統合失調症がある人に対する抗精神病薬の減量

要点

抗精神病薬の投与量を減らすと、より多くの試験参加者が再発し、早期に試験から離脱する可能性がある。

生活の質(QOL)、機能、副作用に関する情報はほとんどなかった。

レビューテーマの紹介

統合失調症は、薬物治療(抗精神病薬)が必要な重い病気である。抗精神病薬の使用は副作用と関係があり、その副作用は投与量が多いほど悪化するようである。一方、症状に対する効果を発揮するためには、十分な量を投与する必要がある。

知りたかったこと

以下に示す項目の改善のために、抗精神病薬の量を減らすことが、同じ量を維持するよりも良いのかどうかを知りたかった。

– 生活の質(QOL);
- 再入院した参加者の数;
- 副作用のため早期に試験を終了した参加者の数;
- 機能;
- 再発;
- 何らかの理由で研究を早期に終了した参加者の数;
- 少なくとも1つの副作用があった参加者の数。

実施したこと

統合失調症患者において、抗精神病薬の量を減らすことと、同じ量の抗精神病薬を維持することを比較検討した研究を検索した。

研究結果を比較してまとめ、研究方法や規模などの要素に基づいて、エビデンスに対する信頼性を評価した。

わかったこと

合計2,721人の統合失調症患者を対象とした25件の研究が見つかった。22件の研究(2,635人)のデータを解析のために使用した。研究期間は12週間から2年間の範囲であった。アメリカ、イギリス、ヨーロッパ、アジアなど、世界各地で実施された。14件の研究は公的機関が、5件の研究は製薬会社が、2件の研究は公的機関と製薬会社が共同でスポンサーとなっており、4件の研究は資金調達に関する明確な情報を示していなかった。

投与量を減らすことは、:

- QOLにはほとんど影響を与えないであろう。
- 再入院に差をもたらさないが、その結果については非常に不確実である。
- 副作用による参加者の早期離脱を増加させる可能性がある。
- 機能にほとんど影響を及ぼさない。
- 再発した参加者を増加させる可能性がある。
- 何らかの理由で研究を途中で離脱する参加者を増やすであろう。
- 少なくとも1つの副作用を持つ参加者の数にほとんど影響を与えないと思われる。

エビデンスの限界は?

これらの結果に関して、確信あるいは中等度の確信が持てる。

再入院については、研究参加者がどの治療を受けているかを認識していた可能性があるため、エビデンスには確信がない。さらに、これらの研究は、異なるタイプの人々を対象として行われたり、異なる方法での減量が行われたりしている。

再発に関しては、研究参加者がどの治療を受けているかを認識していた可能性があるため、エビデンスに対する信頼度が低い。さらに、これらの研究は、異なるタイプの人々を対象として行われたり、異なる方法での減量が行われたりしている。

このレビューの更新状況

エビデンスは2021年2月現在のものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、杉山伸子 翻訳 [2023.01.20]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD014384.pub2》

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