仕事中に座っている時間を減らすための職場における介入 (メソッド)

座位で仕事をしている時間の長さが重要な理由

仕事中に座位で過ごし、身体を活動的に動かさない時間がここ十年間で増加している。長時間座っていると、肥満、心臓病や早期死亡のリスクを高める可能性がある。職場で座っている時間を減らすことを目的とした介入の効果については、まだわかっていない。

このレビューの目的

我々は、仕事で座っている時間を減らすことを目的とした介入の効果を知りたかった。各種データベースで2017年8月9日までの文献を検索した。

検索で同定された試験

高所得国における34の試験を同定し、合計3397人の従業員が対象となっていた。16の試験では職場のデザインや環境による介入を、4つの試験では職場の方針による介入を、10の試験では情報提供やカウンセリングによる介入を、そして4つの試験では複数の領域における介入を、それぞれ評価していた。

上下昇降デスクの効果

上下昇降デスクを使用すると、職場で座っている時間を1日当たり平均84~116分間減らす効果があるようだ。情報提供やカウンセリングの提供と組み合わせた場合、上下昇降デスクの使用は仕事で座っている時間を減らす効果は同程度のようである。上下昇降デスクは、座位で過ごす時間全体(仕事中と仕事以外を含む)や、30分以上座り続ける一仕事単位の継続時間も減らす。1つの試験では、スタンディングデスクと上下昇降デスクを比較していたが、対象となる従業員数が少なかったため、どちらのタイプが座位で過ごす時間を減らすのにより有効かを判断するのに十分なエビデンスが得られなかった。

活動的な職場環境の効果

トレッドミルができるデスクとカウンセリングの併用は仕事で座っている時間を減らすことができそうだ。一方、自転車こぎができるデスクを情報提供と併用した場合、情報提供だけを行った場合と比べて仕事で座っている時間を減らすと結論づけるには、充分なエビデンスは得られなかった。

休憩時間の長さや休憩中に歩くことの効果

得られたエビデンスからは、休憩中に歩くことで座位の時間を減らすことへの有効性について、結論を導き出せなかった。短い休憩をこまめに取る(30分ごとに1~2分の休憩)方法は、長い休憩を取る(勤務時間中に2回の15分休憩)方法に比べて、座位で仕事をする時間を1日あたり15~66分多く減らすことができそうだ。

情報提供とカウンセリングの効果

情報を提供すること、フィードバックすること、カウンセリング、またはこれらすべては、中期的なフォローアップ中(介入から3~12か月後)の座位で仕事をする時間を減らせた。その平均時間は1日あたり5~51分であった。短期的なフォローアップ期間(介入直後から3か月まで)における効果について結論付けるには、得られたエビデンスは不十分なものであった。コンピューターによる指示は情報提供と併用すると、中期的に1日あたり平均14~96分座っている時間を減らす。これも、短期的な効果について結論を出すには至らなかった。

1つの試験では、「立つように」という指示の方が「歩くように」という指示に比べて、平均で1日あたり10~19分座っている時間を短縮した。

入手可能なエビデンスは、非常に細かく個別化した或いは詳細な情報を提供した場合、そこまで個別化していない或いは詳細ではない情報の提供と比べて、仕事中に座っている時間を減らすことに対する効果があるのかどうかについて結論付けるには不十分であった。また、得られたエビデンスからは、マインドフルネスのトレーニングや活動量計の使用が座って仕事をする時間に対する効果に関する結論を導くことはできなかった。

複数の介入を組み合わせた場合の効果

複数の介入を組み合わせた場合、座位で過ごす時間および長時間座り続ける仕事に費やした時間ともに、短期的および中期的に減らす効果があるようだ。しかし、このエビデンスはごく少数の試験によるもので、効果は試験ごとに非常に異なっていた。

結論

エビデンスの質は、ほとんどの介入について低度か非常に低度であった。主な原因は、試験のプロトコルの限界とサンプルサイズが小さいことによる。現時点ではエビデンスの質は低度だが、上下昇降デスクは、使用し始めた1年目に座位で仕事をする時間を減らす効果がある。しかしながら、その効果は時間とともに減少するようだ。他の介入においてこのような傾向があるのか、1 年以上の長期にわたって職場で座っている時間を減らす有効性について結論を下すには、全体的にエビデンスが不十分だった。職場で座位で過ごす時間を減らすことに対する、特に長期間にわたる効果について、様々な種類の介入の効果を評価するためには、さらに多くの試験が必要である。

訳注: 

《実施組織》杉山伸子 藤原崇志 翻訳[2018.7.8] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。  《CD010912》

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