婦人科手術後の癒着防止のためのバリア剤

レビューの論点

このレビューでは、骨盤内手術後の骨盤痛、出生率、臨床妊娠率、癒着形成、癒着スコア(癒着の重症度の指標)に対するバリア剤の効果を評価した。

背景

2つの異なる骨盤内構造(例えば、骨盤壁の腹膜や子宮、卵巣、膀胱、腸などの骨盤臓器)の表面がくっつく癒着の形成は、骨盤内手術後によく見られる問題である。骨盤内の癒着形成を減少させる為に手術中に行う戦略として、骨盤内組織の間に物理的なバリアとなる人工物を置くことがある。

研究の特徴

婦人科手術を受けた女性1316人を対象とした19件のランダム化比較試験(RCT)を含めた。これらの試験では、癒着を防止するための異なる種類のバリア剤を評価し、それらを互いに比較したり、治療を行わない場合と比較したりした。データは2019年8月現在のものである。13件のRCTが企業からの資金提供を報告していた。他の試験では資金提供源は明らかにされていない。

主な結果

骨盤内手術時に使用したバリア剤が、生殖年齢の女性の骨盤痛や出生率に与える影響を報告した試験はなかった。

質の低いエビデンスではあるが、酸化再生セルロースおよびポリエチレングリコールとグリセロールを加えたコラーゲン膜は、骨盤内手術後の癒着形成のリスクを減らすのに、無治療よりも効果的である可能性が示唆された。

ポリエチレングリコールとグリセロールを加えたコラーゲン膜の術後癒着スコアに対する効果を報告した研究が1件あるが、これらのデータの報告方法に問題があり、介入の効果があったかどうかを解釈することができない。酸化再生セルロースによる癒着スコアに対する効果を報告した試験はなかった。

ある試験では、ポリエチレングリコールとグリセロールを加えたコラーゲン膜の臨床妊娠率に対する効果が報告されているが、このエビデンスは非常に質が低かった。この介入によって無治療よりも臨床的な妊娠率が上昇したかは不確かである。臨床妊娠率に対する他の介入の効果を報告した試験はなかった。

2件の試験では、薄くのばしたポリテトラフルオロエチレンと酸化再生セルロースの癒着スコアと癒着形成に対する効果を比較していた。しかし、このエビデンスは非常に質が低く、どちらの介入が他の介入よりも効果的であったかどうかは不明である。これらの介入による骨盤痛、出生率、臨床妊娠率に及ぼす相対的な効果を比較した試験はない。

試験で報告された介入同士の相対的有効性に関する決定的なエビデンスは見つからなかった。癒着防止剤に直接起因する有害事象は報告されていない。

エビデンスの質

エビデンスの質は、中程度から非常に低いものまであった。エビデンスの限界の多くは、不正確性(参加者が少なく、信頼区間が広い)および試験の方法に関する報告が不十分であることに由来した。ほとんどの試験は企業からの資金提供を受けており、出版バイアスが存在する可能性を除外することができなかった。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子、阪野正大 翻訳[2021.01.09]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD000475.pub4》

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