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子宮筋腫(子宮にできる良性の腫瘍)を摘出する手術の前に投与される薬の利点とリスクは?

主な結果

- ゴナドトロピン放出ホルモン類似物質(GnRHa)は、子宮筋腫を治す手術の前に、子宮そのものや子宮筋腫を小さくし、ヘモグロビン(赤血球中にある酸素を運ぶためのタンパク質)の濃度を高めることができるかもしれない薬である。GnRHaを手術の前に投与すると、手術にかかる時間、輸血の必要性、手術中あるいは手術後に起こりうる合併症の軽減も期待できる。

- 手術の前にGnRHaを投与される女性は、ホットフラッシュなどの好ましくない副作用がおこる可能性が高くなる。

- 今後も、さらなる研究が必要だ。

子宮筋腫とは?

子宮筋腫は、女性の子宮にできる平滑筋腫瘍(がんではない良性の腫瘍)で、それがあると妊娠しにくくなることがある。お腹が痛くなったり、生理のときに大量に出血したりする。子宮筋腫があると、流産で赤ちゃんを失う可能性が高くなる。

子宮筋腫の治療方法

子宮筋腫は手術によって治療されることが多い。いくつかの薬、特にゴナドトロピン放出ホルモン類似物質(GnRHa)は、子宮や筋腫を小さくして手術を容易にするかもしれない。しかし、骨量が減ってしまう可能性があるため、6ヵ月以上使用することはできない。同じような短期的効果をもたらす可能性のある他の薬物には、黄体ホルモン、ドパミンアゴニスト、選択的プロゲステロン受容体修飾薬(SPRMS)、エストロゲン受容体アンタゴニスト、選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERMS)などがある。しかし、これらの薬は高価な傾向がある。

知りたかったこと

手術の前にこれらの薬を投与するのが、以下の項目について役に立つどうかを調べたかった:

- 大量出血を抑える;

- 子宮や筋腫を小さくして、手術を容易にする;

- 手術にかかる時間、輸血回数、手術中の出血量、手術後の合併症の減少。

また、これらの薬で好ましくない作用を引き起こすものがあるかどうかも調べたかった。

実施したこと

子宮筋腫の手術をする前に投与される薬について、他の薬との比較、あるいはプラセボ(偽の治療)または無治療と比較した研究を探した。研究結果をまとめ、研究方法や規模などの要素に基づいて、エビデンスの信頼性を評価した。

わかったこと

何らかの症状の原因となっている子宮筋腫を摘出する手術を待っている、閉経前の女性3,982人を対象とした41件の研究が見つかった。女性の多くは貧血(赤血球やヘモグロビンの量が少なく、血液の酸素運搬能力に影響する)であった。手術は、子宮摘出術(子宮ごと取り出す)、子宮筋腫核出術(子宮壁から子宮筋腫だけを取り出す)、子宮鏡下子宮筋腫摘出術(子宮腔から子宮筋腫を取り出す)であった。

研究では、3種類の比較試験が行われた:GnRHa対無治療またはプラセボ、GnRHa対他の内科的治療、選択的プロゲステロン受容体修飾薬(SPRM)対プラセボの3種類である。

投与される薬を製造している企業の支援を受けている研究もあった。

主な結果

GnRHaと無治療またはプラセボとの比較

ゴナドトロピン放出ホルモン修飾薬(GnRHa)は、手術前に子宮のや子宮筋腫を小さくする可能性がある。手術する前の出血に対する効果については、有益な情報はなかった。GnRHaは、おそらくヘモグロビン濃度を高くする。しかし、GnRHaを投与された女性は、ホットフラッシュを経験しやすい。

子宮摘出術

子宮摘出術にかかる時間は、手術の前にGnRHaを投与された女性の方が短いかもしれない。子宮摘出術を調べた研究では、他の評価項目、すなわち手術中の出血量、輸血、手術後の合併症に対する効果は非常に不確かである。

子宮筋腫核出術

子宮筋腫核出術を調べた研究の次の結果は、非常に不確かである:手術時間、手術中の出血量、輸血、手術後の合併症。

子宮鏡下子宮筋腫摘出術

子宮鏡下切除術の前にGnRHaを投与しても、手術にかかる時間はほとんど変わらないかもしれない。手術後の合併症を調べた研究が1件あったが、報告はなかった。子宮鏡下子宮筋腫摘出術では、手術中の出血量と輸血は調べられていなかった。

GnRHaと他の内科的治療との比較

手術前

GnRHaを手術前に投与すると、他の内科的治療と比べて、手術前の子宮を小さくする可能性がある。GnRHaを投与しても、手術中の出血量や子宮筋腫の大きさにほとんど差がないかもしれない。ヘモグロビン濃度にはおそらく影響しない。しかし、GnRHaは、穂っとフラッシュなどの好ましくない作用をもたらすかもしれない。

選択的プロゲステロン受容体修飾薬(SPRM)とプラセボとの比較(訳者注:2025年9月現在、日本ではSPRMは子宮筋腫の治療薬として承認されていない)

手術前

SPRM(ミフェプリストン、CDB-2914、酢酸ウリプリスタル、アソプリスニルなど)を手術前に投与すると、プラセボに比べて、子宮が小さくなり、ヘモグロビン濃度が高くなる。子宮筋腫が小さくなり、手術中の出血量が減るかもしれない。好ましくない作用に関する結果は、不正確であった。

エビデンスの限界

ほとんどの評価項目に関するエビデンスの信頼性は低いか、非常に低い。これは、研究報告が不十分だったことと、結果を評価する研究者が「盲検化」されていなかったことによる。「盲検化」されていないとは、評価項目を測定した人が、参加者がどの群に割り当てられているかを知っていることを意味し、そのことが結果に影響を与える可能性を否定できない。加えて、結果は研究によってばらつきがあり、1件の研究のみに基づいているものもあった。

本レビューの更新状況

このレビューは2017年に発表されたものを更新したもので、2024年8月までの最新版である。

訳注

《実施組織》杉山伸子、小林絵里子 翻訳 [2025.09.22]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD000547.pub3》

Citation
Puscasiu L, Vollenhoven B, Nagels HE, Melinte I-M, Showell MG, Lethaby A. Preoperative medical therapy before surgery for uterine fibroids. Cochrane Database of Systematic Reviews 2025, Issue 4. Art. No.: CD000547. DOI: 10.1002/14651858.CD000547.pub3.

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