要点:
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BCAAは、他の治療法や無治療と比較して、肝性脳症患者の死亡者数にほとんど、あるいは全く影響を与えないかもしれないが、この結果については非常に不確実である。
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BCAAは、肝性脳症を発症する患者数を減少させるかもしれない。
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抗菌薬など、臨床現場で使用されている他の薬剤と組み合わせてBCAAを参加者に投与する、質の高い研究がさらに必要である。
肝硬変と肝性脳症とは?
肝硬変とは、健康な肝組織が徐々に瘢痕組織に置き換わっていく状態のことである。 この損傷により、肝臓が正常に機能する能力が低下し、脳機能に影響を及ぼす肝性脳症の主な原因となる。
症状は軽度から重度までさまざまである。軽度の症状には、注意力、記憶力、問題解決能力の低下など、ほとんど気づかないほどのわずかな思考の変化が含まれる。病状がより重篤な段階になると、症状は明らかに目立つようになる。これには、明らかな混乱や見当識障害、行動や性格の変化、覚醒度の低下などが含まれる。非常に重症な場合、意識を失ったり、昏睡状態に陥ったりすることがある。
肝性脳症はどのように治療されるのか?
肝性脳症の治療の多くは、血液中の毒素、特にアンモニアを低減させ、基礎となる肝疾患を管理することを目的としている。医師は、腸内で生成される毒素の量を減らしたり、毒素が血流に吸収されるのを防いだりする薬をしばしば使用する。
分岐鎖アミノ酸(BCAA)も治療の一環として使用されることがあるが、その作用機序は異なる。肝硬変の患者では、BCAAの血中濃度が低いことがしばしばある。BCAAサプリメントを摂取することで、この不均衡を是正し、筋肉が血液からアンモニアを除去するのをサポートすることができ、脳機能の改善につながる可能性がある。
BCAAは特定の化学構造を持つアミノ酸であり、筋肉量の維持や正常な脳のシグナル伝達を支える上で重要な役割を果たしている。こうした役割から、BCAAの補充は肝性脳症の患者に役立つかもしれない。
知りたかったこと
BCAAが肝性脳症や肝硬変の患者にとって、有効かつ安全な治療法であるかどうかを調査したいと考えた。また、BCAAが以下のアウトカムに何らかの影響を与えるかについても関心を持った:死亡、肝性脳症の発症または進行、重篤な望ましくない事象または有益でない事象(「有害事象」とも呼ばれる)、生活の質、および栄養状態の指標。
実施したこと
肝性脳症および肝硬変の患者を対象に、BCAAを他の治療法(プラセボ(無効な、いわゆる「偽薬」)、無介入、食事療法、ラクツロース(便秘の治療によく用いられる液体の糖)、またはネオマイシン(抗生物質)など)と比較した研究を検索した。
研究結果を比較、要約し、研究方法や研究規模などの要因に基づいてエビデンス(科学的根拠)の信頼性を評価した。
わかったこと
934例の成人を対象とした18件の研究が同定された。 参加者は肝硬変を患っており、その多くはアルコール性肝疾患またはウイルス性肝炎(ウイルスによる肝臓の感染症)が原因であった。参加者の平均年齢は47歳から64歳であった。研究における男性の割合は47%から90%の範囲であった。各研究の追跡期間は4日から2年の範囲であった。10件の試験はヨーロッパで、4件はアジアで、2件は米国で、そしてブラジルとオーストラリアでそれぞれ1件ずつ実施された。小児を対象とした研究は見つからなかった。
主な結果
我々の解析により、BCAAは以下のことが示された:
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死亡者数にはほとんど、あるいは全く影響を与えないかもしれないが、そのエビデンスは非常に不確実である;
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肝性脳症を発症する人数や病状が悪化する人数を減らすかもしれないが、そのエビデンスは非常に不確実である;
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悪心や下痢のリスクを高めるかもしれないが、そのエビデンスは非常に不確実である。
BCAAが栄養状態の指標に及ぼす影響に関するエビデンスは、非常に不確実である。生活の質に関するエビデンスについては、各研究におけるこのアウトカムの評価方法が異なっていたこと、および一部の研究に肝性脳症のない参加者が含まれていたことから、解析を行うことができなかった。
エビデンスの限界は何か?
