COVID-19に感染して回復した人や動物の濃縮抗体は、COVID-19の人に有効な治療法であるか?

要点

- 高力価免疫グロブリン(COVID-19から回復した人の抗体で作られた製剤)が、中等症から重症のCOVID-19の人の死亡や重篤な望ましくない作用を減らすかどうかは分かっていない。しかし、動物にある種の抗体を注射して作る同様の製剤は、死亡や重篤な副作用を減らし、人々の症状の悪化を食い止めることができるかもしれない。

- COVID-19を発症しているが症状のない人、軽症のCOVID-19の人を調査した研究は見つからなかったので、ヒトや動物の高力価免疫グロブリンがそれらの人々にどれだけ有効であるかはわからない。

また現在進行中の試験も10件あった。その結果が発表され次第、本レビューを更新する予定である。

高力価免疫グロブリンとは?

体内では、感染症に対する防御策の一つとして抗体が作られている。抗体、すなわち「免疫グロブリン」は、血漿中に存在する。そして免疫反応の重要な部分として作用している。

COVID-19から回復した人の血漿にはSARS-CoV-2(COVID-19の原因となるウイルス)に対する抗体が含まれており、これを用いて2種類の製剤を作ることができる。1つは回復期の血漿であり、これは抗体を含む血漿である。もう1つは高力価免疫グロブリンであり、濃縮されているためより多くの抗体を含む。高力価免疫グロブリンの製造工程は複雑で、大量のヒト血漿の蓄積を必要とする。

同様の抗体を動物から作り、ヒトに使用することも可能である。

なぜ高力価免疫グロブリンがCOVID-19の治療法として考えられるのか?

高力価免疫グロブリン製剤は、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2を標的とした抗体を高濃度に含有している。この製品は、ウイルス粒子を不活性化すると考えられている。

知りたかったこと

高力価免疫グロブリンが、COVID-19が疑われる、あるいは確認された人々に対して、どのような環境(例えば、自宅や病院)でも有効で有用な治療法であるかを知りたかった。

以下の点に着目した:

- 治療後30日まで、治療後60日まで、または報告があればそれ以降の期間も含む、あらゆる原因による死亡。

- 症状の改善または悪化

・生活の質(QOL)

• 望ましくない作用

何を行ったのか?

高力価免疫グロブリンと通常のケアを比較した研究、または有効成分を含まないダミー薬(プラセボ)を追加した研究を検索した。

公平に比較するためには、試験に参加した患者さん全員が、高力価免疫グロブリン製剤を投与されるか、もう一方の治療を受けるかをランダムに(コイン投げのように)決めなければならない。年齢、性別、人種を問わず、あらゆる人々を対象とした。

研究結果をそれぞれ比較し、結果をまとめた。標準化された方法を用いて、エビデンスに対する信頼度を評価した。その信頼度は、研究デザインの方法や参加者の人数など、研究の特徴に基づいている。

わかったこと

957人を対象とした5件の研究を特定した。いくつかの研究はパキスタン、インド、フランス、アルゼンチンで行われ、1件の研究はデンマーク、ギリシャ、日本、ナイジェリア、スペイン、英国、米国など複数の国で実施された。これらの研究は、いくつかの新しいSARS-COV-2の変種が出現する前、あるいは出現している間に行われ、ワクチンが広く展開される前に行われた。4件の研究の参加者は全員、 ワクチン未接種であった。1件の研究では、579人のうち12人がワクチンを接種していた。

また現在進行中の試験も10件あった。

主な結果

すべての試験は、ヒトまたは動物由来の高力価免疫グロブリンと通常のケアまたはプラセボを比較した。これらの研究は、中等症から重症の入院患者のみを対象としていた。COVID-19の症状がない人や軽症のCOVID-19を対象とした研究はなかった。どの研究でもQOLは報告されていなかった。

ヒトから調製した高力価免疫グロブリンが、投与後28日までのあらゆる原因による死亡リスクに影響するかどうかは不明である。治療後28日までは、症状の改善や悪化にほとんど、または全く影響を与えないかもしれない。重篤な副作用が起きる可能性に差があるか否かについては不明である。どの事象を重大な副作用に分類するかは個々の研究で決定されるが、通常、重大な副作用とは入院や後遺症を引き起こす可能性のある事象を意味する。

動物由来の高力価免疫グロブリンは、投与後28日までの死亡を減少させ、症状の悪化を抑制し、患者の状態を改善し、重篤な望ましくない事象を減少させる可能性がある。

エビデンスの限界は?

高力価免疫グロブリンがCOVID-19で入院した人に有効な治療法かどうか、また、望ましくない副作用や重篤な副作用の数に影響するかどうかは、研究が小規模で本レビューの関心事項のすべてについてエビデンスが得られていないため、不明である。この研究は、COVID-19ワクチンが広く普及し、オミクロン変異型が出現する前に、主に高所得の国の人々を対象に行われたため、オミクロン変異型の感染者や、発病前にワクチンを接種した人々には適用できない可能性がある。

症状のない人や軽度のCOVID-19については、エビデンスがなかった。

本レビューの更新状況

エビデンスは、2022年3月31日までのものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、堺琴美 翻訳[2023.02.26]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD015167.pub2》

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