要点
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子宮内膜に傷をつけることが、体外受精により児を得ることに影響するかどうかは明らかでない。現在のエビデンスは、効果がないあるいはわずかに可能性を高めると示している。
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同様に、子宮内膜に傷をつけることが体外受精による妊娠の可能性に影響するかどうかは明らかでない。現在のエビデンスは、体外受精による妊娠の可能性を高める、影響しない、低くするのいずれもありうると示している。
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子宮内膜の損傷は、体外受精後の流産のリスクには影響しない可能性がある。
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損傷が1回か2回かによって、生児の出産、妊娠の成立、または流産に影響するか否かは明らかでない。
体外受精(IVF)とは?
体外受精とは、妊娠が難しいカップルを対象とした不妊治療である。体外受精では、女性から卵子を採取し、培養室で精子と受精させて胚を作る。胚は、着床することを期待して子宮に移植される。着床とは、胚が子宮内膜の中に入りこむことで、これが妊娠成立の第一歩となる。
子宮内膜損傷とは何か?
子宮内膜の損傷は、体外受精(IVF)周期前に実施できる任意の処置である。この処置では、細いプラスチック製のチューブを子宮内に挿入し、子宮内膜に小さな傷(「スクラッチ」と呼ばれる)を作る。この処置を胚移植の前に実施することで、着床の可能性が高まることが示唆されている。
知りたかったこと
体外受精・胚移植を受ける女性が子宮内膜損傷(またはスクラッチ)を受けることが、処置を受けない場合や偽の処置と比較して、安全かつ有効かを明らかにしたかった。
実施したこと
子宮内膜損傷が、処置を行わない場合や偽処置と比較して、生児の出産や妊娠といった体外受精の主要なアウトカムに及ぼす影響を調査した研究を検索した。流産、多胎妊娠、痛み、出血など、望ましくない影響が生じるかどうかを検討した。
また、1か所の損傷と2か所の損傷を比較した研究も対象に含めた。
本研究では、質の高い研究(ランダム化比較試験)のみを対象とした。十分に類似したすべての対象研究の結果を統合し、子宮内膜の損傷が各アウトカムに及ぼす影響を検討した。研究結果をまとめ、研究方法や規模などの要素に基づいて、エビデンスの信頼性を評価した。
わかったこと
24件の研究(女性7,234名)を対象とした。これらの研究はそれぞれ非常に異なっており、対象となった女性の集団や、使用した医療器具、体外受精の周期に対する処置のタイミングなど処置についてもさまざまであった。多くの研究は質が低かったため、結果の信頼性は低い。したがって、主要な分析には質の高い研究のみを用いた。24件の研究のうち、主要な分析に含めたのは8件(女性4,402名)のみであった。
子宮内膜の損傷が体外受精による出産の可能性に影響を与えるかどうかは明らかではない。体外受精で赤ちゃんを授かる確率が通常約27%だとすると、体外受精の前に子宮内膜を傷つけた場合の赤ちゃんを授かる確率は、27%~32%になる。同様に、妊娠についてもエビデンスは明らかでなかった。体外受精で妊娠する確率を約32%とすると、体外受精の前に子宮内膜を傷つけた場合の妊娠の確率は31%~37%になる。子宮内膜の損傷は、体外受精による流産には影響を与えない可能性がある。
子宮内膜を傷つける処置では、軽度から中程度の痛みがあり、腟からの出血が少量認められるが、長くは続かない。
2件の研究(女性40名)が1回の損傷と2回の損傷について影響を比較していた。潜在的なバイアスの懸念、研究規模の小ささ、および特異的な女性にのみ焦点をあてていることから、このエビデンスにはほとんど信頼性がない。したがって、体外受精前の処置が1回である場合と2回である場合を比較して、体外受精による出産の可能性、妊娠成立、流産に影響があるかは不明である。
エビデンスの限界は何か?
対象とした多くの研究において、参加者と研究スタッフは参加者がどちらの群に割り当てられたか知っていた。また、適切に登録されていない研究が含まれており、どんなアウトカムを報告するかについてのバイアスがあった懸念が生じた。不自然な被験者募集率や、それぞれのアウトカムに対する一貫性のない結果報告など、潜在的なバイアスの兆候を示す研究もあった。
このような問題がない研究に限定して主要な分析を行った。研究の質を問わず全ての研究を対象とした分析を行ったところ、子宮内膜の損傷が妊娠と生児の出産の可能性を高める可能性が示唆された。しかし、これらの研究にはバイアスが生じている可能性があるため、この結果に対する信頼性が低い。
エビデンスの更新状況
本レビューは2021年のコクランレビューの更新版である。本エビデンスは2025年12月現在のものである。
《実施組織》内藤未帆、杉山伸子 翻訳[2026.05.25]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD009517.pub5》
このコクランレビューは、元々は英語で作成されました。翻訳の正確性は、当該翻訳を担当した翻訳チームが責任を負います。質の高い翻訳を保証するため、この翻訳は細心の注意を払って作成され、標準的なプロセスに従って行われています。ただし、不一致、不明確または不適切な翻訳の場合、英語の原文が優先されます。