トゥレット症候群に対するカンナビノイド

カンナビノイドはトゥレット症候群患者の症状の治療に役立つ可能性がある。現時点では、実施された関連研究は2件のみである。両研究ともテトラヒドロカンナビノール(Δ9THC)を使用した。いずれの研究でもΔ9THCはチックの減少と関連がみられた。しかし、サンプルサイズが小さく、多数の多重比較が行われた。参加者は28名のみであり、8名が両方の試験に参加していた。最も高い効果が得られ、有害作用がほとんど認められなかった患者がさらなる試験に参加する可能性がきわめて高い。6週間試験では、多数の患者が試験から脱落または除外された。また、intention to treat(ITT)解析が実施されたかどうかが不明であった。報告された結果は、適正用量で被験薬投与を継続した患者に関する解析結果であった。実際に、効果がわずかである場合や許容できない副作用が認められる場合は、患者は治療の継続を希望しない。これにより症例減少バイアスが生じる。有意な結果が得られても、ボンフェローニ補正を行った場合、有意な結果はほとんど得られていないと著者らは認識している。カンナビノイドは、このような小さなサンプルサイズやITT解析で検出するには弱すぎる効果を有する可能性がある。カンナビノイドが強迫行動に有効であるといういくつかの弱いエビデンスが得られているが、使用した測定法はトゥレット症候群症状リスト(TSSL) に追加されたもので、妥当性が確認されていない。生活の質に対するΔ-9-THCの効果に関するデータは存在しない。トゥレット症候群患者におけるチックおよび強迫行動の治療にカンナビノイドの使用を支持する十分なエビデンスは得られていない。

著者の結論: 

トゥレット症候群患者のチックおよび強迫行動の治療にカンナビノイドの使用を支持する十分なエビデンスは得られていない。

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背景: 

ジル・ド・ラ・トゥレット症候群(GTS)は発達性の精神神経障害で、慢性の運動チックおよび音声チックが特徴である。現在GTSに用いられている治療薬は効果が認められないか、または不耐性の副作用と関連している。事例報告や実験から、カンナビノイドがGTS患者のチックおよび強迫行動の治療に有効であるというエビデンスが得られている。現時点ではGTSの治療に関する系統的なコクランレビューは存在しない。現在、GTSのチックに対するフルオキセチンの使用に関する1件のコクランレビューが進行中である。

目的: 

GTS患者におけるチック、前駆衝動および強迫性障害(OCS)の治療に対しカンナビノイドをプラセボまたは他剤と比較した場合の有効性および安全性を評価すること。

検索戦略: 

Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL) (The Cochrane Library 2008年4号)、MEDLINE (1996年1月から現在)、EMBASE (1974年1月から現在)、PsycINFO (1887年1月から現在)、CINAHL (1982年1月から現在)、AMED (1985年1月から現在)、British Nursing Index (1994年1月から現在)およびDH DATA (1994年1月から現在)を検索した。詳細情報を得るため、対象とする試験およびレビューの参考文献も検索した。

選択基準: 

GTS患者のチックおよびOCSの治療においてカンナビノイド製剤をプラセボまたは他剤と比較したランダム化比較試験(RCT)を対象とした。

データ収集と分析: 

2名の著者がそれぞれデータを要約し、相違点は議論で解決した。

主な結果: 

選択基準を満たした試験は2件のみであった。両試験ともカンナビノイド、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9THC)を単剤療法または補助療法としてプラセボと比較していた。1件は二重盲検単一用量クロスオーバー試験で、他の1件は二重盲検並行群間試験であった。重複のない計28名の参加者を対象とした。いずれの試験でもΔ9THCの有効性が報告されたが、チックの頻度や重症度の改善はわずかで、一部のアウトカムの測定でのみ検出された。

訳注: 

《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2018.1.20]
《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、eJIM事務局までご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。eJIMでは最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 
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