出生が早すぎた赤ちゃんの脳出血を予防するフェノバルビタールの利益とリスクは?

要点

・早産で生まれた赤ちゃんにフェノバルビタール(けいれん発作を抑える薬)を投与することは、脳室内出血(脳出血)や死亡を防ぐ効果はほとんど、あるいはまったくないかもしれない。

・フェノバルビタールによる脳室拡大(脳内の空間の拡大)予防や長期的な神経発達についてのエビデンスは非常に不確かである。

脳出血(脳室内出血)とは何か?

早産で生まれた赤ちゃんの脳の中心に大きな出血があると、障害がおこったり、死亡したりする。不安定な血圧と脳血流が、脳室(脳内の液体で満たされた空間)への出血を引き起こすと考えられている。

何を知りたかったのか?

フェノバルビタールは血圧を安定させ、脳出血を防ぐ可能性があると考えられている。フェノバルビタールが、無治療の場合やプラセボ(薬を含まないが、見た目や味は試験に使う薬と同じ「ダミー」の治療法)よりも優れているかどうか調べた。

実施したこと

フェノバルビタール投与と無治療を比較した研究を検索した。研究結果を比較して要約し、研究方法や試験の規模などの要素に基づいて、エビデンスに対する信頼度を評価した。

わかったこと

10件の研究(792人の赤ちゃんを含む)を対象とした。

エビデンスは、フェノバルビタールに脳出血を予防する効果はほとんど、あるいはまったくないことを示している。脳室拡張や長期的な神経発達に関するフェノバルビタールの効果についてのエビデンスは非常に不確かである。エビデンスは、フェノバルビタールが死亡を予防する効果はほとんど、あるいはまったくないことを示している。進行中の試験は同定できなかった。

エビデンスの限界

研究を実施していた人が、何の治療を行っているかについて知っていた可能性があった。すべての研究において、目的とするすべての情報が得られたわけではなかった。試験の規模は非常に小さかった。

レビューの更新状況

このレビューは前回のレビューを更新したものである。このエビデンスは2022年1月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》内藤未帆、杉山伸子 翻訳[2023.07.18]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD001691.pub4》

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