肥満と新型コロナウイルス感染症の有害な結果

肥満が新型コロナウイルス感染症の結果に与える影響は何か?

要点

・BMIが40kg/m 2 を超える極度の(病的)肥満の場合、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡率や、人工呼吸器の装着、入院、およびICUにおける治療の必要性を高めるという知見を支持する十分なエビデンスが存在する 

・肥満患者の場合、多くは人工呼吸器が必要となる

・BMIが高いほど、COVID-19の重症化率が高くなる  

肥満とは何か?

肥満とは、人体のさまざまな部位に異常または過剰に脂肪が蓄積した状態であり、健康上のリスクをもたらす。肥満の評価には、体重(kg)を身長(m)の2乗で割った体格指数(BMI)などの指標が用いられている。WHOは、肥満を3つのクラスに分類している。この分類によると、クラスⅠの肥満は、BMI(kg/m 2 )が30以上35未満、クラスⅡは35以上40未満、クラスⅢは40以上である。

何を調べようとしたのか?

肥満が、死亡率、人工呼吸器の必要性、入院の必要性、ICUでの治療の必要性、症状の重症化、およびCOVID-19に関連した肺炎に影響を与えるかどうかについて調査を行った。  

何を行ったのか?

2019年12月から2021年4月にかけて、肥満と死亡率およびその他の結果との関連を調査したエビデンスについて、医学データベースでの系統的検索を実施した。そして、これらの知見をエビデンスに対する信頼性、研究規模、および研究の質に基づいて分類、評価を行った。

何が見つかったのか?

レビューに含めるために適格と判断された171件の研究を特定し、その内149件の研究(合計12,045,976人の参加者)から、少なくとも1つのメタアナリシスに対する定量的なデータが得られた。結果については、111件の研究では死亡率について、48件は人工呼吸器の必要性について、47件はICUでの治療の必要性について、34件は入院の必要性について、32件は重症のCOVID-19について、6件は肺炎について、5件は入院期間について、2件はICUでの治療期間について、そして1件は人工呼吸器の必要期間について報告が行われていた。 

主な結果

本知見からは、クラスⅢの肥満は、COVID-19患者の死亡リスク上昇と関連するというエビデンスの確実性が高いことが示された。しかし、軽度の肥満(クラスⅠおよびⅡ)の場合は、死亡率の上昇と独立した関連性がない可能性があることがわかった。同様に、肥満がCOVID-19患者における人工呼吸器の必要性についての独立した重要な因子である確実性は高い。しかし、効果推定値の大きさは、ICUでの治療、入院の必要性、重症のCOVID-19、肺炎への罹患について、肥満の程度(クラス)の上昇に対する用量反応関係とは一致しなかった。以上より、本レビューにおいて、肥満とCOVID-19の有害な結果との潜在的な関連性を調査した結果、複数の研究からエビデンスが得られ、肥満と死亡率および人工呼吸器の必要性についての関連性については高い確実性を持つと結論づけられた。

エビデンスの限界は何か?

BMIは広く使われている測定法であるが、BMIと体脂肪の関係は非線型(比例しない)であり、さらに、本レビューでは、BMIについて自己申告によるものと実測によるものを区別していなかった。加えて、最善を尽くしたものの、COVID-19に関する急速な研究発表のペースに追いつくことができなかった。 

本エビデンスはいつのものか?
2021年4月時点におけるエビデンスである。

訳注: 

《実施組織》小泉悠、阪野正大 翻訳[2024.02.10]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD015201》

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