がん以外の慢性疼痛を抱える子どもとその家族が、自身の状態、疼痛サービス、治療について経験し理解すること:メタエスノグラフィー

本レビューの目的は何か?

このコクランの質的エビデンス統合の目的は、慢性疼痛を抱える子どもや若者とその家族が以下の項目に関してどのようであるかを知ることである:1)慢性疼痛について考える、2)慢性疼痛とともに生きる、3)医療・福祉サービスが自分の疼痛をどのように扱ったかを考える、4)サービスや治療に何を望むか。これらの疑問に答えるため、これらのトピックに関連するすべての質的研究を探し、分析し、その結果をまとめた。この質的なエビデンスの統合は、慢性疼痛を持つ子どもに対する治療の効果を評価する14件のコクラン・レビューにリンクしている。

この統合からわかったこと

世界中の子どもや若者の約20%から35%が、12週間以上続く痛みを抱えている(私たちはこれを慢性疼痛と呼んでいる)。健康状態や生活の質(QOL)が低下し、学校や社会活動に参加できなくなることもある。慢性的な痛みは、医療サービスや治療の利用を増やすことにつながる。子どもの慢性疼痛がうまく治療されないと、大人になっても続くことがある。多くの国では、子どもの慢性疼痛を管理するサービスはほとんどなく、現在提供されているサービスも不十分である。慢性疼痛管理のための英国および世界の臨床ガイドラインと、小児の慢性疼痛の治療効果に関する最近の14件のコクラン・レビューでは、小児の慢性疼痛管理に役立つ質の高い研究が著しく不足していることが明らかになった。この質的エビデンスの統合では、慢性疼痛を抱える子どもとその家族に、慢性疼痛とともに生きるとはどういうことか、医療ケアの経験や治療から何を得たいかを尋ねた、公表されている調査研究のさまざまな知見をまとめ、医療ケアの改善のために子どもの慢性疼痛についてより深く理解することを試みた。慢性的な痛みを抱える若者やその家族、痛みの慈善団体、医師などの医療専門家、研究の専門家などが、レビューの期間中、私たちとともに意思決定や研究の分析、調査結果の報告などに協力してくれた。

この研究の資金提供者は、イギリスの国立衛生研究所である。

本レビューの主な結果

対象となる研究は170件で、そのうち関連性の高い43件(高所得国39件、中低所得国4件)を対象とした。参加者計633名が関与した研究を対象とした。これらの研究は、主に英国における、がん以外の慢性疼痛を持つ青年とその両親の見解と経験を調査したものである。中等度または重度の慢性疼痛は、子どもや若者の家族全体、家庭生活、社会生活に悪影響を及ぼした。子どもたちやその家族は、痛みの原因を知り、それを解決したいと望んでいるが、医療サービスから援助や効果のある治療を受けることは難しいと感じていた。医療従事者が子どもの痛みを信じなかったり、痛みが子どもにどのような影響を与えるかを聞かなかったりすることもあった。診断と治療法を求めて何度も医療機関を訪れた家族もいた。多くの場合、家族は慢性的な痛みに自分たちだけで対処することになり、家族全体に悪影響を及ぼしかねない。そのうちに、痛みが治る見込みがないことに気づいた子どもや家族は、痛みと上手に付き合うことに専念したり、効果的な治療をあきらめたりするようになった。

本レビューの更新状況

2022年9月までに発表された研究を検索した。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、小林絵里子 翻訳[2024.07.02]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD014873.pub2》

Tools
Information