心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対するインターネットによる認知行動療法

このレビューの重要性は?

心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、重篤な心的外傷(トラウマ)イベントの後によく起こりうる精神疾患である。症状には、悪夢やフラッシュバック、苦痛な思考として心的外傷(トラウマ)を再体験すること、心的外傷イベントを想起するようなものを避けること、思考や気分の陰性変化を経験すること、イライラ感、驚きやすさ、怒り、睡眠障害、集中困難といった過覚醒症状などが含まれる。PTSDは、心的外傷(トラウマ)に焦点を当てた対話による治療によって、効果的に治療することができる。最も効果的な治療法のいくつかは、認知行動療法(CBT)に基づくものである。しかし残念ながら、これらの治療法を提供できる資格を持つセラピストの数は限られている。また、治療に参加するために仕事を休んだり、交通の問題など、治療へのアクセスを制限する要因もある。

別の治療法として、インターネット上で心理療法を行う方法があり、セラピストによる指導を伴う場合とない場合がある。インターネットによる認知行動療法(I-C /BT)は、多くの注目を集めており、現在は抑うつや不安を治療するために日常的に使用されている。PTSDに対するI-C/BTの研究は少なく、効果があるかどうかはまだ明らかになっていない。

このレビューに関心がある人は?

・PTSDをもつ人々とその親しい人々

・精神保健サービスに携わる専門家

・一般開業医

・行政担当者

このレビューで明らかにしたいことは?

PTSDを持つ成人において、I-C/BTについて以下の点を明らかにする。

•未治療(待機者リスト)よりも有効であるか

•セラピストの提供する心理療法と同じくらい有効であるか

•オンラインで提供される他の心理療法よりも有効であるか

•オンラインで提供される疾患に関する教育よりも、PTSDの症状の軽減と生活の質(QOL)の改善において、有効であるか

•対面による治療と比べて、費用対効果が高いか

このレビューで対象となる研究は?

PTSDをもつ成人へのI-C/BTについて検討したランダム化比較試験(対象者が2つ以上の治療群のいずれかにランダムに割り振られる臨床研究)で、1970年~2018年3月2日の間に発表されたものを検索した。

720例の参加者を対象とした10件の研究を選択した。

このレビューのエビデンスからわかることは?

•8つの研究で、I-C /BTは治療なし(待機者リスト)よりもPTSDの症状の軽減に有効だと示されたが、非常に低い質のエビデンスであった。

•2つの研究において、I-C/BTとオンラインで提供された他の心理療法には有意なが見られず、非常に低い質のエビデンスであった。

•I-C/BTを、セラピストによる心理療法またはオンラインでの疾患に関する教育と比較した研究は見つからなかった。

•I-C/BTを受けた人が、満足できる治療だと感じたか、また生活の質(QOL)の改善に有効であったかどうかを示すエビデンスは見つからなかった。

•I-C/BTの費用対効果について報告した研究は見つからなかった

次に何をすべきか

現在のエビデンスは小さい。I-C/BTをPTSDの治療において日常的に用いるべきかどうかを決定するには、より多くの研究が必要である。

訳注: 

《実施組織》瀬戸屋希,阪野正大 翻訳[2019.11.23]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
《CD011710》

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