成人における術前および術後の不安に対するメラトニン

レビューの論点

手術を受ける成人における術前および術後不安に対し、プラセボまたはベンゾジアゼピン(「バリウム」のような不安を減少させる薬剤)と比較したメラトニンの効果に関するエビデンスをレビューした。

背景

不安は、80%に上る患者で術前および術後のどちらでも認められる。術前および術後の患者の不安は、望ましくないイベントや効果を引き起こす可能性がある。メラトニンは、脳内の松果体で生成されるホルモンで、概日リズムを制御する。試験により、メラトニンが不安を減少させる可能性があることが示されている。不安の治療に一般に用いられているベンゾジアゼピンと比較し、メラトニンは「持ち越し効果」が生じず、さらに既知の重篤な副作用が認められないため、価値のある代替物になる可能性がある。

試験の特性

本エビデンスは2013年4月現在のものである。774名の患者を対象とした12件の試験を見出した。これらの試験の参加者の年齢は19~80歳であった。手術および麻酔の種類は多岐にわたっていた。メラトニンの用量は3~14mgとさまざまで、手術の50~100分前に投与された。ミダゾラム(ベンゾジアゼピン)の用量は3.5~15mgであった。

2014年10月に再検索した。本レビューを更新する際には関心のあるすべての試験に取り組む予定である。

主な結果

メラトニンは、4件の試験プラセボおよびミダゾラムと比較され、8件の試験ではメラトニンとプラセボだけが比較されていた。

メラトニンの効果プラセボと比較すると、メラトニンは術前不安を減少させる可能性がある。術後6時間の評価では、プラセボと比較し術後不安を減少させる可能性もある。

術前にメラトニンの効果をミダゾラムと比較した結果、不安のは認められなかった。術後に、不安に対するメラトニンの効果プラセボと比較し術後90分に評価した結果、またはメラトニンの効果をミダゾラムと比較した結果、は認められなかった。

エビデンスの質

エビデンスの質は、アウトカムによってさまざまであった。本レビューの短期データにより、メラトニンが術前不安を減少させると確信している。術後6時間のこの効果に関する確実性は低い。

不安のリスクには多くの要因が影響するため、メラトニンの不安を減少させる効果をすべての手術患者に適用できるかどうかはいまだ明らかになっていない。不安のリスク要因には、年齢、性別、手術の種類、麻酔の種類、そして文化や宗教の違いがある。若年および女性であることは不安の独立した危険因子であり、女性を対象とした試験が4件のみであったこと、60歳を超える患者を対象とした試験がわずか3件であったことから、限定的である可能性がある。8件の試験は中東諸国で実施されており、このことは一般化可能性に関して限界になる可能性がある。

結論

プラセボと比較し、メラトニンの前投薬(錠剤または舌の下(舌下剤))により術前不安が減少した(投与後50~100分に評価)。メラトニンは、術前不安の減少に対し、ミダゾラムを用いた標準治療と同等の効果がある可能性がある(投与後50~100分に評価)。プラセボと比較すると、メラトニンは術後不安を減少させる可能性がある(術後6時間)。

著者の結論: 

プラセボと比較すると、メラトニンの前投薬(錠剤または舌下剤)により成人の術前不安が減少する可能性がある(投与後50~100分に評価)。メラトニンは、成人の術前不安の減少に対し、ミダゾラムを用いた標準治療と同等の効果がある可能性がある(投与後50~100分に評価)。成人の術後不安に対するメラトニンの効果(術後90分~6時間に評価)は混在しているが、全体として、術前と比較し効果が弱まることが示されている。

アブストラクト全文を閲覧
背景: 

手術に関連する不安は広く知られた問題である。メラトニンは、術前および術後期のこのような状態を改善するためのベンゾジアゼピンに対する無毒の代替物である。

目的: 

成人における術前および術後不安に対するメラトニンの効果を、メラトニンとプラセボ、またはメラトニンとベンゾジアゼピンとを比較し評価すること。

検索方法: 

以下のデータベースを2013年4月19日に検索した。CENTRAL、MEDLINE、EMBASE、CINAHLおよびWeb of Science。実施中の試験およびプロトコルに対し、clinicaltrials.gov、Current Controlled TrialsおよびWorld Health Organization(WHO)International Clinical Trials Registry Platformを検索した。2014年10月に再検索した。本レビューを更新する際には関心のあるすべての試験に取り組む予定である。

選択基準: 

術前または術後不安に対し術前に投与されたメラトニンの効果を評価した、ランダム化、プラセボ対照または標準治療対照試験、もしくはその両試験。全身、局所または表面麻酔の使用が必要なあらゆる種類の外科手術を受ける男女の成人患者(15~90歳)を対象とした。

データ収集と分析: 

2名のレビュー著者がそれぞれデータを抽出した。抽出したデータは、試験デザイン、出身国、参加者数および人口動態の詳細、手術の種類、麻酔の種類、介入および用法用量、術前不安アウトカム指標および術後不安アウトカム指標に関する情報などであった。

主な結果: 

本系統的レビューでは、術前不安、術後不安またはその両方の治療に対するメラトニンについて評価した、774名の患者が対象の12件のランダム化比較試験(RCT)を同定した。メラトニンは、12件の試験のうち4件でプラセボおよびミダゾラムと比較されていたのに対し、残りの8件の試験では、メラトニンとプラセボだけが比較されていた。

主要アウトカム(術前不安に対するメラトニンとプラセボとの比較)に対するエビデンスの質は高かった。選択した試験の半数超は選択バイアスのリスクが低く、選択した試験の75%以上は、消耗、施行および検出バイアスのリスクが低かった。選択した試験のほとんどは、報告バイアスのリスクが不明であった。

視覚的アナログ尺度(VAS)(0~100mm、高スコアは不安がより強いことを示す)を用いて術前不安に対するメラトニンの効果を評価した10件の試験のうち8件で、プラセボと比較し減少することが示された。報告された効果推定値(相対効果-13.36、95%信頼区間(CI)-16.13~-10.58;高い質のエビデンス)は、7件の試験のメタアナリシスに基づいていた。2件の試験では、メラトニンとプラセボとの間には認められなかった。VASを用いてメラトニンとミダゾラムとを比較した2件の試験では、両群間に術前不安のに関するエビデンスは認められなかった(相対効果-1.18、95%CI -2.59~0.23;低い質のエビデンス)。

8件の試験で、術後不安に対するメラトニンの効果が評価された。これらの試験のうちVASを用いて術後90分の術後不安を評価した4件では、メラトニンとプラセボとの間にに関するエビデンスは認められなかった(相対効果-3.71、95%CI -9.26~1.84)。一方で、2件の試験では、状態-特性不安検査(STAI)を用いてメラトニンとプラセボとを比較した結果、術後6時間に評価した術後不安に減少が認められた(相対効果-5.31、95%CI -8.78~-1.84;中等度の質のエビデンス)。VASを用いてメラトニンとミダゾラムとを比較した2件の試験では、術後不安における両群間のに関するエビデンスは認められなかった(相対効果-2.02、95%CI -5.82~1.78)。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.3.14]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
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