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血管拡張薬(血管を広げる薬)は、不妊症の女性が妊娠するのに役立つか?

要点

1.血管拡張薬は、ダミーの治療や無治療と比べると、妊娠するのにおそらく役立つが、副作用もあるだろう。また、血管拡張薬は、ダミーの治療や無治療と比べると、あるいはエストロゲン(女性ホルモン)と比べると、妊娠が継続できて出産するまでの可能性にはほとんど影響しないかもしれない。

2.より確かな結論を出すためには、この治療に関する、より大規模でしっかりデザインされた研究が必要である。

背景

不妊治療を受けている女性にとって、胚盤胞(受精卵が数日間分裂して、胎児のもとが作られた状態)が子宮内膜に正常に着床することが重要である。着床率や出生率を高める可能性がある薬はたくさんある。その一つに、血管拡張薬がある。この薬は、血管を拡張して子宮内膜を厚くし、子宮の収縮を防ぐことで、胚盤胞を子宮に着床しやすくすると考えられている。

知りたかったこと

血管拡張薬が生児出生率、妊娠率、子宮内膜の厚さを改善するのに役立つかどうかを調べたかった。また、血管拡張薬が多胎妊娠(双子、三つ子など)、流産、異所性妊娠(受精卵が子宮内膜以外に着床すること)の発生率に影響を及ぼすかどうか、副作用があるかどうかも知りたかった。

実施したこと

年齢を問わず、不妊治療を受けている女性を対象に、血管拡張薬とプラセボ(ダミーの治療)または無治療とを比べた研究、あるいは別の薬と比べた研究を検索した。研究結果を比較、要約し、研究方法や研究規模などに基づくエビデンスに対する信頼性を評価した。

研究の特徴

合計4,404人の不妊治療中の女性を対象に、血管拡張薬とプラセボまたは無治療、あるいはエストロゲン(女性ホルモン)とを比べた45件の研究が見つかった。さまざまな国で研究が実施されていた:エジプトで20件、イランで12件、イラクで4件、インドで3件のほか、オーストラリア、フランス、イギリス、ロシア、ベルギー、韓国でそれぞれ1件ずつの研究があった。45件の研究のうち、資金源を明記しているのは21件のみであった。そのうち2件は、製薬会社からの資金提供を表明していた。他の19件の研究は、研究者や独立機関が資金を提供していた。

主な結果

血管拡張薬とプラセボまたは無治療との比較

この比較において、生児出生率または妊娠継続率を報告した研究は6件のみであった。血管拡張薬は、プラセボや無治療と比べて、生児出生率や妊娠継続率にはほとんど影響しないかもしれないが、女性が妊娠する可能性はおそらく増加する。血管拡張薬には、頭痛や頻脈(脈拍数が通常より増える)などの副作用がおそらくあるだろうが、その他の望ましくない事象(多胎妊娠、流産、異所性妊娠)の発生率にはおそらくほとんど差がない。血管拡張薬が子宮内膜の厚さに与える影響について、プラセボや無治療と比べて違いがあるかどうかは分からない。

血管拡張薬とエストロゲンとの比較

この比較において、生児出生率または妊娠継続率を報告した研究は1件のみであった。血管拡張薬は、エストロゲンと比べて、生児出生率や妊娠継続率にはほとんど影響しないかもしれない。また、女性が妊娠する可能性を高めるか、子宮内膜の厚さを改善するかについては、分からない。流産に関するエビデンスは、非常に不確かである。

エビデンスの限界

1つめの比較(血管拡張薬とプラセボまたは無治療)では、ほとんどのエビデンスに中程度の信頼性があるが、生児出生率と子宮内膜の厚さについてはあまり信頼性がない。2つめの比較(血管拡張剤とエストロゲン)では、ほとんどのエビデンスに確信が持てず、生児出生率についてはほとんど信頼性がない。エビデンスの主な限界は、いくつかの研究が非常に小規模であること、多くの女性が自分が受けている治療法を知っていること、研究によって結果がかなりばらついていることである。

より確かな結論を出すためには、もっと多くの研究が必要である(13件の研究が進行中であり、将来の更新でこのレビューに組み込む予定である)。

エビデンスの更新状況

このレビューは、2018年に発表されたレビューの更新版である。エビデンスは、2024年4月までのものである。

訳注

《実施組織》杉山伸子、内藤未帆 翻訳 [2025.05.13]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD010001.pub4》

Citation
Gutarra-Vilchez RB, Vazquez JC, Glujovsky D, Lizaraso F, Viteri-García A, Martinez-Zapata MJ. Vasodilators for women undergoing fertility treatment. Cochrane Database of Systematic Reviews 2025, Issue 3. Art. No.: CD010001. DOI: 10.1002/14651858.CD010001.pub4.