非小細胞肺癌患者に対する肺手術後の運動トレーニング

レビューの論点

非小細胞肺癌の肺手術後の運動トレーニングが、健康レベル、有害事象、生活の質(QOL)、手足の筋力や呼吸筋力、息切れ、倦怠感、不安やうつ、肺機能に及ぼす効果についてのエビデンスを更新した。

背景

非小細胞肺癌の肺手術後、患者の健康レベルやQOLは低下する。慢性肺疾患の患者や前立腺癌および乳癌の患者では、術後のこのような結果(アウトカム)が運動トレーニングによって向上することが知られている。本レビューの2013年版では、非小細胞肺癌の肺手術後、患者の健康レベル(6分間歩行テストで歩いた距離)が運動トレーニングにより向上することを証明した。ただし、対象となる試験数が少なく、運動トレーニングによるQOLや他のアウトカムへの効果は不明確であった。

検索期間

これは2019年2月現在のエビデンスである。

試験の特性

2013年のレビューで検討した試験3件に、今回のレビューで新たに5件を加え、合計8件の試験、450例の参加者(女性180例)を対象とした。各試験の参加者数の範囲は17例から131例であった。参加者の平均年齢は63歳から71歳であった。6件の試験は有酸素運動と筋力運動を組み合わせて行った効果を検討していた。1件は有酸素運動と吸息筋訓練を組み合わせて行った効果を検討していた。別の1件は有酸素運動と筋力運動、吸息筋訓練、バランス訓練をすべて組み合わせて行った効果を検討していた。運動プログラムの期間は4週間から20週間、週に2回から5日であった。

主要な結果

非小細胞肺癌の肺手術後に運動を行った患者は、運動しなかった患者に比べて、健康レベル(サイクリングテストと6分間歩行テストの両方を用いて測定)や脚の筋力が優れていたことが示された。また、運動した患者のほうが、QOLが高く息切れが少ないというエビデンスが初めて示された。1件の試験では、介入に関連した有害事象(股関節骨折)が1件報告されていた。肺手術後の運動トレーニングが、握力や倦怠感、肺機能に及ぼす効果は不明確であった。呼吸筋力または不安やうつの改善についてのエビデンスは不十分であった。

エビデンスの質

全体のアウトカムに対するエビデンスの質(確かさ)は中等度であり、とても低い(息切れ)から高い(6分間歩行テストにて計測された健康レベル)までであった。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)中村奈緒美 翻訳、川上正敬(米国国立がん研究所、肺癌・分子生物学)監訳 [2019.07.30] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD009955》

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