健康状態の悪化が懸念される地域の高齢者を対象とした高齢者総合機能評価

世界的に寿命が延びる中、医療を必要とする高齢者に最適な環境で適切な医療を提供するためのさまざまな方法を模索することが急務となっている。現在、より多くの高齢者がフレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)を抱えて生活している。フレイルは、早期死亡、老人ホームへの入所、自立度の低下など、健康に悪影響を及ぼす結果を招きやすい特徴を持つ臨床的な症候群である。

医師、看護師、セラピストなど、フレイルを持つ高齢者のケアに精通した医療専門家が組織的かつ協調的に行うケア(高齢者総合機能評価:CGA)が、地域在住でフレイルを持つ高齢者が受ける通常のケアと比べて、(老人ホームではなく)地域で生活を継続する可能性を高めるかどうかを検討した。また、CGAが入院や救急外来を受診する可能性を減らすかどうか、CGAが高齢者の機能レベルやQOL(生活の質)に与える影響も検討した。

CGAは高齢者の自宅や地域の別の場所で行われ、高齢者医療に精通した医療チームによって実施された。CGAに基づくケアを、高齢者が地域で受ける通常の医療ケアと比較する研究を探した。

10か国、4大陸の7,893人のフレイルを持つ高齢者について情報を提供している21件の関連する研究を特定した。通常の医療ではなくCGAを受けた高齢者は、全体として死亡リスクが有意に低いということはなかった。

老人ホームに入所する確率は変わらなかったようであるが、CGAを受けた人は入院するリスクが低いかもしれないという低い質ののエビデンスがある。

CGAは、救急外来を受診する必要性や転倒には影響しないようだが、これらを検討した研究は不十分であり、結論を出すことはできなかった。

2020年4月までに発表された試験を検索した。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、堺琴美 翻訳[2022.05.15]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD012705.pub2》

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