川崎病の治療に副腎皮質ステロイドを使用すること

要点

副腎皮質ステロイド(薬)(以下、ステロイド)は、重要な副作用を引き起こすことなく、川崎病後の心臓疾患のリスクを軽減すると思われる。また、症状(発熱や発疹)の長さ、入院期間、体調不良に伴う血液検査結果の異常を減らすことができる。

川崎病とはどのような病気で、どのように治療するのか?

川崎病は、血管に炎症が起こる病気である。川崎病の治療薬としては、静脈内投与の免疫グロブリン製剤(IVIG)やアスピリンなどが標準的である。この治療法は通常効果的であるが、すべての子どもに効果があるわけではない。現在、川崎病に関する病態は不明な部分があり、どのように対処するのが最善であるかは分かっていない。川崎病は、長期的には心臓に影響を及ぼし、命を縮める危険性があるため、この病気に対する治療は重要である。

本レビューで行ったことは何か?

川崎病の子どもたちにステロイド(薬)を投与し、将来の心臓病の可能性を減らすかどうかを調べたランダム化比較試験を探した。また、発熱期間、血液中の感染徴候、入院日数への影響も調査した。ランダム化比較試験では、人々が受ける治療や検査が無作為に決定されるため、通常、治療効果について最も信頼できるエビデンスが得られる。

レビューの結果

川崎病の小児患者を対象に、ステロイド(薬)の使用と非使用を比較した、1,877人が参加した8件の研究を見つけた。これらの研究結果を組み合わせると、ステロイド(薬)による治療後に心臓の問題が減少することがわかった。ステロイド(薬)投与群および非投与群では、重篤な副作用や死亡例は報告されていない。ステロイド(薬)で治療した場合、病気を示す血液検査結果の異常が減少し、子どもたちの入院期間も短くなった。川崎病の症状(発熱、発疹)は、ステロイド(薬)投与後、持続時間がより短かった。川崎病に合併する可能性のある長期的(発症後1年以上)な心臓疾患(冠動脈疾患)については、いずれの研究でも報告されていない。

エビデンスの確実性

重篤な副作用や死亡、将来の心臓疾患のリスク、血液検査結果の異常への影響、入院期間については、エビデンスの確実性は中等度であった。つまり、真の効果はこのレビューで推定されたものに近いと、中等度に確信している。臨床症状(発熱、発疹)の持続期間については、エビデンスの確実性が低いと判断された。これは、これらの症状の測定方法と報告方法によるもので、効果推定に対する信頼度は低いということである。

このレビューの更新状況

本レビューは、前回のレビューを更新したものである。エビデンスは2021年2月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、小林絵里子 翻訳[2022.07.11]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD011188.pub3》

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