多くの研究において、研究の設計や実施状況が適切に評価できるだけの十分な情報が提供されていなかったため、このエビデンスの信頼性には確信が持てない。また、選択的報告の可能性についても懸念があった。選択的報告とは、研究結果の一部のみが報告されることであり、これにより治療の真の効果について誤解を招くような印象を与える可能性がある。さらに、ほとんどの研究は小規模であった。
現時点でのエビデンス
本レビューは、2017年に実施した前回のレビューを更新したものである。 本エビデンスは2024年12月12日時点のものである。
全抄録を読む
肝性脳症は、肝不全や門脈大循環短絡による神経学的、精神医学的な変化を伴う脳機能障害である。重症度は軽微な症状から昏睡まで多岐にわたる。コクランシステマティックレビューでは、分岐鎖アミノ酸(BCAA)とコントロール介入を比較した11件のランダム化臨床試験を選択し、BCAAが肝性脳症の人に利益をもたらすのかについて評価した。
目的
肝性脳症の人に対するBCAAの有効性と有害性について、コントロール介入と比較して評価すること。
検索戦略
The Cochrane Hepato-Biliary Group Controlled Trials Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、MEDLINE、EMBASE、およびScience Citation Indexを手作業や電子的に検索して試験を同定した(2017年5月)。
選択基準
バイアスの制御、言語、公表状況を問わず、ランダム化臨床試験を選択した。
データ収集と分析
著者らは発表された報告に基づきそれぞれデータを抽出し、治験責任医師からデータを収集した。本レビューの更新にあたり主要なアウトカム指標を変更し、死亡率(全死因)、肝性脳症(肝性脳症の兆候が改善しない人数)、および有害事象とした。変量効果メタアナリシス、固定効果メタアナリシスを実施した。疎データや多重度を調整後、サブグループ解析、感度解析、回帰分析、および逐次解析を実施し、異質性の原因(介入、参加者、試験の特徴)、バイアス(The Cochrane Hepato-Biliary Group の方法を使用)、小標本による影響、および結果の頑健性を評価した。GRADE法によりエビデンスの質を評価した。
主な結果
顕在的(12件の試験)または軽微(4件の試験)に分類される肝性脳症患者827例を対象とした16件のランダム化臨床試験を見出した。8件の試験では経口投与のBCAA、7件の試験では静脈内投与のBCAAについて評価していた。コントロール群はプラセボ/非介入(2件の試験)、食事(10件の試験)、ラクツロース(2件の試験)、ネオマイシン(2件の試験)であった。15件の試験では、すべての参加者が肝硬変であった。7件の試験はバイアスのリスクが低く、9件の試験はリスクが高いと判断したが、主な理由はブラインド化(盲検化)の欠如や営利目的の資金調達であった。死亡率の変量効果メタアナリシスでは、BCAA群とコントロール群に差はなかった(リスク比(RR)0.88、95% 信頼区間(CI)0.69 ~ 1.11、760例、15件の試験、エビデンスの質は中等度)。小標本の影響に関するエビデンスはなかった。バイアスのリスクが低い試験の感度解析では、死亡率に対するBCAAの有益な効果も有害作用も認められなかった。逐次解析では必須情報量の不足が示されたことから、エビデンスを追加する必要が明らかになった。BCAAは肝性脳症に対して有益な効果をもたらした(RR 0.73、95% CI 0.61 ~0.88、827例、16件の試験、エビデンスの質は高い)。バイアスのリスクが低い試験のみで行った感度解析では小標本による影響はみられず、BCAAの有益な効果を確認した(RR 0.71、95% CI 0.52 ~ 0.96)。逐次解析では確固たるエビデンスであることが示された。固定効果メタアナリシスでは、BCAAが悪心や嘔吐のリスクを増加させることがわかった(RR 5.56、2.93 ~10.55、エビデンスの質は中等度)。変量効果メタアナリシスでは、悪心や嘔吐だけでなく生活の質や栄養パラメーターについても、BCAAの有益な効果や有害作用はみられなかった。サブグループ解析、感度解析、メタ回帰分析では介入効果の予測因子を同定しなかった。コントロールにラクツロースやネオマイシンを用いた試験を除外した感度解析では、BCAAは肝性脳症に対して有益な効果を示した(RR 0.76、95% CI 0.63 ~0.92)。別の感度解析では、BCAAとラクツロースまたはネオマイシンに差はみられなかった(RR 0.66、95% CI 0.34 ~ 1.30)。
著者の結論
今回の更新では、その後発表された5件の試験を追加した。解析により、肝性脳症に対するBCAAの有益な効果が示された。死亡率、生活の質、栄養パラメーターに対する効果はみられなかったが、これらのアウトカムを評価するにはさらなる試験が必要である。同様に、非吸収性二糖類、リファキシミン、他の抗菌薬などの介入と比較してBCAAの効果を判定するには、さらなるランダム化臨床試験が必要である。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.mhlw.go.jp/)[2026.07.14]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD001939.pub5》
このコクランレビューは、元々は英語で作成されました。翻訳の正確性は、当該翻訳を担当した翻訳チームが責任を負います。質の高い翻訳を保証するため、この翻訳は細心の注意を払って作成され、標準的なプロセスに従って行われています。ただし、不一致、不明確または不適切な翻訳の場合、英語の原文が優先されます。




