胎盤遺残の管理のための出産後の臍帯静脈注射

論点

胎盤は、臍帯(へその緒)を介して子宮の中の赤ちゃんに栄養を与える。通常、出産後すぐに娩出される。胎盤が子宮内に残ってしまった場合(「胎盤遺残」)、女性は大量出血や感染症のリスクが高まり、場合によっては死に至ることもある。胎盤の用手剥離(訳注:器械を使わず、手で胎盤を出す方法)では、医師が腟から子宮内に手を入れて胎盤を娩出させる。しかし、麻酔が必要であり、副作用があることも事実である。臍帯の血管(静脈)を通して胎盤に注入される薬の使用は、胎盤を娩出するための魅力的な代替手段である。

重要である理由

臍帯の切断後に、オキシトシン(陣痛時に脳から血液中に放出されるホルモン)溶液を臍帯静脈に注入することは、胎盤を娩出させるために行うことができる安価で簡単な介入である。医師や手術室へのアクセスが容易ではない低所得国にとっては、特に魅力的である。

どのようなエビデンスが得られたか?

2020年6月にエビデンスを検索し、2348人の女性を対象とした24件の試験のデータを統合した。

生理食塩水を注射しても、自然娩出を待つ場合と比較して、用手剥離の必要性にほとんど差はなかった。臍帯静脈にオキシトシン溶液を注入することが有益であるという証拠がいくつかあるが、多くの研究はバイアスのリスクが高く、結果に一貫性がなく、有益性はいくつかの結果でしか認められていない。小規模な研究によると、プロスタグランジン(子宮の収縮を促す物質:ミソプロストールやカルボプロスト)の注射は、オキシトシン溶液と比較して、何らかの効果があるかもしれない。カルベトシン(オキシトシンに似た物質)溶液とオキシトシンを比較したある研究では、用手剥離の必要性に違いは見られなかった。

結果が意味すること

胎盤遺残に対する臍帯静脈注射の使用は、胎盤遺残のある女性にとって利益がある場合とない場合がある。臍帯静脈にプロスタグランジンを注射する方法は期待できるが、さらなる研究が必要である。

訳注: 

《実施組織》小林絵里子、杉山伸子 翻訳[2021.08.18]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD001337.pub3》

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