透析を必要とする慢性腎臓病患者に対するカルニチン補充療法の効果

レビューの論点

カルニチン欠乏症は、透析を必要とする慢性腎臓病(CKD)患者にみられる重要な問題である。透析に伴うカルニチン欠乏によって、透析中の症状(例:筋肉のけいれん(こむら返り)や筋力低下など筋肉症状や低血圧)および腎不全の慢性合併症(例:貧血)が悪化する可能性がある。しかし、カルニチンを補充すれば、透析に伴うカルニチン欠乏の症状を改善できるかどうかは不明である。

本レビューで実施したこと

透析を要するCKD患者に対するカルニチン補充に関して実施された全ランダム化比較試験について、医学文献を検索した。目的は、カルニチン補充が生活の質(QOL)およびカルニチン欠乏による症状を改善するかどうかを明らかにすることにあった。また、有害事象の観点から、カルニチン補充が安全かどうかも評価した。エビデンスの確実性は、GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluations)を用いて評価した。

わかったこと

透析を受けているCKD患者計3,398人を対象とした研究52件が見つかった。L-カルニチンがQOLおよび透析に伴うカルニチン欠乏による症状に与える影響については、明らかにすることができなかった。一方、L-カルニチンによってこのような患者の貧血が改善する可能性が示唆された。また、この患者集団に対するL-カルニチン補充の有害作用については、エビデンスがきわめて少ない。

結論

QOL、疲労スコア、筋けいれん(こむら返り)、透析中の血圧低下(透析低血圧)に対するカルニチン補充療法の効果は、いまだ不明であることがわかった。透析を必要とするCKD患者では、L-カルニチンによって貧血関連マーカー(ヘモグロビン値およびヘマトクリット値)が改善する可能性がある。この患者集団を対象としたカルニチン補充療法の有効性と安全性を評価するためには、さらに研究が必要である。

訳注: 

《実施組織》小泉悠、ギボンズ京子 翻訳[2023.02.14]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013601.pub2》

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