要点

- 体を動かすビデオゲーム（「エクサゲーム」）は、認知症や軽度認知障害のある人の学習や項目の記憶といった思考能力の向上に役立つ可能性があるが、完全な確証はない。

- 現時点では、認知症や軽度認知障害のある人の歩行能力、バランス能力、支払いや買い物などの日常生活能力を向上させるのに役立つ可能性を示唆するエビデンスはほとんどない。

認知症と軽度認知障害とは？

認知症は、記憶力、思考力、日常業務遂行能力に影響を及ぼすような脳の変化を伴う疾患である。物事を記憶したり、計画を立てたり、集中したり、コミュニケーションをとったりすることが難しくなる。こうした変化は通常、時間とともに悪化し、最終的には日常生活に支障をきたすようになる。

軽度の認知障害とは、記憶や思考に何らかの問題があることを意味するが、認知症のある人ほど重度ではない。しかし、後に認知症になる可能性もある。軽度認知障害のある人は、物事を思い出したり、はっきりと考えたりすることに苦労することがあっても、請求書の支払いや買い物に行ったり、家をきれいに保ったりといった日常的な仕事はこなすことができる。基本的には、認知症ほど重度ではないが、時間の経過とともに進行する可能性のある、記憶や思考の困難があるようなものだ。

エクサゲーム（体性感覚ゲーム）とは何か？

現在のところ、認知症のような病気を遅らせる治療法はほとんどない。しかし、生涯を通じて心身ともに活動的でいることが、認知症になるリスクを下げることは分かっている。専門家の中には、これら2種類の方法で活動的に過ごすことを奨励すれば、認知症の症状や軽度認知障害の影響を軽減できるかもしれないと考える人もいる。新しい技術を使えば、バーチャルリアリティ（仮想現実）や、「エクサゲーム（体性感覚ゲーム）」と呼ばれるインタラクティブな（相互作用のある）ゲームを使って、肉体的および精神的なトレーニングを行うことができるようになった。高齢者が自宅で比較的簡単に利用でき、意欲を高めることができるため、エクサゲームは良い選択肢と考えられている。

知りたかったこと

認知症や軽度認知障害のある人の身体能力、思考能力、日常的な仕事をこなす能力を向上させるために、治療を行わない場合や従来の治療よりも、エクサゲームを行うことが効果的であるかどうかを知りたかった。

また、エクサゲームをすることに望ましくない影響があるかどうかも確認したかった。

実施したこと

医学研究を検索し、エクサゲームの介入を受けた人と他の治療に参加した人を比較した研究を見つけた。場合によっては、エクサゲームを利用した人を、特別な治療を受けなかった人（例えば、ただリラックスしていた）、あるいは、有酸素運動や脳トレのような、すでに他の研究で肯定的な効果が示されている治療を受けた人とを比較した。可能な限り研究の結果をまとめ、実施された研究方法、軽度認知障害または認知症の人数などの要素に基づいて、これらの研究の質を評価した。

わかったこと

11件の研究が見つかった。これらは2014年から2023年の間に発表された。7件の研究では308人の軽度認知障害のある人を対象としており、5件の研究では228人の認知症のある人を対象としていた。そのうちの1件は、軽度認知障害のある人と認知症のある人を対象とした研究であった。

認知症や軽度認知障害のある人が、通常のケアやあまり積極的ではない治療を受けた人と比較した場合、エクサゲームをすることで思考力が向上する可能性があることを発見したが、すでに他の研究で効果があることがわかっている治療を受けた人と比較した場合は、同様ではなかった。

認知症や軽度認知障害のある人々がエクサゲームをすることで、歩行やバランスなどの身体能力や、買い物などの日常生活の能力を向上させるという結果は得られなかった。

一般的に、認知症や軽度認知障害のある人が、医療専門家の支援を受けながら、管理および監督された環境でエクサゲームをすることは、安全であると思われる。認知症や軽度認知障害のある人が監督者なしに自宅でゲームをすることの安全性については、エビデンスがない。

エビデンスの限界

これらの実施された研究の質を調べたところ、いくつかの問題があることがわかった。つまり、上記の結果を解釈する際には注意が必要であることを示している。その理由のひとつは、これらの研究に参加者が少なかったことである。

本エビデンスの更新状況

エビデンスは2023年12月22日現在のものである。