頸部痛は一般的であり、正常な日常生活を行う個人の能力を制限する。マッサージは頸部痛に対する治療として広く行われている。本レビューでは、マッサージとは、頸部の周りの柔らかい組織を手、足、腕や肘で触ったり揉んだりすることと定義する。マッサージには多くの種類がある。本レビューでは、伝統的な中国式マッサージ、虚血性圧迫法、J型の取っ手を使用して自分で行う虚血性圧迫法、従来の西欧式マッサージ、後頭部リリース法およびその他の手法について検証した試験を選択した。レイキやポラリティーセラピーなどの手法を検証した試験は選択しなかった。
本レビューでは、マッサージが頸部痛の緩和および機能の改善に役立つかどうかを評価した試験を15件選択した。結果から、マッサージは安全であり、副作用は一時的かつ程度はマイルドであることが示された。しかし、マッサージはその他の対照群と比較して有意な有益性は認められなかった。マッサージは、無治療、ホットパック、能動的関節可動域エクササイズ、鍼、エクササイズ、偽のレーザー、手動けん引、モビリゼーションおよび教育と比較した。
本レビューにはいくつかの問題点があった。全般的に試験の質は不良であり、大半の試験の参加者数は少なかった。大半の試験では、使用したマッサージ法に関する定義、記述や論拠が明確にされていなかった。マッサージの施術者の信用や経験に関する詳細が記載されていない場合が多かった。試験におけるマッサージ法や対照治療の種類が多いため、マッサージの有効性に関する全体像を得る上で結果を併合することができなかった。したがって、断定的な結論は出せず、頸部痛や機能を改善する上でのマッサージの有効性は不明である。
頸部痛に対するマッサージの有効性は不明であるため、現時点で診療には推奨できない。
単独の治療法として、MNDに対するマッサージは、疼痛および圧痛における即時的および短期的な有効性は認められている。また、治療の長期的効果および複数回の治療を評価するため、更なる研究が必要である。
機械的頸部障害(MND)の罹病は、個人にとっても、社会にとっても費用の面で負担となっている。マッサージは、MNDに対する治療の1つとして広く用いられている。
頸部痛がある成人を対象に、疼痛、機能、患者の満足度、全般的効果、有害作用および治療の費用に対するマッサージの効果について、治療直後から長期フォローアップまであらゆる対照治療と比較して評価すること。
開始日から2012年2月4日までのThe Cochrane Library (CENTRAL)、MEDLINE、EMBASE、MANTIS、CINAHLおよびICLデータベースを検索した。
ランダム割り付けを使用した試験を選択した。
2名のレビュー著者が独立して、引用特定、試験選択、データ抽出および試験方法の質の評価を行った。ランダム効果モデルを用いて、リスク比および標準化平均差を算出した。
15件の試験が選択基準に適合した。評価した全試験の全般的な試験方法は、GRADEレベルで低いまたは非常に低かった。いずれの試験も、GRADEレベルで強い~中等度のものはなかった。結果から、エビデンスのレベルは非常に低いが、一部のマッサージ法(伝統的な中国のマッサージ、従来および改良版のストレイン/カウンターストレイン法)は機能や圧痛を改善するのに対照治療やプラセボよりも有効であることが示された。エビデンスのレベルは非常に低いが、マッサージは疼痛に対する短期間の教育よりも有益であることが示された。また、エビデンスのレベルは低いが、疼痛緩和のための虚血性圧迫および受動的ストレッチは、単独よりも併用で行う方が有効であることが示された。臨床適応性の評価では、15件中4件の試験のみがマッサージ法を適切に記載していることが示された。試験の大半が治療直後にアウトカムを評価しており、これは臨床的変化を評価する上で適切な時期ではない。現存する試験の質の制限のため、臨床診療を指導する上で断定的な結論は出せなかった。15件中5件の試験のみが副作用について報告していた。5件の試験すべてで、副作用として治療後の疼痛、不快感およびヒリヒリ感を報告しており、1件の試験(Irnich 2001)では、参加者の22%が治療後の血圧低下を経験したことが示された。
《実施組織》厚生労働省「「統合医療」に係る情報発信等推進事業」(eJIM:http://www.ejim.ncgg.go.jp/)[2016.7.6]
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