薬局での薬による中絶とクリニックでの薬による中絶の比較

なぜこのレビューが重要なのか?

薬による中絶は、クリニックや病院で日常的に行われている(訳者注:日本では未承認)が、薬局など他の場所でも行われる可能性がある。多くの国では、中絶を含むリプロダクティブ・ヘルスに関する情報やサービスを求める女性にとって、薬局は最初の、そして主なアクセスポイントとなっている。薬局を通じた薬による中絶へのアクセスを拡大することは、安全な中絶治療を促進するための潜在的な戦略である。

エビデンスの特定および評価方法

7つの医学研究データベースでランダム化比較試験を検索し、ウェブサイトで灰色文献(従来の商業・学術出版・流通経路以外の組織が作成した研究)を検索した。さらに、未発表の研究やデータベース検索で見つからなかった研究を探すために、主要な文献を手作業で調べ、著者に連絡を取った。

薬による中絶または中絶後のケアのために、クリニックまたは薬局のいずれかで同じ薬と同じ用量の処方をを受けている女性を比較した研究を確認した。言語を問わず、次のデザインを含む発表された研究を対象とした:ランダム化試験および比較群を含む非ランダム化試験。

私たちは、すべての論文の抄録と全文を読んで評価し、研究方法や規模などの要素に基づいて、エビデンスに対する確信度を評価した。

何がわかったか?

2030件の記録が見つかった。検索された抄録をスクリーニングし、除外基準を適用した。89件の論文について全文を読み、適格性を評価した。1件の前向きコホート研究が組み入れ基準を満たした。この研究では、ネパールの605人の女性が、クリニックまたは薬局ベースのいずれかで、同じ医療従事者(助産師)から薬による中絶を受けた。2つの異なる中絶の環境の間で、完全中絶率に差はなかった。また、薬による中絶後30日以内の輸血や感染症の発生率を調べた。これらのアウトカムが起こる頻度はまれであり、場所による違いを結論づけるにはエビデンスが限られていた。その他の副次的な評価項目としては、中絶に関連した出来事による入院、(子宮内容の吸引以外に)必要とされた追加の外科手術、ケアの質の評価などがあった。どちらのグループにも入院や追加の外科手術はなく、ケアの質に関する情報は限られていた。

これが意味すること

1件の非ランダム化研究により、薬による中絶の有効性は、同じ医療従事者が治療を行っている場合、薬局と診療所の間ではおそらく差がないという低い確実性のエビデンスが得られた。現在進行中の3件の研究は、このレビューの更新に含めることができる可能性がある。薬剤師による薬による中絶の提供の有効性、安全性、ケアの質についての結論は、比較研究がないために限られていた。薬局での薬による中絶の提供は、特にクリニックでのサービスを受けることが困難な環境において、薬による中絶をタイムリーに受けられるようにする可能性があるため、さらなる研究が必要である。

このレビューの更新状況

このコクラン・レビューに掲載されているエビデンスは2020年11月までのものである。

訳注: 

《実施組織》 阪野正大、杉山伸子 翻訳[2021.06.23]《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクランジャパンまでご連絡ください。なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review, Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。 《CD013566.pub2》

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