虫歯予防のための異なるフッ化物濃度の歯磨き粉

レビューの論点
このレビューは、小児、青年および成人の虫歯を防ぐ上で、異なる濃度のフッ化物を配合した歯磨き粉の効果を評価するために作られている。

背景
虫歯(齲蝕・うしょく)は広くまん延した病気で、世界中の何十億人もの人々が罹っている。フッ化物は虫歯予防のために、歯磨き粉、飲料水、ミルク、洗口剤、歯磨きジェル、被膜剤などの様々な異なる方法で長い間使用されてきた。習慣的な歯ブラシは、虫歯や他の口の病気を防ぐために推奨され、フッ化物配合歯磨き粉での1日2回、2分間の歯ブラシが一般的な推奨である。通常の歯磨き粉、あるいは家庭で使用される歯磨き粉は、約1000〜1500ppmのフッ化物濃度が典型的だが、世界では他の多くの濃度のものが利用可能かもしれない。最低限のフッ化物濃度というものはないが、歯磨き粉に許容される最大フッ化物濃度は、(使用者の)年齢や国によって異なる。高濃度のものは、店頭ではめったに入手できない、処方薬として分類される。高濃度のフッ化物配合歯磨き粉は、大きな虫歯予防効果を示すかもしれないが、歯の成熟中のフッ素症(エナメル質欠損)のリスクもまた増加させる。これは2010年に最初に発表されたコクランレビューのアップデートである。

研究の特徴
コクランオーラルヘルスの著者らは、このレビューを実施し、エビデンスは2018年8月15日現在までのものである。このレビューには、1955年から2014年の間に発表された96件の研究が含まれている。最大1500ppmのフッ化物配合歯磨き粉の乳歯に対する効果を報告した7件(参加者11,356人)のランダム化比較試験;1450 ppmの歯磨き粉の乳歯と永久歯への効果を報告し1件(2,500人)のランダム化比較試験;最大2400ppmの歯磨き粉の18歳までの子供の永久歯に対する効果を報告した85件(48,804人)のランダム化比較試験;最大1100ppmの歯磨き粉の成人の永久歯に対する効果を報告した3件(2,675人)のランダム化比較試験。ほとんどの研究は、参加者が36か月間にわたって歯磨き粉を使用した後の虫歯を評価していた。

主な結果
中程度または高度の確実性のエビデンスがある結果を以下に示す。

幼児の乳歯では、フッ化物を1500ppm配合した歯磨き粉で、フッ化物を配合していない歯磨き粉と比較して、新しい虫歯の総数は減少していた。; 1055 ppmと550 ppmのフッ化物配合歯磨き粉との比較では、新しい虫歯の総数は同様であった。; そして、1450ppmの歯磨き粉では440ppmと比較して、新しい虫歯の総数はわずかに減少していた。

小児と成人の永久歯では、81試験が異なる濃度のフッ化物配合歯磨き粉の効果を相互の比較で評価していた(7つの異なる濃度で、21の組み合わせ)。1000~1250ppmまたは1450~1500ppmのフッ化物配合歯磨き粉による歯ブラシは、無配合の歯磨き粉と比較して新しい虫歯を減らしたこと、また1450~1500ppmでは1000~1250ppmよりもさらに虫歯の総数を減らしたことがわかった。小児および青年では、1700~2200ppmまたは2400~2800ppmのフッ化物配合歯磨き粉を使用した場合、1450~1500ppmと比較して新しい虫歯の総数は変わらなかったことがわかった。その他の濃度の歯磨き粉の効果に関するエビデンスは、あまり正確ではなかった。

あらゆる年齢の成人の永久歯では、1000または1100 ppmの歯磨き粉は、フッ化物無配合の歯磨き粉と比較して虫歯を減らしていた。

ほとんどの研究は、歯磨き粉の使用による有害な影響は計測していなかった。しかし報告されていても, 軟組織(歯ぐきなど)の損傷や歯の着色などの影響はとても少なかった。

エビデンスの確実性
1000~1250ppmのフッ化物配合歯磨き粉が、無配合歯磨き粉よりも効果的であるという確実性の高いエビデンスがある。上記の「主な結果」で報告された他の結果については、中等度の確実性のエビデンスがある。他の濃度の歯磨き粉では、相互の比較、あるいはフッ化物無配合歯磨き粉との比較で明確な結果を得るには、研究や研究参加者が少なすぎる。

著者の結論
ある濃度のフッ化物を配合した歯磨き粉を使用することは、無配合歯磨き粉と比較して、虫歯を予防するという利益がある。フッ化物濃度が高いほど、より多くの虫歯が予防される。種々の濃度の歯磨き粉による多くの比較から、結果は不確実であり、さらなる研究によって結果に異論の出る可能性がある。幼児のためのフッ化物配合歯磨き粉の選択は、フッ素症のリスクを勘案するべきである。

訳注: 

《実施組織》足立雅利、増澤祐子 翻訳[2019.8.1]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。
《CD007868》

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