原発性脳腫瘍がある成人患者における倦怠感の管理に対する介入

要点

原発性脳腫瘍と高度の倦怠感がある患者の管理に有効な治療法があるかどうかは、参加者数が少ない3件の研究しか見つからなかったため、分からない。

原発性脳腫瘍とは?

原発性脳腫瘍は、体の他の部分から広がったのではなく、脳で発生した癌である。脳腫瘍は、高悪性度と低悪性度に分類され、高悪性度腫瘍は異型度の高い細胞で構成され、急速に増殖するのに対し、低悪性度腫瘍は異型な細胞で構成され、ゆっくりと増殖する。原発性脳腫瘍の患者には、倦怠感(疲労感)がよくみられる。これは、腫瘍やその治療、あるいは抗てんかん薬(発作の治療に用いられる)など、他の医薬品の使用が原因である可能性がある。また、睡眠障害、思考障害、精神的苦痛など他の症状を伴うこともある。

知りたかったこと

倦怠感を管理するための治療が、その人の生活の質(QOL)、癌治療に耐える能力(それ自体が疲労と関連している)、社会生活や日常生活を営む能力を改善するかどうかを検討した。

本レビューで実施したこと

2022年4月、4件の医学データベースを検索した。その結果、対象となる臨床試験が3件見つかった。この3件の試験は、原発性脳腫瘍で高度の倦怠感を有する成人患者を対象に、3種類の医薬品(モダフィニル、アルモダフィニル、デキサムフェタミン硫酸塩)の使用を調査した。これらの薬は、覚醒を促進する。

わかったこと

含まれる3件の試験では、試験終了時点で、倦怠感の治療において薬とプラセボ(ダミー治療)の間に差があることを示すエビデンスは見つからなかった。これは、2件の試験が予定した参加者数に達しなかったことが原因である可能性がある。

エビデンスの限界は?

原発性脳腫瘍と高度の倦怠感がある患者の管理に有効な治療法があるかどうかは、参加者数が少ない3件の研究しか見つからず、肯定的な結果を示した研究がなかったため、分からない。さらに、会話療法や運動など、医学以外の介入に関する研究は含まれていなかった。原発性脳腫瘍と高度の倦怠感を有する成人を対象とした、より質の高い研究が必要である。何らかの有用な結果をもたらす可能性がある薬物を使用しない介入を調査している3件の進行中の研究が見つかった。

本レビューの更新状況

エビデンスは2022年4月までのものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、堺琴美 翻訳[2022.10.23]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD011376.pub3》

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