進行した腎がん(腎細胞がん)の成人患者に対する初回治療

略語

• 腎細胞がん(RCC)

• アベルマブ(AVE)

• アキシチニブ(AXI)

• カボザンチニブ(CAB)

• イピリムマブ(IPI)

• レンバチニブ(LEN)

• ニボルマブ(NIV)

• パゾパニブ(PAZ)

• ペムブロリズマブ(PEM)

• スニチニブ(SUN)

要点

• 治療を決定するにあたり、薬剤によって余命が延長するのか、有害な副作用が少ないのか多いのかを考えることが重要である。

• 本レビューの結果は、明細胞成分を含む進行腎細胞がん(RCC)に主に適用される。

進行腎細胞がんとはどのような病気で、どのように治療するのか

腎細胞がんは腎がんの一種である。高齢者に、また女性よりも男性に多くみられる。これは、年齢(60歳以上)と性別が男性であることにより、罹患リスクが高くなるためである。その他の危険因子には、体重、喫煙、腎結石の既往歴、高血圧などがある。多くの場合、初期の段階では症状がないため、腎細胞がんに罹患している人の半数以上が定期健診によってがんであることが判明する。症状が現れると、患者のQOL(生活の質)や日常の活動に影響を与える。2005年以前には、進行腎細胞がんの治療薬は少なく、治療には多くの副作用があった。現在では、免疫療法(がん細胞を見つけて破壊するために、患者自身の免疫系を利用する)や標的療法(がん細胞の増殖、分裂、広がりを助ける分子を妨害する)という新しい種類の薬剤がある。治療には、このような薬剤を組み合わせて使用する。このような薬剤によって、良好なQOLを保ちながら副作用も少ないか軽いものとなり、余命が長くなると思われる。各薬剤は、腎細胞がん患者を対象とした臨床試験で評価されている。

何を知りたかったのか

進行腎細胞がん患者に対するさまざまな治療法の有益性と有害性を評価するために、臨床研究の最新の情報を使用したいと考えた。各薬剤について、他の人よりも効果が高い人がいるかどうかも知りたかった。

本レビューで実施したこと

免疫療法または分子標的療法であるさまざまな薬剤を検討した研究を検索した。初回治療を受ける進行腎細胞がんの成人(18歳以上)を対象に行われた研究を検討した。広く使用されている標的薬であり、研究でよく使用されている対照薬であるスニチニブ(SUN)に照らして、各種薬剤を比較した。レビュー結果の質と確実性の評価には、標準化された手順を使用し、研究方法、参加者数、研究結果の正確さなどの因子に基づいて評価した。

わかったこと

進行腎細胞がん患者で60歳前後の女性4,116人と男性11,061人を対象とした研究36件が見つかった。ほとんどの患者に2か所以上の転移があった。見つかった研究では、22種類の薬剤が用いられ、17種類の組み合わせが評価されていた。また、進行腎細胞がんのさまざまなリスク群についても解析した。本レビューの本文では、さまざまなリスク群、薬剤とその組み合わせについての結果と考察を示し、さらに検討結果についても述べる。主要な評価項目に関して、全リスク群を併せたときの主な結果を下記に示す。ここでは、進行腎細胞がんの治療に関する国際ガイドラインで現在推奨されている薬剤(およびその組み合わせ)を選り抜いて注目する。具体的には、PEM+AXI、AVE+AXI、NIV+CAB、LEN+PEM、NIV+IPI、CAB単剤、PAZ単剤であり、各治療法による生存期間およびQOLへの影響、重篤な副作用を報告する。

生存期間

SUNで治療した場合、生存期間は平均28カ月である。それと比較して、LEN+PEMでは平均43カ月、NIV+IPIではおそらく41カ月、PEM+AXIではおそらく39カ月、PAZ単剤ではおそらく31カ月の生存期間が見込まれる。CAB単剤によって平均34カ月の生存期間が得られるかどうかは不確かである。AVE+AXI および NIV+CAB に関する情報はない。

患者によるQOLの評価

PAZ単剤による治療を受けた患者は、SUNによる治療を受けた患者よりもQOLが高いと報告されていたが、この結果については不確かである。PEM+AXI、AVE+AXI、NIV+CAB、LEN+PEM、NIV+IPI、CAB単剤に関する情報はない。

重篤な副作用のリスク

SUNによる治療を受けた人が重篤な副作用を経験するリスクは平均40%である。それと比較して、平均的なリスクはおそらく、LEN+PEM 61%、NIV+IPI 57%、PEM+AXI 52%、PAZ 40%である。CAB単剤によるリスクが平均37%かどうかは不確かである。AVE+AXI および NIV+CAB に関する情報はない。

エビデンスの限界

上記の新薬(およびその組み合わせ)をSUN単独と比較するだけでなく、相互に比較する研究がもっと必要である。たとえば、男女の比較やRCCの組織型(明細胞型、乳頭型、肉腫型など)の比較など、患者のさまざまな特徴による上記薬剤の有益性と有害性の比較に関する情報が不足している。

本レビューの更新状況

2022年2月に研究の検索を最後に実施して、最新の研究結果をこのレビューに組み入れた。

訳注: 

《実施組織》ギボンズ 京子 翻訳、杉山 伸子 監訳[2023.07.25]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD13798.pub2》

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