末梢動脈疾患に対する下肢手術を受ける患者における術前運動によるコンディショニング介入(プレハビリテーション)

背景

下肢末梢動脈疾患(PAD)は、足に血液を運ぶ血管が硬く狭くなる循環器疾患の一種である。最も重篤な状態(重症四肢虚血(CLI))では、安静時の疼痛、治癒しない傷や潰瘍、壊疽、またはその両方の症状を呈する。PADは世界中で2億人以上に影響を与えており、40歳以上の人々の約3~5%がPADを有しており、70歳以上では18%にまで上昇しているPADの症状を呈する人々のうち、5%から10%の人が5年間でCLIに進行する。症状のないPAD患者のうち、7%が歩行時に脚のけいれんの症状を示し、これらの患者のうち21%は5年以内にCLIに進行する。治療法としては、バルーンを用いたりステント(動脈に留める器具)を血管内に留置したりして動脈を開き、血液を流す方法(血管形成術)、反対側の足や腕から静脈を採取して塞がった動脈の上下の動脈に繋げる方法(バイパス術)、感染症などで生命の危険がある場合には四肢を切除する方法(切断術)などがある。CLIを有する人は、死亡リスクが高く、健康状態が悪化している。

近年、手術技術や麻酔、手術中や手術後のケアが進歩しているにもかかわらず、手術を受けた患者の多くが回復不良に陥っている。手術前のコンディショニング(プレハビリテーション)は、手術前に行われるもので、栄養面や心理面での介入を伴う運動、またはその両方が含まれている。運動は、ウォーキングやランニング、水泳などの有酸素運動(理想は週3~5回)と、重りやゴムバンドを使った筋肉や筋力をつけるトレーニング(理想は週2回)で構成されている。栄養介入には、あらゆるトレーニングの効果を高めるために、毎日タンパク質のサプリメントをトレーニング後や食事と一緒に食べたり飲んだりすることが含まれている。心理的介入には、手術を受けることへの不安を軽減する目的で、呼吸法、瞑想、マインドフルネス、対処方法、認知行動療法などがある。

術前コンディショニングは、腸の手術や高齢患者の手術によく用いられる。それは手術中や手術後の合併症を減らすため、患者の状態を改善する手段である。PAD患者は、歩行や日常生活動作が困難で、その結果、非常に不調であることが多い。そのため、手術前のコンディショニングから手術中や手術後の回復力を向上させる可能性がある。しかし、手術前のコンディショニングは病院と患者の双方に大きな確約を必要とするため、通常の診療(血液検査や尿検査を含む術前評価、手術に関する情報提供)と比較して、死亡者数や術後合併症、あるいはその両方を減らすために、手術前のコンディショニングがどのように比較されるのかを知ることが重要である。

研究特性および主な結果

プレハビリテーションが手術後の合併症や死亡の減少と関連しているかどうかを判断するために、文献のレビューを行った(2019年9月25日時点)。9件のランダム化比較試験(RCT)を同定した。

エビデンスの確実性

筆者らは、目的を達成するために実施された研究が見つからなかったため、エビデンスの確実性を評価することができなかった。

結論

死亡者数や術後合併症を減らすためには、通常のケアよりも術前コンディショニングの方が良いのかどうかを判断する根拠は見出せなかった。下肢末梢動脈疾患患者を対象とした手術前コンディショニングの試験は難しいが、このテーマについて確固たるエビデンスを得るためには、無作為化比較試験が必要である。

訳注: 

《実施組織》 迫⽥季也 小林絵里子 翻訳 [2020.10.12] 《注意》この⽇本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6⽉からコクラン・ライブラリーのNew review,Updated reviewとも⽇単位で更新されています。最新版の⽇本語訳 を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが⽣じている場合もありま す。ご利⽤に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013407.pub2》

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