マインドフルネスは禁煙に役立つか?

要点

- マインドフルネスを用いた治療が禁煙に役立つ、あるいは精神的な健康や幸福感を向上させるという明確なエビデンスは、今のところない。

- しかし、エビデンスに対する信頼度は低いか非常に低く、さらなるエビデンスによって結論が変わる可能性がある。

マインドフルネスとは?

マインドフルネスとは、自分の考えや感情に注意を向け、それらが生じたり消えたりするのを、判断せずに観察することである。マインドフルネスは、人々が思考や感情に支配されるのではなく、むしろ思考や感情をよりよくコントロールするのに役立つと考えられている。禁煙すると、タバコを吸いたい衝動に駆られたり、気分が落ち込んだりするが、マインドフルネスを用いた治療により、それらに対処する能力を高めることができるかもしれない。

マインドフルネスに基づいた治療の種類は以下の通りである:

- マインドフルネス・トレーニング(マインドフルネスに基づく瞑想のトレーニングを行うもの)。

- 受容とコミットメント療法(アクセプタンス&コミットメント・セラピー:acceptance and commitment therapy, ACT):瞑想を教えるのではなく、自分の考えや感情と戦うのではなく、それを受け入れるように促し、行動を変えることを約束させる療法。

- 苦痛耐性トレーニング(ACT療法の一部を提供するとともに、喫煙者に喫煙したくなるような状況を提示するものである。これにより、ACTで学んだスキルを実践することができる)。

- ヨガ(呼吸への意識を高め、心と体のつながりを促す)。

何を知りたかったのか?

マインドフルネスを用いた禁煙プログラムが、他の禁煙プログラムまたは無治療の禁煙支援よりも効果があるかどうかを調べたかった。

論点;

- 何人の人が6か月以上禁煙できたか。

- 人々の精神的な健康や幸福感に変化があったかどうか。

このレビューで実施したことは何か?

禁煙のためのマインドフルネスの活用を調べた研究を検索した。

研究結果を比較・要約し、研究方法や規模などの要素から、エビデンスの確実性を評価した。

何がわかったのか?

8,186名の喫煙する若者と成人を対象とした21件の研究を特定した。

研究では、マインドフルネス・トレーニング(8研究)、ACT(8研究)、ヨガ(3研究)、苦痛耐性トレーニング(2研究)など、さまざまなマインドフルネスに基づく治療法が検証された。以下の治療法とマインドフルネスを比較した研究がある:

- 同じように時間のかかる他の禁煙治療(カウンセリングなど)。

- より集中的でない他の禁煙治療(簡単なアドバイスなど)。

- 無治療。

ほとんどの研究は米国で行われた(15件)。その他、香港(2件)、ブラジル(1件)、アイルランド(1件)、キプロス(1件)で実施された。1件の研究では、実施された国を報告していない。

主な結果

マインドフルネスが禁煙に役立つという明確なエビデンスは見つからなかった。マインドフルネスに基づく介入の種類で研究をグループ分けしたところ、マインドフルネス・トレーニング、ACT、苦痛耐性トレーニング、ヨガを受けた人が、他の禁煙治療や何のサポートも受けなかった人よりも禁煙する可能性が高いというエビデンスは見つからなかった。

9件の研究では、マインドフルネスに基づく禁煙治療が、ストレスや不安の軽減、気分の改善など、精神的な健康や幸福感にプラスの変化をもたらしたかどうかを調べた。そのうちの1件の研究は、マインドフルネス・トレーニングのプログラムを受けた人は、別の禁煙治療を受けた人よりもストレスが少なかったと報告していた。しかし、他の8件の研究では、グループ間で精神的な健康や幸福感に差があることを示すエビデンスは見つからなかった。

エビデンスの限界は?

研究デザインに問題があったこと、研究結果が互いに大きく異なっていたこと、参加者が少なかったことなどから、エビデンスの確実性は低いか非常に低く、マインドフルネスが禁煙に役立つのか、精神衛生や幸福感の向上につながるのかを判断することは困難である。より確かな結論を出すためには、より多くの研究が必要である。

このレビューの更新状況

2021年4月15日までに発表されたエビデンスを対象とした。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、杉山伸子 翻訳[2022.04.29]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013696.pub2》

Tools
Information