埋入部位を切削するための2つの方法(ピエゾサージェリーと回転切削ドリル)を比較した研究では、3年後において、以下の点でほとんどまたはまったく差がない可能性がある。

  • 上部構造の不具合

  • インプラント体の不具合

  • 合併症の発生

  • 患者の好み

しかしながら、回転切削ドリルを使用した場合、インプラント体の埋入時間が恐らく9分以上短縮される。

エビデンスの限界は何か?

エビデンスに対する信頼性は、「非常に低い」から「中等度」と判断された。理由は、これらの方法を試験した研究は2件しかなく、参加者数も少なかったためである。最も適した方法を明らかにするには、さらに多くの適切に設計された研究を実施する必要がある。

本エビデンスはいつのものか?

2025年11月時点におけるエビデンスである。

訳注

Translation notes 《実施組織》小泉悠、橋本早苗 翻訳[2026年9月11日]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD004151.pub4》

このコクランレビューは、元々は英語で作成されました。翻訳の正確性は、当該翻訳を担当した翻訳チームが責任を負います。質の高い翻訳を保証するため、この翻訳は細心の注意を払って作成され、標準的なプロセスに従って行われています。ただし、不一致、不明確または不適切な翻訳の場合、英語の原文が優先されます。

Citation
Visconti RF, Greco K, Cotticelli C, Ambrosi A, Esposito MAB. Interventions for replacing missing teeth: zygomatic implants for the rehabilitation of the severely atrophic edentulous maxilla. Cochrane Database of Systematic Reviews 2026, Issue 7. Art. No.: CD004151. DOI: 10.1002/14651858.CD004151.pub4.

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