慢性腰痛に対する脊椎手技療法

脊椎手技療法(spinal manipulative therapy :SMT)は、世界中のさまざまな医療従事者が広く実施している介入である。慢性腰痛管理に対するこの治療の有用性は、まだ見解が分かれている。

腰痛は障害を来す一般的な疾患で、個人的にも社会的にも大きな負担となっている。しばしば生活の質の低下、労働時間の損失、および高額な医療費負担が生じることがある。本レビューでは、慢性腰痛は12週間を超えて続く腰痛と定義する。本レビューでは、既知の基礎疾患(例えば、感染症、腫瘍または骨折など)によって生じた腰痛は除外した。疼痛が腰部に顕著に生じている患者を対象としたが、疼痛は、臀部および下肢に放散して(広がって)いる場合もある。

SMTは脊椎の「手技療法」として知られており、マニピュレーションおよびモビライゼーションの両方を含む。手技によるモビライゼーションでは、施術者が患者の脊椎を可動域内で動かす。ゆっくりと受動的に動かし、狭い範囲で始めてから徐々に可動域を広げていく。マニピュレーションは、施術者が、受動的な(または生理的な)可動域の限界またはその付近において、関節に対して特定の方向に手による衝撃を加えたりまたは強く押したりする、受動的な技術である。この方法はしばしば、耳に聞こえる「打音」を伴う。

この最新レビューでは、慢性腰痛患者に対するSMTの効果を評価する26件のランダム化対照試験(参加者6070例)を対象とした。治療は、カイロプラクター、手技療法者およびオステオパシー施術者など、さまざまな施術者が行った。 バイアスのリスクが低いとみなされた試験は9件のみであった。つまり、結果については一定の信頼性があると考えた。

今回のレビューの結果から、SMTは、運動療法、標準治療または理学療法など、慢性腰痛に対して処方される一般的な他の治療法と同程度の有用性が認められる。しかし、一般にバイアスのリスクが高いため、これらの因子を調べた試験は少なく、不活発な介入または偽(プラセボ治療をどのように比較するかについては明らかではない。試験のうち約3分の2はバイアスのリスクが高く、その結果を完全に信頼することはできない。さらに、SMTには重篤な合併症は認められなかった。

まとめると、慢性腰痛患者に対するSMTは、既存の治療法と比較して良くも悪くもないと考えられる。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.12.25] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 【CD008112.pub2】

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