成人ホジキンリンパ腫の化学療法中に実施するポジトロン断層法(PET)画像診断による予後予測

レビューの論点

今回のコクランレビューの目的は、ホジキンリンパ腫患者の化学療法中に実施するポジトロン断層法(PET)検査の結果から予後良好群と不良群を判定できるかどうか、また各群における治療成果(生存期間)を予測できるかどうかを明らかにすることである。

背景

ホジキンリンパ腫はリンパ系のがんの一つである。比較的まれながんであるとされており(西洋諸国では1年間に10万人あたり2~3例)、20代の症例がもっとも多いが、それより若い子どもや高齢者にも発生しうる。治療法の進歩により、現在は患者の大半が治癒する。重要なことは、患者ができるだけ効果が高く毒性の低い治療を受けられるようにすることである。PETは患者のがんのステージ(病期)を判別し、腫瘍の活性を観察する画像診断ツールのひとつである。化学療法期間中に実施するPET(いわゆる中間PET、化学療法2サイクル後に実施するなど)の結果から、治療に対する反応性が良好な患者とそうでない患者を区別できるのではないかと示唆されてきた。今回のレビューの目的は、医師がホジキンリンパ腫患者の長期的な治療結果と安全性の改善につながるような治療方針を、十分な情報を得たうえで決定できるようにするために、中間 PETの結果から、治療に対する反応性が良好な患者とそうでない患者を識別し、各群の予後を予測できるかを明らかにすることである。

試験の特性

成人ホジキンリンパ腫患者(ステージは問わない)を対象に、化学療法1~4サイクル後に実施した中間 PETの結果と生存期間に関する治療結果との関連性を検討するために、23件の試験を対象とした。著者10人に連絡を取り、うち6人から関連情報やデータの提供を受けた。

主な結果

レビューの対象とした試験のうち16件では、患者に対しABVD化学療法またはBEACOPP化学療法(4件)のいずれか一方を実施しており、放射線療法を加えることもあった。16件では中間 PETとCTを併用していた(PET-CT)。CTと併用することによってPET単独よりも一次がんおよび二次がんを正確に検出できる。残りの7件ではPETのみが行われていた。21件が化学療法2サイクルの後に中間PETを実施していた(PET2)。

8件では本レビューの対象となる結果や患者に関するデータが不足していたため、これらの試験についてはその結果を報告するにとどめる。各試験の結果を統合してメタ解析を行い、今回の検討対象である全生存期間および無増悪生存期間について確固たるエビデンスを探った。いずれの試験でもPETに関連する副作用の報告はなかった。

全生存期間についてみると、9件の試験(計1,802人)を統合した結果から、中間 PET陰性患者は陽性患者に比べてかなり良好であろうことが示された。無増悪生存期間についても、14件(計2,079人)を統合した結果、中間 PET陰性患者では陽性患者に比べて良好な結果となることが示されたが、この結果については確信がない。これらの試験は中間PETが唯一の予後予測因子であるとしての結果であり、補正がなされていない。

8件の試験では補正した結果が報告されており、中間 PETの独立した予後予測能力について、すでに明らかとなっている他の予後予測因子(リンパ腫のステージ、B症状 [発熱、体重の減少、顕著な寝汗] など)に対する評価が加えられている。これらの試験で評価されていた予後予測因子の組み合わせにまったく同じものはなかったため、結果を統合することはできなかった。それでもなお、この8件の結果は、中間 PETの結果が予後の良不良を予測する独立した因子である可能性を示している。

エビデンスの確実性

補正なしの結果をもとにした場合、全生存期間に関するエビデンスの確実性は「中等度」であると判断した。これが意味することは、中間 PETの真の効果は推定された効果に近い可能性が高いものの、まったく異なる可能性もありうるということである。無増悪生存期間に関するエビデンスの確実性については「きわめて低い」と判断した。これは、推定された効果にほとんど確信をもつことができず、中間 PETの真の効果は推定とかなり異なっている可能性が高いことを意味する。

補正後の結果をもとにした場合、エビデンスの確実性は全生存期間については「中等度」、無増悪生存期間については「低い」と判断した。

本レビューはどれくらい最新のものなのか。

2019年4月2日までのデータと2019年1月25日時点の試験登録(1機関)を検索した。

訳注: 

《実施組織》一般社団法人 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT:ジャムティ)『海外癌医療情報リファレンス』(https://www.cancerit.jp/)橋本 仁 翻訳、吉原 哲(兵庫医科大学病院輸血・細胞治療科)監訳 [2020.01.19] 《注意》この日本語訳は、臨床医、疫学研究者などによる翻訳のチェックを受けて公開していますが、訳語の間違いなどお気づきの点がございましたら、コクラン・ジャパンまでご連絡ください。 なお、2013年6月からコクラン・ライブラリーのNew review、Updated reviewとも日単位で更新されています。最新版の日本語訳を掲載するよう努めておりますが、タイム・ラグが生じている場合もあります。ご利用に際しては、最新版(英語版)の内容をご確認ください。《CD012643.pub2》

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