妊娠中や出産後に行う骨盤底筋トレーニングは、失禁の予防や治療にどのくらい効果があるのでしょうか?

レビューの論点

妊娠中または出産後に骨盤底筋トレーニング(PFMT)を行うことで失禁が減少するかどうかを評価すること。

背景

妊娠した女性の3分の1以上が妊娠中期~後期(欧米:妊娠13~40週、日本:妊娠16~40週)に意図しない(不随意の)尿失禁を経験し、約3分の1の産後の女性が出産後3ヶ月間に尿もれを経験している。約4分の1が妊娠後期に不随意なおならや便もれ(肛門失禁)を起こしており、5分の1が産後1年でもおならや便もれををきたしている。妊娠後の失禁を管理することは、本人にとって重要なだけでなく、個人や医療制度にとってもかなりのコストがかかる可能性がある。

PFMTは、妊娠中や出産後の失禁の予防や治療のために、医療従事者が一般的に推奨しているものである。定期的にPFMTを行うことで筋肉を強化し、丈夫な状態をキープする。筋肉は、1日1回以上、週に数日、連続して収縮させ、それを無期限に継続する。

レビューの更新状況

本エビデンスは2019年8月7日現在のものである。

研究の特徴

本調査では、21か国10832例の女性を組み入れた46件の試験を対象とした。調査対象は、妊娠中または過去3ヶ月以内に出産した女性で、尿もれ、便のもれ、尿と便の両方がもれている、またはもれていないと報告した人である。彼らは、PFMT(失禁の予防を試みるか、失禁の治療薬として)を受けるか、受けないかに無作為に割り付けられ、その効果が比較された。

研究の資金提供元

25件の研究が公的資金で実施され、そのうちの1件は公的および民間の両方から助成金を受けていた。3件の研究は資金提供を受けておらず、18件の研究は資金源を申告していない。

主な結果

尿失禁予防のためにPFMTを行った尿もれのない妊婦:女性は妊娠後期に尿もれが少ないと報告しており、産後3~6ヶ月ではリスクはわずかに低くなる。これらの影響が出産後1年以降も続いているかどうかを判断するには、十分な情報がなかった。

尿もれのある女性、妊娠中または出産後にPFMTを治療として行った女性:妊娠中にPFMTを行ったことで、妊娠後期や出産後の1年間に尿もれが減少したというエビデンスはなかった。

尿もれのある女性、ない女性(混合群)、妊娠中または出産後、尿もれの予防または治療のためにPFMTを行った女性:妊娠中に運動を始めた女性は、おそらく妊娠後期には尿もれがやや少なくなり、出産後6ヶ月まで続く可能性がある。産後1年で効果があるというエビデンスはない。出産後に運動を始めた女性の場合、産後1年後の失禁への影響は不明であった。

便のもれ:便の漏出に関するエビデンスがあった研究はわずか8件だった。産後に運動を始めた女性で、出産1年後にPFMTが便もれを減少させる効果があるかどうかは不明であった。妊娠中にPFMTを開始した便もれのある女性とない女性(混合群)では、妊娠後期の便もれには認められず、出産後にPFMTを開始した女性では、産後1年までの便もれの減少は認められなかった。

PFMTが失禁に関連した生活の質にどのような影響を与えるかについての情報はほとんどなかった。骨盤底痛の報告は2件あったが、PFMTの他の有害な影響は指摘されていない。

PFMTが費用対効果が高いかどうかについてのエビデンスはなかった。

エビデンスの質

全体的に研究は小規模で、女性がどのようにしてグループに無作為に割り付けられたかの詳細が限られていたり、測定値の報告が不十分であったりと、ほとんどの研究にデザイン上の問題があった。問題のいくつかは、医療専門家や女性が運動しているかどうかを盲検化することが不可能であったため、予想されたものであった。PFMTは研究によってかなり違いがあり、記述が不十分なことが多かった。エビデンスの質は総じて低~中程度であった。

訳注: 

《実施組織》小林絵里子、阪野正大 翻訳[2020.07.22]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD007471.pub.4》

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