院内感染予防のための重症患者のクロルヘキシジンによる入浴

本レビューの目的

本レビューの目的は、入院中の重症患者が感染症を発症するのを防ぐために、消毒薬のクロルヘキシジンで入浴すべきかどうかを明らかにすることであった。 コクランの研究者は、この質問に答えるためにすべての関連試験を収集、分析し、関連する8件のランダム化比較試験を特定した。ランダム化試験とは、異なる治療を受けるために、患者がランダムに選択される医学研究のことである。 この研究デザインは、治療が望ましいまたは望ましくない健康上のアウトカムと関係があるかどうかに関する最も信頼できるエビデンスを提供する。

要点

このレビューでは、集中治療室(ICU)、または重症ケア病棟の患者の入浴に、クロルヘキシジン (せっけんと水の代わりに) を使用することが院内感染の数を減らすかどうかを評価する。 我々が分析した研究から得られたエビデンスは非常に質が低く、クロルヘキシジンによる入浴が重篤な患者の感染症発症や死亡の可能性を減少させるかどうかは確信が持てなかった。 また、クロルヘキシジンによる入浴が患者の入院期間を短縮するのか、皮膚反応の発生を低下させるのかは不明である。

このレビューからわかったこと

重症の患者(集中治療室やより重症度の高い患者をみる病室に入院している患者)は、入院中に感染症を引き起こすことが多い。 これらの感染症は、入院期間の長期化、さらなる医学的合併症、永久的な障害、さらには死亡につながる可能性がある。 集中治療室の患者は、感染症に対する身体の抵抗力が疾患や外傷によって低下するため、特に脆弱なため感染症にかかりやすい。 外科用のチューブやライン (例えば、摂食または呼吸を補助する) から細菌が体内に侵入することがある。 クロルヘキシジンは病院で防腐剤や消毒剤として使用される低価格製品である。

レビューの主な結果

重症患者の入浴にクロルヘキシジンを使用した研究について2018年の12月に検索した。 2005年から2018年までに、20以上のICUに在室する24,472人を対象とした8件の研究が特定された。7件の研究には成人が含まれ、1件の研究には小児のみが含まれていた。 全ての研究は、男性と女性がともに含まれていた。 すべての研究で、クロルヘキシジンによる入浴と、石鹸と水または非抗菌性の洗浄布による入浴が比較された。 4件の研究は独立した資金提供者(政府機関、病院や大学の学部)から資金提供を受けたか、外部から資金提供を受けなかったと報告し、4件の研究はクロルヘキシジン製品を製造した企業から資金提供を受けた。

8つの研究を統合しても、クロルヘキシジンで入浴した患者がICU滞在中に感染症にかかる可能性が低いかどうかを確認するには十分ではなかった。また、報告された6件の研究からのエビデンスの確実性は非常に低いため、クロルヘキシジンで入浴した患者が死亡する可能性が低いかどうかは不明である。 結果が大きく異なるため、患者がICUにどのくらい長く滞在したかを報告した6つの研究からのエビデンスを統合しなかった。また、エビデンスの確実性が非常に低いため、クロルヘキシジンで入浴した患者がICUに滞在する時間が短いかどうかも不明である。 5件の試験から得られた報告では、クロルヘキシジンが皮膚反応の程度を増減させるかどうかについて異なるエビデンスが示されている。エビデンスの確実性は非常に低いため、クロルヘキシジンで入浴した患者が多かれ少なかれ、皮膚反応を起こすかどうかは不明である。

エビデンスの質

ほとんどの研究では、使用していた入浴剤の種類をスタッフに隠す方法を用いていなかったため、患者がクロルヘキシジン研究群と石鹸水研究群のどちらに属しているかによって、スタッフが患者を異なる方法で治療するリスクが高くなった。 一部の試験の参加者は試験開始前に既に感染症に罹患している可能性があり、このことが試験結果に影響を及ぼしているのではないかとも考えられる。 また、いくつかの結果には大きな違いがあり、いくつかの結果は報告されたイベントがほとんどなかった。 これらは、エビデンスの質が非常に低いと判断する理由であった。

本レビューの更新状況

2018年12月までに公表された研究を検索した。

訳注: 

《実施組織》 増澤祐子 翻訳、井村春樹 監訳 [2020.03.09]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
《CD012248.pub2》

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