新生児・小児の院内肺炎に対する抗菌薬の投与

レビューの論点

新生児や小児の院内肺炎の治療において、より安全で効果的な抗菌薬レジメン(薬の種類、投与量、投与期間などの治療計画)はどれか。

背景

院内肺炎とは、入院中(入院後48時間以上経過した時期)に発生した感染症による片肺または両肺の組織の炎症である。世界的に見ても、小児の院内感染で最も多い感染症の一つであり、高い死亡率を伴う。小児の院内肺炎についての理解は、ほとんどが成人を対象とした研究から得られたものである。知る限りにおいて、本研究は、新生児および小児の院内肺炎におけるさまざまな抗菌薬レジメンの有益性と有害性を評価したメタアナリシスを含む初めてのレビューである。

検索期間

エビデンスは2021年2月現在のものである。

研究の特性

院内肺炎を発症した子ども84人を異なる抗菌薬レジメンにランダムに割り付けた4件の試験を対象とした。3件の試験は、米国、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、南アフリカで行われた多施設共同試験である。南アフリカの試験には、マレーシアの1施設が含まれていた。対象となった4件の試験は、それぞれ異なる抗菌薬レジメンを比較したもので、セフェピムとセフタジジム、リネゾリドとバンコマイシン、メロペネムとセフォタキシム、セフトビプロールとセファロスポリンであった。

研究の資金源

3件の試験は製薬会社(ゼネカ製薬, ファーマシア(訳注:スゥエーデンにあった会社だが、現存しない), バシリア製薬)から資金提供を受けており、既得権益リスクに関連したバイアスの可能性を示している。

主な結果

対象となった4件の試験は、それぞれ異なる抗菌薬レジメンを比較したもので、セフェピムとセフタジジム、リネゾリドとバンコマイシン、メロペネムとセフォタキシム、セフトビプロールとセファロスポリンであった。

主要評価項目である「全死因による死亡」と「重篤な有害事象(重大な合併症)」を報告したのは1試験のみであった。3件の試験では、副次的アウトカムとして治療の不成功が報告された。2件の試験では、主に市中肺炎と入院中の細菌感染症の子どもを対象としていたため、院内肺炎の子どもは試験全体の対象者の一部に過ぎなかった。

アウトカムが報告されている場合、それぞれの比較において、エビデンスの確実性は非常に低いものであった。その結果、数値的には意味のある結論を導き出すことができなかった。

対象となった試験では、健康関連のQOL、肺炎関連死、非重篤な有害事象(軽度の合併症)を評価したものはなかった。

結論

入手可能なエビデンスでは、新生児や小児の院内肺炎の治療において、ある抗菌薬のレジメンが他のレジメンよりも安全で効果的であるということは示唆されていない。そのため、さらなる研究が必要である。

エビデンスの確実性

エビデンスの確実性は非常に低度であった。対象となった4件の試験はいずれもバイアスのリスクが高かった(すなわち、結果が歪んでしまうような方法で試験が計画されていた)。また、対象となった試験では参加者が少なく、不正確な結果となっている可能性がある。

訳注: 

《実施組織》 小林絵里子 堺琴美翻訳[2021.11.14]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013864.pub2》

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