インフルエンザやインフルエンザ様疾患の予防および治療を目的としたホメオパシーのオシロコシナム®

レビューの論点 ホメオパシーのオシロコシナム®は、成人または小児のインフルエンザおよびインフルエンザ様疾患の予防、治療においてプラセボよりも有効性が高いかどうかを確認すること。

背景インフルエンザ(flu)は、感染性が非常に強い呼吸器疾患である。(肺炎などの)合併症の治療は別として、インフルエンザの予防または治療に対する従来の医療戦略は完全には有効でないか、または満足のいくものではない。オシロコシナム®は、高度に希釈したホメオパシー製剤で、インフルエンザ・ウイルスの貯蔵所となりうる野鴨の心臓や肝臓から製造される。オシロコシナム®は、冬期に定期的に服用してインフルエンザを予防する人や、またはインフルエンザ症状の治療として服用する人もいる。

研究の特性 6件の研究を選択した。2件の予防に関する試験(ロシアにおける合計327例の青年〜中年)と4件の治療に関する試験(フランスとドイツにおける合計1196例のティーンエイジャーおよび成人)であった。

主な結果 2件の予防に関する試験の結果から、オシロコシナム®ではインフルエンザ発症予防効果は示されなかった。その他の4件の臨床試験の結果では、48時間後の時点でオシロコシナム®はインフルエンザ症状を緩和したことが示唆されたが、試験方法のバイアスによるものである可能性がある。オシロコシナム®を服用後に頭痛を報告したのは、1例の患者であった。本エビデンスは2014年9月現在のものである。

エビデンスの質研究報告の総体的な標準は低いので、試験方法の多くの側面および結果のバイアスのリスクが不確定であった。したがって総体的にエビデンスの質は低く、オシロコシナム®のインフルエンザおよびインフルエンザ様疾患の予防における結論をはっきりと出すことができないと判断した。

著者の結論: 

インフルエンザおよびインフルエンザ様疾患の予防または治療において、オシロコシナム®に関する確固とした結論を裏付ける有効なエビデンスは不十分であった。我々の見解では、オシロコシナム®に臨床的に有効な治療効果があるという可能性を除外しない。ただし、適格とした研究の質が低いとあっては、エビデンスに説得力がない。オシロコシナム®が原因で臨床的に重要な有害性が生じるエビデンスはなかった。

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背景: 

インフルエンザは、特に冬期に一般的な感染率の高いウイルス性疾患である。Oscillococcinum®(オシロコシナム)は、特許を受けているホメオパシー治療薬である。野鴨の心臓と肝臓からの抽出物1%溶液で作られ、次に水とアルコールで連続的に200倍に希釈される。

目的: 

ホメオパシーのオシロコシナム®は、成人または小児のインフルエンザおよびインフルエンザ様疾患の予防、治療においてプラセボよりも有効性が高いかどうかを確認すること。

検索戦略: 

CENTRAL(2014年第8号)、MEDLINE(1966~2014年8月第4週)、MEDLINE In-Process & Other Non-Indexed Citations(2014年9月4日)、AMED(2006~2014年9月)、Web of Science(1985~2014年9月)、LILACS(1985~2014年9月)およびEMBASE(1980~2014年9月)を検索した。ほかの試験の情報を求めて、オシロコシナム®製造業者に連絡を取った。

選択基準: 

成人または小児のインフルエンザおよびインフルエンザ様疾患の予防、治療におけるオシロコシナム®のランダム化プラセボ比較試験。

データ収集と分析: 

3名のレビュー著者は独立してデータを抽出し、適格な試験におけるバイアスのリスクを評価した。

主な結果: 

2014年の更新では新たな試験は見つからなかった。6件の研究を選択した。2件の予防に関する試験(ロシアにおける327例の青年〜中年)と4件の治療に関する試験(フランスとドイツにおける1196例のティーンエイジャーおよび成人)であった。試験報告の全体的水準は低かったため、試験の多くの重要な方法論的側面には不明なバイアスのリスクがあった。インフルエンザ様疾患の予防においてオシロコシナム®およびプラセボの効果に統計的有意差はなかった:リスク比 (RR) 0.48、 95% 信頼区間(CI) 0.17~ 1.34、 P = 0.16。2件の治療に関する試験(「低品質」と判定)では、全データ抽出が可能となる十分な情報の報告があった。治療開始48時間後に、プラセボの場合と比較してオシロコシナム®投与による症状緩和の頻度には7.7%の絶対リスク減少が認められた(リスク差(RD)0.077、95%CI 0.03~0.12)。RRは1.86であった(95%CI 1.27~2.73、P = 0.001))。3日目には、有意ではあるが効果は低下し(RR 1.27、95% CI 1.03~1.56、P値 = 0.03)4日目(RR 1.11、95% CI 0.98~1.27、P値 = 0.10)または5日目(RR 1.06、95% CI 0.96~1.16、P値 = 0.25)には両群間で有意差は認められなかった。6件の研究のうち1件に、1例の患者がオシロコシナム®投与による有害作用(頭痛)が認められたことが報告された。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2015.12.26]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。

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