てんかんに対するケトン食療法および他の食事療法

背景

てんかんは、脳からの異常な放電 により再発性のてんかん発作(発作:fits)が引き起こされる疾患である。発作の大部分は1種類以上の抗てんかん薬の服用により制御することができるが、しばらく経つとそれらの薬が効かなくなることがある(薬剤耐性てんかん)。薬物耐性てんかんの人に対し、特別な食事療法(ケトン食)が検討されることがある。ケトン食は、脂肪が多く炭水化物が少ない食事である。

本レビューの目的は、てんかん発作制御、認知力(例:学習力、集中力、小児の学業成績、成人における学習力・集中力・記憶力等)および行動に対するケトン食療法の効果を調査することである。また、食事療法による有害作用や、研究から脱落した参加者数およびその理由を調査した。

検索日

エビデンスは2015年3月現在のものである。

試験の特性

医療データベースで、てんかんの成人または小児においてケトン食と他の治療法とを比較したランダム化比較試験(複数の治療群の1つに、参加者をランダムに振り分ける臨床試験)を検索した。参加者427名を対象とする7件のランダム化比較試験(RCT)が確認された。それらの試験期間は3~6か月だった。

主な結果

ケトン食療法における短期の有害作用には、下痢、便秘および嘔吐などがあった。長期的には、心臓の健康に影響を及ぼす可能性がある。

すべての研究において参加者の脱落例が報告され、その理由は発作の改善がみられないことや、食事療法に耐えられなかったためであった。

ケトン食療法による認知力および行動への影響についての研究報告はなかった。

近年では、修正アトキンス食といった他の食事療法よりも味が好ましいケトン食に、制限がさらに厳しいケトン食と同じような発作抑制効果があることが判っている。しかし、さらなる研究が必要である。

エビデンスの質

本レビューに含まれた研究は、参加者数が少なく小児に限られていたためエビデンスの質は低かった。

現時点では、これらのケトン食療法を成人に対し使用した研究はほとんどないため、この分野でのさらなる研究が必要である

著者の結論: 

本レビューで検討されたRCTは、てんかんにおけるKD療法の使用について有望な結果を示している。しかし、研究数が限られ、サンプル・サイズが小さく、小児集団に限定されているため、総合的なエビデンスの質は低い。

すべての研究において、どのバリエーションのKDに対しても、短期的な胃腸障害や長期的な心血管合併症といった有害作用が認められた。すべてのKD療法および研究において、調査対象の減少率が依然として問題であり、減少理由は観察される効果が不十分だったことや、食事への耐性がなかったためであった。

成人てんかんに対するKDの臨床使用を裏付けるエビデンスは不足しており、さらなる研究が有用であろう。

この他にMADケトン食などの味の良い、関連する食事療法は、古典的KDと同様の発作抑制効果を有し得るが、この仮定にはさらなる調査が必要である。医学上難治性のてんかん、あるいは外科的介入に適さない人において、KDは依然として有効な選択肢ではあるが、さらなる研究が必要とされる。

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背景: 

ケトン食(KD)は脂肪が多く炭水化物が少ない食事で、てんかん発作の発生頻度を低下させることが示唆されている。現在、主に、抗てんかん薬の治療を受けても発作が続く小児を対象として用いられている。近年、修正アトキンス食(MAD)などの、制限がさらに少ないKDに関心がもたれ、それらの食事療法の使用は成人治療まで拡大している。

目的: 

KDおよび類似する食事療法の効果に関するランダム化比較試験(RCT)から、その有効性および忍容性のエビデンスを検討すること。

検索方法: 

Cochrane Epilepsy Group's Specialized Register(2015年3月30日)、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL) via the Cochrane Register of Studies Online(CRSO、2015年3月30日)、MEDLINE (Ovid、2015年3月30日) 、ClinicalTrials.gov(2015年3月30日)、WHO International Clinical Trials Registry Platform (ICTRP、2015年3月30日)を検索した。言語の制限は設けなかった。関連研究の追加報告として検索された研究の引用文献一覧を調査した。

選択基準: 

てんかん患者におけるKDおよび類似する食事療法の研究。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれ事前に定義された判定基準を適用し、個別にデータ抽出し研究の質を評価した。

主な結果: 

8つの出版物で記述された7件のRCTを同定した。

全試験においてさまざまなランダム化法を用いたITT解析が適用されていた。7件の研究で小児および青年427名が募集され、成人は含まれなかった。試験の異質性によりメタアナリシスは実施できなかった。

3か月後に報告された4対1のKD群におけるてんかん発作消失率は55%、発作減少率は85%に達した。

1試験において、KD療法の空腹時開始群と緩徐開始群の間に発作消失率の有意差は認められず、発作減少率は緩徐開始群の方が優れていた。

MADの有効性を評価する研究で、発作消失率は最大10%、発作減少率は最大60%だった。1件の研究でMADと4対1のKDが比較されていたが、発作消失率および発作減少率は報告されていなかった。

有害作用は、異なる食事療法の間で極めて一貫していた。最も高頻度に報告された有害作用は胃腸症候群であった。参加者が試験から脱落する理由は、有害作用によるもの多く見られた。その他の脱落理由は、効果不十分や食事拒絶によるものだった。

低ケトン比食よりも4対1のKDの方が優れた抗てんかん効果を示すエビデンスが複数みられたが、4対1のKDは一貫してさらに多数の有害作用と関連していた。

QOL(Quality of Life)、認知力または行動能力へ及ぼす食事の影響を評価した研究は見られなかった。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.17]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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