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脳卒中後の日常生活、バランス、歩行の回復において、さまざまな身体的リハビリテーションのアプローチはどの程度有効か?

主なメッセージ

脳卒中になった人

- 身体的リハビリテーションを行わない場合と比較して、身体的リハビリテーションは日常生活動作、足の動き、バランス、歩行を改善する可能性がある。2.5時間/週以上の身体的リハビリテーションを行うことで、より大きな効果が得られる可能性がある。

- 通常の身体的リハビリテーションに加えて、追加の身体的リハビリテーションを行うことも治療結果を改善する可能性がある。追加の身体的リハビリテーションを増やせば増やすほど、その効果は大きくなる可能性がある。

- 課題指向型練習 (動作スキルの獲得、または再獲得を目的とした実生活での積極的な課題練習)を中心とした身体的リハビリテーションは、日常生活動作や運動能力を改善する可能性がある。

なぜこのテーマに関するエビデンスを見直すことが重要なのか?

脳卒中により、身体の一部が麻痺したり、生活上で身体を動かしにくくなったりすることがある。脳卒中後の人々がどのように回復するかについてはさまざまな考えがあり、長年にわたり身体的リハビリテーションのさまざまな方法が開発されてきた。多くの場合、セラピストは臨床経験とその解釈に基づいて、ある特定のアプローチを選択するが、研究による明確な証拠は不足している。そのため、個々のセラピストによって使用するテクニックが異なることがある(例えば、あるセラピストは筋力トレーニングを行い、別のセラピストは他動運動(外力による関節運動)に重点を置くなど)。歴史的には、「ボバース・アプローチ」など、多くの名前付きリハビリテーション・アプローチが用いられてきた。神経系の機能と回復に関する知識と理論に基づいて開発されたため、これらをまとめて神経生理学的アプローチと呼んでいる。セラピストが患者の最善の回復に役立つアプローチを選択できるようにすることが重要である。

注: フィジオセラピスト/フィジオセラピーは、フィジカルセラピスト/フィジカルセラピー、リハビリテーションセラピスト/リハビリテーションセラピーと呼ばれることもあり、同じ意味である。ここでは身体的リハビリテーションという言葉を使い、身体的リハビリテーションを提供する人をセラピストと表現する。

何を調べたかったか?

以下の点について調査を行った:

- 脳卒中後の日常生活と移動能力の回復に向けた身体的リハビリテーションアプローチは有効か?

- ある身体的リハビリテーションのアプローチは、他のアプローチよりも有効か?

何を行ったか?

関連性のあるランダム化比較対照試験を検索した。脳卒中後の人々が、歩行能力や日常生活動作の改善を目的とした身体的リハビリテーションを受けた研究を集めた。身体的リハビリテーション(特定の科学的論拠に基づいた治療プログラム)に対するさまざまな アプローチ に関心があった。これらのアプローチには、セラピストによる治療、グループ治療、遠隔治療が含まれる。セラピストは、個々の患者のニーズに応じて特定の治療や運動療法を選択することもあれば、患者の回復段階に応じて標準的な運動療法を提供することもある。「単一の」治療法(電気刺激やロボットなど)のみに注目した研究や、腕の機能 のみ に焦点を当てた研究は除外した。

何がわかったか?

合計21,838人の脳卒中患者を対象とした267件の研究が見つかった。研究は36か国で行われたが、半数(133件の研究)は中国で行われたものであった。

105件の研究で、身体的リハビリテーションが、身体的リハビリテーションを行なわない場合よりも効果的かどうかを調べていた。これらの研究のほとんどは、身体的リハビリテーションが通常の治療に含まれていない中国の病院の入院患者に対して実施されていたが、いくつかの研究では、患者が通常の治療として身体的リハビリテーションを受けて退院した後の外来患者を対象に実施されていた。これらの研究からは、身体的リハビリテーションを行なわない場合と比較して、身体的リハビリテーションにより日常生活動作、足の動き、バランス保持、歩行などの能力が向上する可能性があることが示された。

56件の研究では、特別な、あるいは追加の身体的リハビリテーションの効果が検討された。これらの研究では、全員が通常の身体的リハビリテーションを受けたが、脳卒中患者の1グループは、特定の身体的リハビリテーションアプローチに基づく追加治療を受けた。これらの研究からは、追加の身体的リハビリテーションにより日常生活動作、足の動き、バランス保持、歩行などの能力が向上する可能性があり、追加のリハビリテーションの量が多ければ多いほど能力が向上する可能性があることが示された。

92件の研究がさまざまな身体的リハビリテーションのアプローチを比較した。身体的リハビリテーションの種類や量、対象者のタイプ(脳卒中発症からの期間が異なるなど)には多くの違いがあった。これらの研究からは、課題指向型練習に重点をおいた身体的リハビリテーションにより、日常生活動作や足を動かす能力が改善する可能性があることが示された(バランスや歩行は改善しない可能性がある)。身体的リハビリテーションにおける神経生理学的アプローチは、日常生活動作の改善において他のアプローチよりも効果が低い可能性がある(他のアウトカムについては変わらない可能性がある)。

すべての比較において、身体的リハビリテーションに関連する有害事象が起こる可能性に関する情報は非常に限られていた。

身体的リハビリテーションを終了した後、長期間の追跡を行った研究はほとんどなかった。

エビデンスの限界は何か?

このレビューに含まれた研究では、対象者、介入、評価項目、比較対照の間に大きなばらつきがあった。地理的または文化的な違いもあり、それが結果に影響している可能性もあった。総合的に、これらの研究の詳細についての報告は非常に不十分であった。これらの問題は、統計学的な分析結果の信頼性に限界があることを意味する。

このエビデンスの更新状況

2022年11月時点におけるエビデンスである。2022年11月以降に発表された研究によって、この結論が変わる可能性は低いだろう。

訳注

《実施組織》菊井将太,小林絵里子 翻訳[2025.06.12]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD001920.pub4》

Citation
Todhunter-Brown A, Sellers CE, Baer GD, Choo PL, Cowie J, Cheyne JD, Langhorne P, Brown J, Morris J, Campbell P. Physical rehabilitation approaches for the recovery of function and mobility following stroke. Cochrane Database of Systematic Reviews 2025, Issue 2. Art. No.: CD001920. DOI: 10.1002/14651858.CD001920.pub4.

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